ハーネスながの 2006年 1月 第20号
発行:長野県ハーネスの会 会長 原 哲夫
〒390-0304 松本市大村492-3 TEL・FAX(0263)46-9611
第20号 目次
《年頭のご挨拶》
《特 集》 『パートナーとわたし』
《ニューフェイス》 『新役員の紹介』
《事務局より》
《編集後記》
《年頭のご挨拶》
『2005年度総会終わる』
会長 原 哲夫
皆様、明けましておめでとうございます。旧年中はハーネスの会の活動に温かいご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
2006年、今年の干支は『戌(いぬ)』。長野県ハーネスの会は1998年10月の発足から8年目を迎えます。県内の盲導犬使用者と引退犬飼育者を支えるネットワークとしてささやかな活動を行なっています。また、会報“ハーネスながの”も創刊から通巻20号の節目を迎えました。現在は県内外の会員と関係諸施設におよそ250部を発送しております。
本号は、戌年、通巻20号記念、そして新年特集として、『パートナーとわたし』を企画し、使用者とその愛犬の素顔を紹介することにしました。これは会員の北沢とも江さんの訪問インタビューに基づき編集したものです。
尚、訪問取材での写真撮影と編集作業では伊那市在住の井上緑さんに多大なご協力をいただきました。また、使用者のみなさまには訪問取材に快く応じていただきました。
末筆ではありますが、会員のみなさまのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
《特 集》
『パートナーとわたし ~ ひとりで歩きたかったから盲導犬を。そして今思う事 ~』
「特集号に寄せて」
写真入りの、ユーザーとパートナー紹介の特集号が、ようやくでき上がりました。この特集は、ハーネス基金を通じて、私たち盲導犬ユーザーと、そのパートナーを応援してくださっている方々に対し、私たちをもっと知っていただくと同時に、ユーザー相互の情報交換にも役立ててもらえたら、と思い作成しました。ユーザーへの質問事項は、盲導犬使用の動機、使用してみて良かったこと、苦労したこと、ハーネスの会に対する意見や要望、その他となっています。
ハーネスの会に所属しているユーザー会員数は26名ですが、取材期間中にパートナーが退役になるなどして、取材できなかった会員が4名いらっしゃいましたので22名の掲載となりました。ご紹介できなかったユーザー会員につきましては、今後の会報の中で紹介していけたらと思っています。
記事の作成にあたってはできるだけユーザーの生の声が伝わるように心がけたつもりですが、掲載できる字数に限りがあり、伺ったお話の内容をかなりカットさせていただきましたのでご了承ください。ただし、取材の折お聞きしました会についての要望や意見は、役員会に報告させていただいております。
井上緑さん、ハーネスの会役員の清水純子さん、私の友人の齋藤マユ子さんに取材のお手伝いをしていただきました。紙面をお借りしてお礼申し上げます。
北澤 とも江
MK 男性 宮田村在住
アイーダ メス ラブラドールレトリバー イエロー 2頭目
アイメイト協会 1993年1月29日生
犬の性格 大きな音にも、他の犬にも動じない。
家に一人で留守番をしていたので、床屋とか郵便局くらいは一人でも行かれるようにしたかった。1頭目と2頭目とで訓練所がちがうが、自分の環境に合うように指示語を増やして対応。例えば、ドアといっても、全面ガラスばりの建物もある。が、ドアの前には必ずマットが置いてあるので、ドアマットという言葉で出入り口を教えた。そんな調子で、7,80くらいの指示語を工夫。これで地域のなかでは、不自由しない。犬が、左側通行する理由を知らない人がいて注意されたことがある。盲導犬が仕事中は、犬にさわってはいけないといった認識が広がってきた。そのことは知っているが、服から犬の足が脱げているから、といって断って直してくれる場合は有難いと思う。一頭目の犬は最後まで家で看取った。良い火葬場を探すのに苦労。墓は、敷地内にある。自分は遠くに行くことは無いが盲導犬には、満足している。(2005年8月26日取材)
