発行:長野県ハーネスの会 池田純
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「長野県ハーネスの会」
2017 9月 No.51
『平成29年度長野県ハーネスの会定期総会』
長野市障害者福祉センターにて29年度定期総会開催
前野弘美
日時 平成29年5月14日 10:30~15:00
会場 長野市障害者福祉センター 参加23名・盲導犬10頭
来賓 長野県障害者支援課 補助犬担当 小林正樹様
総会は自己紹介から始まり情報交換・事業に関する意見交換等々話合われ、
提出された議案(総会資料参照)は全て承認されました。
任期満了により会長が交代しました。新役員及びチームメンバーは以下の通りです。
会長 池田純
副会長 広沢里枝子
事務局チーム 加藤久美
対策チーム 池田純(兼務)
ウェルカムチーム 丸山訓代
編集チーム 前野弘美・片山幸子(アドバイザー)原哲夫・北澤とも江
ハーネス基金チーム 前野弘美・田中安子・細田寛子
会計 細田寛子・(前野弘美)
会計監査 古川智恵
※副会長についてはユーザーではない会員からの選出をとの声も有り、現在は1名です。今後の中で来年度に向け検討して行きます。
【議事から】
会計処理について
会報の発行費を独立した別項目にする。
医療費補助
早期に支給が欲しい場合は早期申請で対応する旨、規約に記載してあることを確認。
ウェルカムチーム 小旅行に関して
神戸の「六甲山の上美術館・さわるみゅーじあむ」への泊りを伴う旅行や
黒部への旅行など論議されました。
☆泊りを伴うのは大変など色々と話されましたが目的地の決定はされませんでした。
【提案】
信濃美術館に関して 原さん
新しく建て替えることになっており、
県民からの聞き取りを進めている。
視覚に障害が有っても楽しめる美術館にしたいと言う思いがある。
・ユニバーサル展示皆がそれぞれの方法で鑑賞できる
・誰もがいつでも楽しめる美術館にしたい
・展示と施設のユニバーサル化
☆会として同様の意志を持って支援する。
広沢さんから提案
美術館が、誰もがいつでも楽しめるものになるように提案するにあたっては、
その理念を美術館の運営理念等に明記してもらうなど、職員が変わっても、
理念が継続されるような提案の仕方をしていく必要がある。
【情報交換の中での項目】
ブラインドサッカー女子チーム、世界大会で優勝。
軽井沢で再び入店拒否があった。結果的には入れた。
駅で下車した後、タクシーがなかなか見つけられなかった。
浜松で入店拒否。担当者が対応を継続し経過を報告。
補助犬法施行から15年だが、まだまだ理解は不十分。
全国盲導犬協会が4月に4頭目を送り出した。
自転車に衝突された。危険走行が目立つ。
以上、総会の報告でした。
写真:総会の模様
新会長就任の挨拶 池田純
2002年に身体障害者補助犬法が施行されてから今年で15年になります。
この法律によって盲導犬・介助犬・聴導犬が法律の中で初めて定められました。
今では当たり前になったこの法律は、入店拒否、宿泊拒否に遭った盲導犬ユーザー、
地下鉄の乗車を拒否された介助犬ユーザーの長い間の運動の結果
制定されることになったものです。
2004年には、法律が改正され、
都道府県・政令指定都市・中核市等には、
補助犬の相談窓口を設けなければいけなくなり、
行政が積極的に補助犬をめぐるトラブルに介入できるようになりました。
この法律の施行後もなかなかなくならない入店拒否、宿泊拒否に対応すべく、
長野県ハーネスの会でも「対策チーム」がつくられ、
私も6年間担当させていただきました。
そして今、強く感じるのは、行政がどんなに頑張っても、ユーザーがいくら頑張っても、犬である盲導犬の行く先々でのトラブルがなくなることはないだろうということです。
