明けましておめでとうございます。 昨年は『長野県ハーネスの会』の発足に際しまして心強いご支援をお寄せいただき、本当にありがとうございました。会員の皆様のご多幸をお祈り申し上げます。 さて、昨年10月に産声を上げました本会ですが、皆様のご協力により徐々に動き始めています。先ず、会報『ハーネスながの』第1号を11月に発行し、本号で第2号となりました。また第1回例会を12月に開き、多くの会員や盲導犬に関心のある市民の皆様に参加していただくことができました。 今年は発足2年目に入りますので、活動の基盤となる会組織を整えるとともに、お寄せいただきました基金の有効かつ適切な活用を図っていくつもりです。そしてこれらの活動を通して盲導犬とその使用者が働きやすい環境作りを進めて行きたいと考えています。 本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
【第一回長野県ハーネスの会例会の報告】
パートナーとのエピソード
前野 弘美
長野県ハーネスの会が発足して初めての例会が平成10年12月12日(土)に松本市の長野県視覚障害者福祉センターで開催されました。師走のお忙しい中、県内各地より30名近くの方にお集まりいただきました。ありがとうございました。 今回は使用者の体験を中心に考えることや思い出などのお話を、西山さん、丸山さん、三好さん、玉野さん、原さん、稲田さんの6名の方にしていただきました。 お話の内容を全てをここに書くことは出来ませんので、内容の一端を書きます。例会や他の集まりなどで興味や疑問をもたれた方は、ご本人や事務局に問いあわせたり連絡をしていただければと思いますのでお願いいたします。
西山さんは、最初は使用をやめようかとも思ったパートナーと、今では相棒として何処へでもと、力強く九州への旅の思い出を交えた体験談を話してくれました。 丸山さんは、ご主人との仲の良さとご夫婦で盲導犬を使用している事から起こるちょっとしたハプニングや二人(ご夫婦)での散歩の様子をほんわりと語り、目が見えなくなって良かった事は有りますかと言う中学生の質問に「盲導犬に会えたこと」と答えた、と話されました。 三好さんは、以前の盲導犬との日常や旅行中の出来事を話題に、見えないがゆえに盲導犬が伝えようとする事をなかなか理解できないことや状況がつかみにくいことがあるということ、またそれを理解してくれたと盲導犬が分かるととても喜んで本当にうれしい時は飛びついて喜びを表すこともあった、と語ってくれました。 玉野さんは、盲導犬を持つきっかけについて、自分の健康に対する不安や歩きたいとの思いを交えて、何処へでも時間があれば歩いて行ってしまう丸山さんとの出会いを語り、さらに現在は健康や運動のためだけでなく生活の中に盲導犬は無くてはならない、と語りました。 原さんは、盲導犬とのつきあいはまだ長くはないけれど今は無くてはならない存在だと、また気を配ってあげていなければ盲導犬もそそうをしてしまう、と失敗談を交えて活躍の様子を話されました。 稲田さんは、「やんちゃだけれど俺の相棒」と現在の盲導犬との歩行中のエピソードを語り、電車の中や町での周囲の方の盲導犬への対応の良いところと悪いところを挙げられました。 参加された皆さんから質問や感想をお聞きしながら懇親会をする中で「盲導犬を持とうと思ったのはなぜですか?」などの質問や、引退犬を飼育されていた話、盲導犬の健康管理についての話などがでました。 初回の例会でしたが使用者も始めて聞くエピソードや、思わぬ質問や疑問に考えさせられる事もありました。これからも盲導犬を囲んで良い集いが出来ればと思います。
第1回例会に参加して
斎藤 美枝
私が初めて盲導犬と身近に接したのは、今から10年程前になります。長野盲学校の先生が松本での会合に盲導犬と一緒に出席されていて、一日がかりの長い会の間中ずっとご主人の足元で静かにしていた彼(?)の姿がとても印象に残っています。その後は勤務の関係もあり車中心の生活では盲導犬やそのユーザーの方々ともほとんどお会いする機会がありませんでした。 その間、我が家でも柴犬を飼うようになりましたが、時々脱走して大騒ぎになったり、番犬として少々うるさい以外は何一つ芸もできない老犬です。それでもヒーターの前でグーグーと大いびきの彼女を見ていると、これが家庭の幸せというものなのかとも思い、今では家族の一員として欠くことのできない存在になっています。 この度昔なじみの原先生からのお誘いをうけ、身近に犬がいるということだけで、何かお役に立てることがあるのかなあとも思いましたが、リタイアした犬達のお世話もあるということなので、これならできそうかなと参加させていただきました。今回もいろいろな体験談をお聞きして、エリートの盲導犬にも各々の個性があることがわかり、その忠実な働きぶりや、ユーザーの方々との強い絆に改めて感心いたしました。また、ユーザー以外の参加者の方々は年齢層も巾広く、コート作り等実際に活動されている方もいらして心強く思いました。この会がもっともっと広がって、盲導犬とそのユーザーの方々がより快適に社会参加ができることを願っています。次回も楽しみにしています。