MH 男性 松本市在住
クール オス ラブラドールレトリバー イエロー 3頭目
北海道盲導犬協会 2003年10月5日生
犬の性格 明るい
盲導犬についてはよい話ばかり聞いていたので自分も使うつもりでいた。家族の中に犬嫌いがいて説得するのに時間がかかった。それが解決したら今度は犬が同居できる住宅がなかなか見つからずで、盲導犬が手元にくるまでには年月がかかってしまった。犬が来て面倒に思えたことは散歩と手入れだったが、3ヶ月くらいで生活習慣の一部になった。盲導犬同伴を断られることはあったが、他の使用者の話ほどではない。飲食店などでは、入り口で躊躇せずどんどんテーブルまで行ってしまう。杖で歩いていたころと違い、犬が障害物を避けてくれるので神経を使わなくてよい。近いから犬を置いて杖で歩いていこうとした時、あちこちぶつかってしまい、あらためて盲導犬歩行の安全性を知った。盲導犬に対して正しく理解がされていないことも感じている。服なんか着せてかわいそう、とか、盲導犬はストレスがあるから寿命が短いのでは、など。知らないがための誤解がある。また、一頭の盲導犬の小さなミスをすべての盲導犬にあてはめて批判をする人もいる。十人十色と言う言葉があるように犬もそれぞれ個性が違うのではないか。(2005年9月24日取材)
TI 男性 松本市在住
ジョージー メス ゴールデンレトリバー ゴールド 2頭目
日本ライトハウス 1997年11月生
犬の性格 明るい
盲導犬を使用した動機は、松本盲学校への通学のため。松本は、車の運転マナーが悪い所だ。杖では、怖くて歩けない。盲導犬と歩いていても車がかぶさってくる。横断歩道の半分くらいは平気で止まっている。ジョージーが来てはじめて盲導犬とはすごい犬なんだなと思った。食べ物が落ちていても決して拾わない。新しい事を教えてもすぐ覚える。上手く出来た時には、恥ずかしいほど褒めると良い。補助犬法以降、盲導犬の市民権は高まったが、マスコミの取り上げ方がきれいごとに扱うのが気になる。そこらで、オシッコやウンチをしてしまうこともあるのに、失敗は写さない。失敗もあって、一人前の歩行が出来るようになるのに。盲導犬が来て良かったことは、外でケガをしないこと。人間のガイドだと、ドアにぶつかることもあった。犬を通じて人との関係が広がるのも楽しい。ゴミを出す時近いので自分だけで行ったら後ろからジョージーが追いかけてきた。主人を心配してくれているんだなあと感じた。 (2005年8月30日取材)
KH 女性 長野市在住
ルクリア メス ラブラドールレトリバー イエロー 2頭目
アイメイト協会 1996年2月20日生
犬の性格 甘えん坊。大きな音や子供がはしゃぐ声には弱いが仕事は真面目。
高校生までは杖歩行。あまり上手く使えず、二十歳で盲導犬歩行に。落ちることが無くなり安全に歩けるようになった。その頃は乗車拒否がよくあった。最近、子供が診療を受けている日赤で、それまでOKだったのに急に病院内に犬を入れないでと言われびっくり。その日は駄目で後日アイメイトから話をしてもらい、今は同伴出来る。子供に必要なところで盲導犬同伴を拒まれるのは困る。こんな時には盲導犬使用者の代表という意識を持って妥協しないようにしている。盲導犬に対してとかく犬中心に取り上げられがちなのが気になる。使用者の生活に犬が必要な訳であくまで人間主体で啓蒙するべきだと思っている。子供がいるとどうしても行かなくてはならない所もある。親として、つらい思いも度々。補助犬法以来、アレルギー、うちの方針、といった理由の同伴拒否が出てきている。ただ盲導犬がペットみたいになっている例もある。ユーザーもマナーを守らないといけないのでは。(2005年9月2日取材)
HA 女性 長野市在住
ベネティー メス ラブラドールレトリバー イエロー 1頭目
日本ライトハウス 2000年1月2日生
犬の性格 甘えん坊。ときどきミステリアス。寝るのが好き。