その状況は、昨年施行された障害者差別解消法の下でも大きな変化はありません。
障害者差別解消法と同時に施行された障害者雇用促進法によって
雇用における障害者差別は強く禁止されているにもかかわらず、
松本の企業では、盲導犬ユーザーに対して差別的な対応がなされました。
この事案では、労働局に相談する前に、ユーザーが断念してしまったために、
差別事案としては、全く表に出ることはありませんでしたが、
差別をした企業はおそらく身体障害者補助犬法のことも
障害者雇用促進法のことも知らないと思います。
一方で、盲導犬を育成している11の団体が加盟する日本盲人社会福祉施設協議会では、
「施設における虐待防止、差別解消対応実践解説書」という書籍をこの秋に発行します。この書籍のCD版やテキスト版を育成団体を通じて
ユーザーにも配布する計画もあるとのことですのでぜひ読んでみてください。
高額な盲導犬の医療費を補助しようと創立された長野県ハーネスの会ですが、
発足当初の理念を維持しながら、行政に対する働きかけは強化していきますので、
何卒よろしくお願いします。
『回想』引退犬との日々 茅野永伯
◆茅野さんは引退犬飼育ボランティアとしてハーネスの会に関わり、
様々な会の活動にも参加して頂いています。
会との関わりは十数年に及びます。
今回は引退犬との関わりを『回想』として、会報に原稿をお寄せいただきました。
マックス(2003.8.3~2009.12.27)
静かで優しいけどちょっと頑固な紳士
民放ニュースでの“盲導犬引退ドキュメンタリー”や、
市民タイムスでの“引退盲導犬の飼育”が紹介され、
多くの方々から励ましのお便りをいただき、改めて身の引き締まる思いがしました。
両親が健在でしたので、越前海岸、金沢兼六園、能登輪島、新潟月岡温泉、
伊豆熱海、静岡美保の松原等々、沢山家族旅行に行きましたが、
引退盲導犬と説明すると同室を快諾してくれる宿があり、トラブルもなく
行儀の良さを感心され、誇らしく感じました。
14歳をすぎる頃から体調がすぐれなくなりましたが、
アルスターがきてから気力を取り戻し、
16歳5ヶ月の長寿を全うすることができました。
アルスター(2006.11.27~2010.1.20)
食いしん坊でやんちゃなひょうきん者
食欲旺盛で、お勝手で盗み食い、散歩途中で拾い食い、
更には、猫砂を食べウンチがそのまま出てきてビックリ、
体調を崩さなかったのでさらにビックリ。
パピーウォーカーさんご家族が、パピーの卒業を機に会いに来てくれました。
アルスターは初めてのパピーでとても印象深く、
長年パピーを続けるきっかけになったそうです。松本駅での再会時、
アルスターの喜びは10年のブランクを感じさせない感動的なものでした。
しかし、ご主人の病気をおしての来訪で、
数ヶ月後にご主人の訃報に接し胸が詰まりました。
脾臓破裂、脇腹の悪性腫瘍摘出、さらに年齢的な要因も加わり歩行が困難になったため、車いすを使って散歩をさせたいと考えました。
この車いすデビューをテレビ東京の「ぽちたま」で
『引退盲導犬と生きる』というタイトルで放映されました。
収録後にマックスの車いすも届き、
二頭と二人の散歩を3ヶ月ほど楽しむことができました。
パトリック(2010.3.31~2013.4.21)
素直で優しいが強面の聖者
ユーザーさんとのお別れの時、ウォーンと寂しそうな一声、
以後パトリックの鳴き声を聞くことはありませんでした。
これが精一杯のお別れの挨拶だったと思います。
我が家に来て早々、一時預かりのデリカ(当時4歳)と草原を走り回った後、
歩きがおかしいので調べたら指を骨折していました。
若い娘と久しぶりに会ったので、張り切りすぎたのだと思います。