【盲導犬用コート類の製作が始まりました】
松本市の本郷地区福祉ひろばに、盲導犬用コート類の作製を中心に活動する目的で「ゆめクラフト」という会ができました。15人ほどのメンバーで、すでに何枚か製作し、ユーザーの方に実際に使ってもらっています。松本市内のお店からはコート用生地の寄贈もあり、コートの種類も各種の型紙を揃えて、ご相談に 応ずることができるそうです。特製のおむつベルトもあります。
注文を希望される方、製作活動に参加したい方は、運営委員の丸山さんか本郷福祉ひろばへご連絡下さい。
また、茅野市の点訳サークル「てんとう虫の会」でも縫製に取り組んで下さる ということで、例会の時に型紙を持ち帰って下さいました。こんな活動が各地に広まるとうれしいですね。
【盲導犬とともに】
《このコーナーでは、盲導犬使用者をはじめいろいろな会員のみなさんからお寄せ いただいたエッセイをご紹介します。様々なかたちで盲導犬と接していく中で感 じたことやエピソードなど、どんな話が飛び出してくるでしょうか。 トップバッターは、東部町にお住まいの盲導犬使用者、広沢里枝子さんです。》
困ったことが5つもあった日
東部町 広沢 里枝子
犬好きの私達家族はかわいい盲導犬と暮らせるだけで嬉しいし、自由に出かけていろいろな人に出会えるのはなお嬉しい。ただ、街の中ではいまだに困ることにも出会う。そこで今回は、アイメイトのドロシーと上田市へ買い物に出かけて困ったことが5つもあった日のことを書いてみたい。 その日、私は舞台衣装を買うために、そうしたことに詳しいHさんと上田駅近くのイトーヨーカドーの前で待ち合わせをしていた。私はそこでバスを降りるつもりだったが、前の席の人達が大声で話していたので車内アナウンスが聞き取れず、降りそこなってしまったのがまず1つ目。 私はあわてて運転手に聞きにゆき次のバス停で降りて駅へ向かった。ところが、ドロシーが歩道橋の階段の一段目に前足をおいて教えていたその時、降りてきた年輩の女性が「何、犬なんか連れて!」と叫ぶなり私の肩をドンと押した。段の途中なら転げ落ちていたかもしれない。私はふるえ上がってしまって声も出せなかった。 一方Hさんが、私を待っていると駅前で黒い盲導犬を連れた男性が迷っているのが見えたそうだ。大勢の人が男性を見るけれども声をかけない。Hさんは待ち合わせていたのでその場を動くわけにいかず、相当やきもきしたらしい。これが3つ目。 その後私とHさんが、ドロシーと一緒にあるデパートに入ると若い店員さん達が「まあ、可愛い!」と集まって来た。私は「あっ、盲導犬には触らないで下さい」と急いで頼んだけれどもドロシーは床にごろん。言うより先に撫でられていたらしい。ドロシーに私の命を託していることを何故わかってもらえないのか、何時も残念に思う。 そして5つ目は、ベテランの店員さん。私の目のことなどを根ほり葉ほり聞いては「可愛そうに」と連発。Hさんは、私が普通に暮らしていることを説明してくれたけれども店員さんは「そうですか。可愛そうに」といってまけてくれた。 まけてもらったのに、胸の仕えが取れなくて、どっと疲れた1日だった。
☆アイメイト:
現在、日本には8カ所の盲導犬育成施設があります。その中で、東京都練馬区にある(財)アイメイト協会で訓練を受け使用者とともに卒業した盲導犬のことを「アイメイト(EYE MATE)」と呼んでいます。
【ドクタールーム】
《このコーナーでは、犬の健康管理や病気について獣医さんの立場からお話しいた だきます。盲導犬使用者の方にも、ペットとして犬を飼っている方にとっても、 きっと役に立つ情報となると思います。今回は、松本市の伊藤動物病院院長の 伊藤正幸先生に、犬の健康管理の基本ともいえる食事についてお願いしました。》
『食事管理に関して』ということで、Q&Aの形で書くことにします。
[Q1]ネギ、玉ネギ、ニラ、ニンニク類を使用した料理(ハンバーグ、シチュー、カレー、スキヤキ、ハム、ソーセージ、フライドチキン、ジャーキー等)を与えてはいけないと言われていますが、この理由は?