弱視だったころには盲導犬の存在は知っていても自分に結びつかなかった。失明し、白杖歩行を訓練する機会がなく、盲導犬を使用することに。盲導犬は完璧で失敗は無いと思っていたが現実はちがっていた。ベネティーがいて良いと思えることは、外に出掛けようという気持ちになること。旅行もするようになった。人に対して、ありがとう、ごめんなさい、と言うことが多くなり気持ちが疲れてくると友人のところに行く。ベネティーと出掛けるとき、ベネティーにトイレさせる場所探しに苦労した。そこで、多目的に使われる障害者用トイレの中で床にペットシーツを敷いて、ビニール袋を装着したトイレベルトを使ってオシッコやウンチをさせている。屋内でトイレが出来れば、雨、雪の日にも苦労しなくても済むのではないだろうか。びしょぬれにならず、トイレの後始末も楽になると思う。(2005年9月2日取材)
TK 女性 長野市在住
アルタ メス ラブラドールレトリバー イエロー 3頭目
アイメイト協会 1996年10月4日生
犬の性格 慎重。人ごみが苦手。
一人で歩きたかった。盲導犬が来て、嬉しくて嬉しくて、いっぱい歩いた。当時、マッサージの仕事で夜はホテルへ。犬は、従業員用玄関で待機させるが、長時間になると、犬の様子がわからずハラハラしていた。盲導犬は主人が管理できるように近くに置いたほうが良い。犬は道に迷うと主人が良く利用している場所に連れて行って方向感覚を取り戻させてくれる。今の住まいに引っ越してからは、周りが田んぼ道のため方角を知るのに小川の水をさわり、水の流れる方向で確認したこともある。2頭目とアルタの間が3年半空いた。体力も落ち、体重も増え、その状態では訓練が無理と言われ、また盲導犬と生活できるのならと一念発起。ジムに通って体重を減らし体を鍛えた。アルタとの合宿訓練中に、体調をくずし入院。その後も、腰の手術などで、以前のような盲導犬歩行は出来なくなったが、アルタは手術後のリハビリ歩行につきあってくれ、お陰で家の周りは散歩出来るまでになった。昼間、家でひとりになるのでアルタが居ないと困る。遠出は出来なくなったが、過去にたくさん旅行もし、自分の人生に思い出を刻むことが出来た。 (2005年9月7日取材)
OM 男性 長野市在住
パトリック オス ラブラドールレトリバー 黒 4頭目
日本ライトハウス 2000年生
犬の性格 おとなしい
長野県で盲導犬取得に助成金が出た時の第1号。3頭まではアイメイトの犬だったので、犬の排便のさせ方がパトリックになってから違ってしまい慣れるまでに時間がかかった。アイメイトの犬の場合、必ずしも土がなくても良いが、パトリックは土が無いとむずかしい。高層のマンションに住んでいる。団地では、犬が飼えないので子供達はパトリックとの交流を楽しみにしているようだ。自分は永年にわたって趣味で尺八をたしなんできたが、尺八の点字楽譜が無かったので自分で考案して点訳者と悪戦苦闘しながら作成してきた。盲人のためになればとの思いをこめて編纂してきた点字楽譜が、ようやく完成。点字図書館へ寄贈した。パトリックの手入れは毎日じっくり時間をかけてやっている。どんなに疲れていても犬にやるべきことを、きちんとやる。犬は、それを待っている。それをやってくれるのが自分の主人だと思っている。盲導犬は、自分ひとりで歩けることと動物と暮らす楽しさの両面が魅力。趣味の尺八を呼吸法として、パトリックを体力維持の要として生活している。(2005年9月7日取材)
OM 女性 千曲市在住
バル メス エフワン クリーム 2頭目
日本ライトハウス 2002年5月18日生
犬の性格 底抜けに明るい
東京からこちらに来て26年。盲導犬を持った動機は犬が好きだったことと、一人暮らしなので自由に歩くため。犬に話しかけながら歩くのはとても楽しい。大家さんの同意が得られず、1頭目からバルの間が4年空いてしまったが、大家さんが代わり盲導犬を持つように勧められ、また持てるようになった。住宅密集地なので、犬のトイレの処理には特に気を使っている。マッサージの仕事でホテルや旅館に行く時はバルは家に置いていく。雷や花火の音に弱いので仕事の合間に家に戻ったり大家さんに様子を見てもらうこともある。仕事が終わり家に帰るとバルが体いっぱいに喜んで迎えてくれる。そんな時家族だなあと思う。ホテルや旅館側から、盲導犬使用者が入浴しに来た時の犬の待機場所について意見を聞かれた。自分は湿気の多い脱衣場に犬を待機させるのは好ましくないと思っているが、使用者によっては別の意見や希望がある。統一するのは難しいが、突然行ってトラブルになるよりは、事前に話し合ってみてはどうか。(2005年9月13日取材)