日本ライトハウス・ボランティアデイにパトリックと参加しました。
デモレンジャーで活躍中の兄弟犬ポーシャとの再会、
多くのボランティアさん、ライトハウスやJASDの方々との交流で、
貴重なお話やお知恵を伺え、有意義な時を過ごすことができました。
併せて越前海岸と輪島の「ワンコの宿」に宿泊し、
周辺観光も思い出深いものになりました。
ジョーが心細かったのか、
気がつくとパトリックに寄り添って寝ている姿が印象的でした。
ジョーの病状が進行し殆ど掛かり切りになりましたが、
気遣ってか静かに見守ってくれていました。
心タンポナーデ(心筋と心嚢膜の間に体液が多量に溜まる病気)と
肺にも腫瘍が見つかり、重篤な貧血で入退院の繰り返しとなりましたが、
我慢強く自力で外に出て用を足し、
最後まで毅然として聖者のような姿が目に焼き付いています。
ジョー(2011.12.11~2013.3.8)
姿も心も優しい子
ジョーの引き渡し訓練の時、前任エルマを一時預かりしました。
このときにジョーと会っており、
五年後に我が家に来ることになるとは思ってもいなかったので、
なにか因縁を感じました。
てんかん発症とのことでしたが、
CT撮影の結果(動物病院のCTで特定した初めての事例)、
3cmほどの脳腫瘍が見つかりました。
発作が起こると脳圧を下げるために入院し点滴治療が必要で、
1年3ヶ月のうち延べ150日くらいの入院となってしまいました。
発作と徘徊であちこちに衝突し頭が傷だらけになるので、
リビングに十畳ほどの緩衝壁と防水シート敷きのスペースを作り、
夫婦交代で24時間の介護を4ヶ月ほど続けました。
最後は発作を止められなくなり、辛い苦しい判断をせざるをえませんでした。
デリカ(2013.6.23~)
賢く可愛い人間大好き娘
最初は4歳の時ユーザーさんの病気治療で3ヶ月、
次は7歳の時ご家族の病気で一時預かりとなりましたが、
ユーザーさんの都合で9歳でそのまま引退することになりました。
この間、病院やご自宅に何回か訪問させて頂き、
デリカの様子をお伝えしてきましたが、
引退後も何回かご自宅に訪問させていただいています。
優しくてベラにベッドを占領されても何も言えず、目で訴えてきます。
可愛くて、人が大好きで、ご近所の皆さんから可愛がられています。
ベラ(2013.6.27~)
器量よしで可愛いいマイペース娘
ユーザーさんが、ご家族でわざわざ送ってこられ、
生活環境を見たりデリカとも会い、安心して帰られました。
その後ベラの様子を時々お知らせしたり、
ライトハウス・ボランティアデイ参加時にご案内しましたが、
都合でお会いできなくて残念でした。
我が家に来て以来胃拡張の症状が続き胃捻転を引き起こしましたが、
幸い開腹手術で一命を取り留めることができました。
その後、胃拡張の症状が改善され、今までで一番健康そうな状態が続いています。
15歳を過ぎ後ろ足の筋力の衰えが目立つようになってきましたが、
一日一日を大切に見守ってゆきたいと思っています。
エルマ
上記ジョーの前任犬で、交代時に一時預かりしました。
散歩の時田んぼに飛び込んでしまうような、やんちゃ坊主でした。
コニファ
大阪から山梨北杜市のボランティアさんに引き取られるとき、
岡谷の鉄砲水災害で交通が遮断され松本空港に迎えに来られなくなり、
我が家で交通再開まで緊急で預かりました。
ウイング
2回一時預かりしました。残念ながらお星様になったそうです。
デミとディライト
最近お預かりしましたが、2頭ともデリカの兄弟犬で、不思議な絆を感じます。
今後ともご支援の程、よろしくお願いします。
写真:茅野さん夫妻と引退犬2頭
もっと知りたい犬のこと⑩
≪「寝耳に水!?」『外耳炎』≫
獣医師 橋本知也
◆犬の健康や行動についての豆知識を紹介するコーナー!