[A]ネギ、玉ネギ、ニラ、ニンニク類の中にL-プロピールジスルフィド(酸化物)が含まれており、これを摂取することにより赤血球がこわされ、貧血を起こしたり、時には嘔吐、下痢、食欲不振などの症状がでることがあるからです。上記の様子で症状が発現した場合、獣医師に相談してみて下さい。簡単な確定診断法があります。
[Q2]ドライフードはどのようなところに注意して選べば良いのですか?
[A]毎日食べるドライフードの選択は非常に重要だと思います。第一に安全性、次に栄養のバランスを考えて下さい。米国製、英国製の食事は、AAFCO、F.D.Aの組織で安全面・栄養面で品質の管理、抗酸化剤(B.H.A 発癌性+)等の使用の規制がしっかりとされています。一部日本製品もAAFCOの基準を満たしているものもありますので確認して選んで下さい。なお、現在当病院では成人病で一番多いのが悪性腫瘍で、続いて心疾患、腎疾患です。糖尿病は比較的少なく年に2~3頭にすぎません。食事管理は、獣医師の立場から重要であることを強調したいと思います。
【事務局より】
☆1月10日現在の会員数:個人165名
団体4
会費納入:239口
カンパ:56,300円
☆会員登録用紙から
入会時に書いていただいている会員登録用紙に、何人かの方が盲導犬への思いを書いて下さっています。その中から一部をご紹介します。
私は中学3年生で、今受験で忙しい日々を過ごしています。小学校6年の時に「盲導犬サーブ」の本を読んでから、盲導犬に興味を持ちました。今は、将来盲導犬の訓練士を目指しています。(後略)
〈松本市・中学生〉
犬と人との付き合いが歴史的に古いとはいえ、街中や本で見るそのパートナーシップに驚嘆しない日はありません。欧米とは、犬に対する考え方、飼い方が住宅事情も含めて違う日本では、盲導犬にとって仕事や生活し難いことが色々あるんじゃないだろうかと常日頃思っておりました。
〈松本市・女性〉
いつも盲導犬の活躍に心とどめている者です。私も春に18年の仲間の大切な犬を見送りました。その間の高い医療費、公的に何もない思いに、考え続けて参りました。まして障害者のパートナー、少しですが盲導犬の為に協力させていただきます。
〈上田市・70歳女性〉
【編集後記】
年末からしばらくの間家族とアイメイトのルクリアと一緒に、実家のある松山に帰省してきました。新幹線・モノレール・飛行機といろいろな乗り物に乗り、ルクリアもいろいろな経験をしました。また私自身盲導犬を連れているということで周囲のたくさんの人から注目され、長野・東京・松山と地方によって盲導犬に対する反応がずいぶん違っていることを実感した旅でもありました。今年も「ハーネスながの」を皆様のお手元にお届けします。どうぞよろしくお願いいたします。昨年12月12日、会員の滝沢さんの1頭目の盲導犬であり引退後塩尻市の三村さんのもとに引きとられていたウーリッチが亡くなりました。次号では、「盲導犬とともに」のコーナーで盲導犬を引退した犬達について特集したいと思います。
(加藤)
〈1999年1月号〉