NI男性 坂城町在住
ユース オス ラブラドールレトリバー 黒 1頭目
日本ライトハウス 2000年3月25日生
犬の性格 やんちゃ。仕事は慎重で神経質。
東京から帰って来てから、こちらは田舎で道に迷っても聞く人がいないし、歩道も無く、歩いていて畑に落ちてしまうこともあり困っていた。盲導犬が来てからは以前と全然違う。杖で歩くよりずっと安全でスピードが速い。考え事をしていても犬が障害物を避けてくれているので安心。ここ坂城は、犬の飼い主のマナーが悪い地域。散歩道にはよくウンチが落ちていて、ユースはよけるからいいが、自分が踏んでしまいで何回も不快な思いをした。放し飼いの犬もいて、吠えながらとんできた。ユースは守ろうとしてくれたが、危ないので持っていた犬のおやつの袋を投げつけて逃げ帰ってきた。役場にいって広報で注意してもらってもなかなか改まらない。また、放置されたウンチでユースが疑われてもいけないので、講演やコンサートを頼まれた時には、盲導犬のトイレのさせ方の説明を兼ねて、ビニール袋とトイレベルトを持参し装着してみせている。家には老犬がいたが、ユースとも仲良く暮らしていたので、その犬が死んだ時、ユースもかなり落ち込んでしまい心配した。(2005年9月13日取材)
TK 男性 松本市在住
オッティー オス ゴールデンレトリバー イエロー 1頭目
日本盲導犬協会 2001年7月生
犬の性格 淡白
杖歩行、人のガイドを経て盲導犬も使ってみたいと思っていた。盲導犬に関することで世間が何を気にするかをまとめてみると三つくらいある。犬のにおい、抜け毛、トイレの処理。そこで、におい消しには気を使っている。ブラッシング後は、小型掃除機で犬の体と周辺を吸い込む。職場にも小型掃除機を置いている。犬が来て良かったことは、毎日の通勤で1時間ほど歩くので運動量が増え健康に良いこと。家庭の中では癒しの役も。オッティーが来てからひそかな楽しみが出来た。散歩途中で発見した喫茶店に立ち寄り自分だけの時間をすごすのが、たまらなくいい。電車の中で、周りの人たちが、オッティーに気づき盲導犬の話題になる。その会話を黙って聞いていると面白い。まさに生きた社会学だ。いつも犬を使う訳では無く、飲みに行くときには、家に置いていく。犬の心配をしてやれない場面もある。盲導犬を持って負担に感じてしまうようではいけない。ひとそれぞれのスタイルに合った使い方で良いのでは。(2005年9月15日取材)
MR 男性 松本市在住
アルスター オス ラブラドールレトリバー イエロー 2頭目
日本ライトハウス 1995年7月1日生
犬の性格 元気で明るく、おおらか。叱られてもめげない。
中途失明の後、1年くらい家の中で過ごした。以前は、車やバイクを愛好。人に勧められて盲導犬歩行に。犬が来てから盲学校へ行く気になった。松本に引越し盲導犬とともに住める家から6年間通学した。自分は人に案内されるのは好まない。人に案内してもらうと犬が人の後をついて行ってしまうようになる。犬の即戦力が無くなっていくのではないかと思う。盲導犬はすごいって思ったのは、道に迷っても必ず家に帰り着けること。大雪の日、真っ白になった道路の真中を、犬は蛙飛びのようにぴょんぴょんはねながら家まで案内してくれた。とにかく盲導犬がいれば自分だけでも外出できる。家の中では犬は自由にしてある。主人が近づいたらどくように訓練した。犬のベッドに無理やり居座る。服従訓練にもなるが、犬の性格によっては神経質になる場合もあるからそこを見極めないとまずい。自分はパチンコをするのが好きだったが、アルスターは、あれこれと手段を使ってパチンコ行きを阻止しようとするので、だんだんと足が遠のいてきた。(2005年9月22日取材)
MK 女性 松本市在住
ゼノビア オス ラブラドールレトリバー 黒 4頭目
日本ライトハウス 1995年12月生
犬の性格 おとなしいが、はしゃぐと止まらない。平和主義。
歩くことが好きなので、盲導犬と一緒に風をきって歩きたかった。徐々に目が見えなくなったため、自信がなく暗い気持ちになりがちだった。盲導犬が手元に来てから人生が変わった。障害者という意識が消えた。ここからが青春といった気分で積極的に。それが本来の自分の性格だったみたい。困ったことはあまりないが、お葬式に出席しなくてはいけなかったとき、お寺で犬の同伴を断られ仕方なくお参りだけにしたことがあった。盲導犬のデメリットとして考えられることは犬の体調や年齢によって、自分の行動範囲が左右されること。その部分と、うまく折り合って人生を楽しむようにするのが良いと思う。ゼノビアとは、山登りもした。が、なんといっても忘れられないことは同居していた父親の介護が出来たこと。盲導犬がいてくれたことで可能になった。盲導犬は健気という声があるが、犬は喜んで仕事をしている。犬と一緒にいることでこちらにその心が伝わるから使用者ものびのびと行動出来る。(2005年9月22日取材)
FN 男性 松本市在住
マイケル オス ラブラドールレトリバー イエロー 1頭目
日本ライトハウス 1996年10月30日生
犬の性格 人なつこい。犬にもなつく。
自分は杖歩行に自信があったが、歩道に置いてある自転車には閉口していた。ハーネスの会が発足した時、盲導犬使用者と試しに歩いてみた。歩きに自信のある自分を犬達がどんどん追い越していく。ショックだった。それで盲導犬歩行に方向転換。しかし犬の抜け毛は自分が見えないだけに神経を使う。いつも粘着テープと雑巾を持ち歩いている。また、マイケルは音に対して敏感で鼻声でずっと鳴きつづけるところがあって、まわりに気を使った。やめさせようとすると余計鳴く。これは、マイケルの特徴のひとつと考えるようにしたら犬も落ち着いてきた。他の犬と比べてしまうことで人間のほうが悩む。犬は主人のその気持ちを感じて不安になる。自分のパートナーの特性を知って能力を認めてあげられるのは主人でしかない。そういえば、昔は歩道に置いてある自転車にぶつかったり杖がからんだりして困ったのに今はマイケルが避けてくれている。自転車の数が減ってきたのかと思ってしまったほどに犬が安全を確保してくれていたことに気づく。(2005年9月26日取材)
AK 男性 立科町在住
エルマ オス エフワン 黒 2頭目
日本ライトハウス 1997年11月24日生
犬の性格 かしこい。危険を上手に知らせてくれる。
民宿を経営していたが中途失明し、ひとりで歩けなくなった。失明後は、人に会うのが恥ずかしかった。盲導犬が来て、ひとりで外出出来るようになったら自信がつき気持ちの変化が。積極的になりどんどん外へ出た。自分が住んでいる地域は、目の前には、スキー場があり自然に恵まれたところなので、散歩するのに良い環境である。散歩途中に、知り合いの喫茶店に立ち寄り、一服といったこともある。盲導犬が来たことで家族とも別行動が出来るようになったのも良かった。民宿の仕事は、家族がしている。犬はお客さんとは接触させないようにしている。やはり、客商売なので、気は使うし、必要があるとき以外は犬は奥の部屋で待機させている。自分は、バスを利用して、エルマと町の共同作業所へ行っている。自分が出来る仕事や役割があるのは人間として大切なことではないだろうか。スーパーやレストランで、同伴拒否があったが盲導犬だという認識をしていなかったのではないかと思う。(2005年10月15日取材)
TK 女性 佐久穂町在住
エミー メス エフワン イエロー 3頭目
日本ライトハウス 1997年11月24日生
犬の性格 大きな音は苦手。仕事は一生懸命。
東京から引っ越してきた時にはまだ少し見えていたが、子供の学校のPTA作業や会合のときには困ることがあった。人に勧められて盲導犬を使うことに。子供の学校の用事はもとより、買い物も出来るし電車やバスを利用して遠くまで行けるようになった。専業主婦なので家事を一人でこなすのには、いろいろと工夫してきた。現在は子供も独立したので、ほとんど1日中、畑にいることが多くなった。畑仕事をしているときが一番落ち着ける。野菜や花を植えて楽しんでいる。草取りなど、きれいに出来なくても気にしない。歩いていて、畑や田んぼに人がいると自分からよく話しかけているので、エミーは、人がいると必ず止まってくれるようになった。以前のように遠出することは少なくなったが、マイペースの生活を送れるのも盲導犬と暮らしているから出来ることだと思っている。もうひとつ、盲導犬が一緒だと自分の目が見えないことが一目瞭然で伝わるので説明が省けるのも気持ちが楽である。(2005年10月15日取材)
UK 男性 丸子町在住
ジギー メス ゴールデンレトリバー クリーム 1頭目
日本ライトハウス 1995年6月10日生
犬の性格 甘えん坊なのに気位が高い。頭がよい。
果樹栽培を中心にした農家である。10年ほど前に突然失明した。人からは大変だろうと言われるが、果樹栽培の仕事をするのに、目が見えなければ夜も仕事が出来る訳で、今までより時間がつかえると考えたので苦には思わない。ただ、家族に頼れない時のことも考えて、自分の出来る範囲を増やすために盲導犬を使うことにした。10種類ほどの果樹を時期をずらしながら作っている。剪定、花摘み、袋かけ、収穫と、忙しく働いている。不用になった枝は自家製の炭に。作業はすべて夫婦で力を合わせてこなしてきた。大地に足をつけているこの仕事に誇りを持っている。ジギーは、最初のうちは、果樹園で自由に放していたが、脱走してしまうこともあったので今は仕事中は木につないでいる。呼ぶと声を出して位置を教える。広い果樹園の中で、のびのび生活しているためか、たまに親戚の祝い事で都会に出て行くと、ジギーともども勝手が違ってしまい、一緒にいる家族をやきもきさせてしまう。それが、たまにキズといっったところだろうか。(2005年10月16日取材)
HR 女性 東御市在住
ネルーダ メス ラブラドールレトリバー イエロー 3頭目
アイメイト協会 2002年12月4日生
犬の性格 明るく臨機応変
26才で残っていた視力を失う。子育てのために、盲導犬を使うことに。生後10ヶ月の長男に断乳をして、訓練所へ入った。訓練中は、わが子を思うと乳が張り、離れたつらさで泣いていたことを覚えている。子供と一緒に、安全に外出したいという強い思いが支えになった。以来、盲導犬と共にふたりの息子を育ててきた。右手に長男、左手にハーネス、背中に次男を背負い、肩には大きなバッグを掛けてどこにでも出掛けた。当時は、行く先々で盲導犬の同伴拒否にあい、盲導犬のことや、視覚障害者の立場を地域の人々に伝えていかなくてはと決意。それがラジオ番組への出演や学校などの講演活動に発展した。最近、「盲導犬ありがとう」と、銘を入れて石碑を建立。そこに愛するパートナーであった、キュリーとドロシーの遺骨を納めた。今、三代目のネルーダと歩き始めて、自分のライフスタイルに盲導犬の存在が不可欠であると改めて感じている。出来れば命ある限り、盲導犬と共に歩き自分らしい人生を切り開いていきたいと願っている。(2005年10月16日取材)
TH 男性 松本市在住
オリビア メス エフワン クリーム 2頭目
日本ライトハウス 1996年7月30日生
犬の性格 おとなしいがお茶目。主人にあわせてゆっくり歩く。
自分は歩く人間。山登りが趣味だったので、失明後、歩けないことがみじめに思えた。自分にとっては、歩くということが自己実現でもあったので盲導犬と歩くことにした。一頭目の犬は性格の良い犬だったが、体が弱く引退後まで心配が続いた。医療費もかかり、ユーザーの自己負担には限度があることを痛感。それが、ハーネスの会を立ち上げるきっかけのひとつになった。オリビアは、健康なので前の犬とは果たせなかった山歩きも一緒に出来た。親の介護も出来たので悔いがない。盲導犬を持つということは自分のためだけではない。家族がいれば、家族を救うことになる。社会的活動をしていれば社会の役に立てる。盲導犬を持って活動が可能になれば、便利とか都合がよいといった範囲を超えて、ひとの人生観まで変えさせる力を与えてくれる。それを実感してきた。ユーザーとして社会への啓発については、単に理解とか動物愛護の視点ではなく、人権として取り組むのが本筋ではないかと思っている。(2005年10月20日取材)
MH 男性 須坂市
カナット メス ラブラドールレトリバー イエロー 3頭目
日本ライトハウス 1994年4月生
犬の性格 冷静。慎重。主人を適切にフォローする。
現在、鍼治療の研修のため東京に居住している。交通機関や、道路の状況、地域性と、すべてにわたり長野県にいた時とちがう。人に頼らず時間を計りながら自分で道を覚えた。そのこと自体を楽しむ性格。方向を知るには、道路に接している店などの雰囲気やコーヒーなどのにおいで覚えていく。東京の人は他人には関心を示さないが知恵をしぼってあいさつをかわすまでになり、それからは、親しくなり、人から人への輪が広がっていった。白杖と盲導犬使用とでは、人との関わり方がちがう。犬が人を引き寄せる。夏ごろから、カナットに皮膚病が出たのでシャンプーの回数を増やした。1、2頭目のころは犬の手入れについては、ユーザーとしての義務感でやっていたし、楽しいとは思わなかった。だが、3頭目の今になって、はじめて心からカナットをきれいにしてやりたいという気持ちで向かい合えるようになった。また、東京では盲導犬のワクチンや治療費は、都の獣医師会で7万円まで無料の支援があるので助かっている。(2005年10月27日取材)
KK 女性 松本市在住
ルーシー メス ラブラドールレトリバー クリーム 1頭目
日本ライトハウス 1999年4月4日生
犬の性格 お転婆、明るい、人なつこい。
ルーシーと歩き始めてから、4年が過ぎた。盲導犬歩行の場合、まだ未熟な状態の使用者と犬に対して犬好きな人たちから様々なアクションがあり、そのことに悩まされる。勝手に犬にさわったり話しかけたりされ、犬が落ち着きをなくしてしまい困惑した。盲導犬に対しての注意事項を説明して理解を求めると、気がついて犬にかまうのをやめてくれる人もいるが、盲導犬の仕事の邪魔をしているという自覚がない人が多い。また、犬の散歩をしている人の中には、こちらが犬の気配に気がついてルーシーを道の端に寄せて座らせているのにもかかわらず、わざわざ近寄ってくる。そのため驚いて転倒してしまったこともあった。まだ、慣れていなかったころの出来事なので今ではうまく対処できる。経験を積んだユーザーから、細かいことまであれこれ聞かれ、自分の担当の訓練士と違うやり方を言われるので混乱した。誰にでも、初めてがあったはず。長い目で見守って欲しかった。(2005年11月4日取材)
KT 女性 岡谷市在住
ゼーダー オス ラブラドールレトリバー 黒 1頭目
日本盲導犬協会 1996年11月7日生
犬の性格 穏やか。真面目で用心深い。
犬は苦手だったが、盲学校へ通学するため盲導犬を使うことに。盲導犬使用は、車の運転と同じ。1年間は若葉マークの時期がある。そう感じていたときから、早7年が経過。最近、こんなことが。電車に乗る直前、ゼーダーが未消化のドッグフードをもどしてしまい、急いで持っていたバスタオルを使って処理していたところへ電車が到着。乗降客がわきを通り過ぎていった。その電車に乗る必要がありホームの後始末を気にかけながら閉まりかけていたドアから車内へ。犬の口を拭き、座席に座ると前のせきにいた人から「大丈夫ですか。さっきは手伝ってあげられなくてごめんなさいね。」と声をかけられた。うれしかった。人の助けをあてにしている訳ではないが、目で確認出来ない時に感じる淋しさはある。自分の行いがまわりからどんな風に見られているのかもわからないが、誰かが気にかけていてくれたことを知った時には元気が出る。そんなことを思いながら電車から降りると、すぐに乗車した駅に電話をかけ、自分がいたホームを見て欲しいとお願いした。(2005年11月15日取材)
HT 男性 松本市在住
エリン メス ラブラドールレトリバー 黒 3頭目
日本ライトハウス 2002年10月22日生
明るくひかえめ。食べ物に関心をしめさず安心できる。
中途失明ののち、白杖歩行で15年ほど生活。勤務先が遠くなったのをきっかけに盲導犬歩行に切り換えることにした。犬も好きであったし、盲導犬使用による可能性に期待があった。実際に犬が来たことで大変だったことは犬の衛生管理。排泄のリズムがつかめないこと、毎朝のブラッシングなど慣れないことで緊張が続き心身ともに疲れた。2ヶ月位。自分のペースでやっていこうと思うようになり楽になった。経験のなかで自分にあった方法を見つけるしかないようだ。犬と歩くことの良さは白杖歩行と比べ歩くことの緊張が少ないこと。障害物を犬が避けてくれる安心感は画期的。歩くことを楽しめる。歩くスピードも爽快感が味わえる。盲導犬を使うようになって感じたことで思いがけない部分として、不特定の人々との交流が生まれたことがあげられる。それは非常に楽しいことだ。犬と歩くとパートナーとしての連帯感で結ばれる。精神面で犬から慰められ、癒されることの効果は大きい。視覚障害を持った人に対し勧めたいこととして、一度は盲導犬歩行を体験して欲しいということ。それが自分に合っているかどうか、選択肢のひとつとして考えるためにも。(2005年11月15日取材)
「取材に同行して」
「この子は盲導犬のゼーダー君です」と、北澤さんが私にパートナーを紹介してくれたのは、岡谷社協の視覚障害者対象のIT講座でした。私はその講座の講師でした。講座終了後も親しくしていただき、ある日「長野県内の盲導犬を回りたいんだけど協力してもらえないかしら?」と言われ、「おーやろう!やろう!」と運転手を引き受けたのです。それがこんなにいろんなお話を聞ける旅になるとは思いもしませんでした。
1頭ごとの物語に、胸が締め付けられたり、熱くなったり。一人で歩きたかったからとおっしゃるユーザーさんの傍らで、ハーネスを外したパートナーがゴロンとくつろぎ、尻尾を振っている幸せそうな光景を見て、一緒に歩いてるんだなあと毎回感動しました。
私は元嘱託警察犬だったシェパードを室内で飼っていた事があるのですが、毛の始末が大変でした。排泄物も巨大で散歩で下痢などされた時には本当に困りました。ユーザーさん達が一緒に歩く為に如何に気を使っているか、お知らせしていけたらなと思いました。
ユーザーの皆さん、取材させていだきありがとうございました。北澤さん、取材、原稿書き、本当にお疲れ様でした。
井上 緑
《ニューフェイス》
『新役員の紹介』
10月から運営委員として本会の活動を担って下さっている宇田理絵さんを紹介します。宇田 さんは松本市在住で獣医師でもあります。現在は動物医療の現場からは離れていますが、ハーネスの会のこれからの活動にとっても頼もしい力になってくれると思います。
“メッセージ”
ハーネスの会会員の皆様はじめまして。松本の動物病院に勤務していた時に、活躍中の盲導犬、ユーザーの皆様、引退犬と触れ合うことができ、多くのことを学びました。そして何か少しでもお役に立てることはないかと思い、役員としてお仲間に入れていただきました。人が好き!犬が好き!自然が好き!大騒ぎ大好き!な私です。これからたくさんの方々と知り合い、ハーネスの輪を広げていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
《事務局より》
『身体障害者補助犬ユーザーのための研修会に参加して』
☆去る12月1日、各ユーザーの皆様と引退犬の飼育者の方々に、一頭あたり5,000円の健康管理費をご指定の口座に送金いたしました。入金をご確認の上、ご不明な点がありましたら事務局にご連絡下さい。
また、今年度、医療費が40,000円以上かかった方も、事務局にご連絡下さい。
☆今年度の会費を未だ納入されていない方は、納入をお願いします。
☆メールアドレスをお持ちの会員の皆様、アドレスを事務局に教えて下さい。(メールでイベント等のお知らせや会報の配信をさせていただきます。)
《編集後記》
あけましておめでとうございます。
北沢さん、井上さん、清水さんを始め、多くのユーザーの皆さんのご協力により、本号が20号記念および「戌年」特別号に相応しい、読み応えのあるものに仕上がりましたこと、心からお礼を申し上げます。
今後も、紙面の向こうにユーザーの皆様のお顔が浮かぶ、そんな会報作りをしていきたいと思っております。
皆様の近況や困っていること、みんなで課題を共有したいこと、また、こんなことしてみたら楽しかったというようなことなどなど、事務局にお知らせいただければ嬉しいです。
今年も身体に気をつけて、良い年にしましょう。よろしくお願いします。(池田)
(編集係 原)