犬を診療していて多く遭遇する病気の一つが外耳炎です。
垂れ耳の犬種は耳の中の通気性が悪く、細菌や真菌(カビ)が殖えやすくなります。
それを放っておくと耳の穴が狭くなるほどに腫れたりして治りにくくなります。
外耳炎の原因は耳ダニ、細菌、真菌、アレルギーなど多岐に渡りますが、
共通して有効なのが耳の中を清潔にし、適切な点耳薬を使うこと。
それができると外耳炎の予防や初期対応を在宅で行えます。
犬の外耳道は垂直耳道と水平耳道から鼓膜までをいいます。
手入れの手順は次の通り。
①2人で行う。
1人が犬を抱きしめるように支えて耳を振らせないようにし、もう1人が手入れをする。②片方の手で耳介を持ち、耳の穴を上に向けて
洗浄液(ノルバサンオチック、エピオティックなど)をたくさん入れる。
犬にとっては寝耳に水!?だが、遠慮せず入れる。
③耳根部(水平耳道の辺り)を
人差し指と親指ではさんでやさしく奥の耳垢をもみ出すようにマッサージする。
④ティッシュを使って液や出てきた耳垢をやさしく拭き取る。
耳の奥に綿棒を使うと外耳道を傷つけて悪くなるので×。
⑤耳を振らせる。
汚れがひどければ再度洗浄を行う。
⑥耳介のしわの汚れをカット綿やティッシュでやさしく拭き取る。
ここでは綿棒を使用してもよいが、くれぐれもやさしく。
⑦外用薬を耳の奥に入れて、より奥の方にもみ入れるようにマッサージする。
近くの獣医師に手本を示してもらうとよいでしょう。
定期的な耳の洗浄は外耳炎の予防に大切です。
「定期的って?」。
これは個体差があり答えにくい質問ですが。
犬が後ろ足で耳をよく掻いたり、「パタパタ」と耳を振る音を
よく聞くようになれば手入れしてあげてください。
治りにくい場合は外耳道内に出来物があるかどうかを見たり、
耳垢を顕微鏡で見て原因を探ったり、
何種類もある抗生物質の中から効きやすいものを調べる試験
(抗生物質感受性試験)をする必要がありますので、獣医師に相談してみてください。
(日本ライトハウス盲導犬訓練所発行『ホワイトハーネス39号』から転載)
※本号をもって連載は終了します。
旅は犬連れ世は出合い⑩
リレーウォーク≪天竜川に沿って遠州灘へその2≫
飯田市 原哲夫
私は昨年2月から12月にかけ、
天竜川沿線を静岡県の遠州灘河口まで16回に分けて歩きました。
その沿線で体験したり感じたりしたことを前号から紹介しています。
〔県道1号線を行く〕その1
◆3県をつなぐ県道1号飯田・とみやま富山・さくま佐久間線
「遠州灘へ!ウォーク」での長野県内道中は、
専ら県道1号線を天竜川に沿って南へ南へと県境を目指しました。
この県道は長野県南端の天竜村神原地区までです。
県境を越え愛知県とよね豊根村とみ富やま山地区に入ると愛知県道につながっています。正確な道路名は、長野県においては「長野県道1号飯田・富山・佐久間線」と言います。更に愛知県では「愛知県道1号飯田・富山・佐久間線」となり、
佐久間ダムで静岡県道につながります。
静岡県ではやはり「静岡県道1号(以下同じ)」となっています。
国の基準では主要地方道と格付けされていて、
全長は約92㎞(長野県分約46㎞、愛知県分約30㎞、静岡県分約16㎞)だそうです。
道路の標高差600mのアップダウン
県道1号線を飯田市から静岡県まで全線踏破して印象に残っていることの一つは
標高差によるアップダウンの大きさです。
単純に出発点の飯田市と目的地の静岡県佐久間町の間の標高差は230mとなっていて
大したことはありませんが、
実際の県道はその地域の地形を反映して山谷を超えて続いています。
最も大きな変化のあった区間は飯田市を過ぎて下伊那郡やすおか泰阜村内と、
更に天竜川の対岸に渡って阿南町の湖岸道路部分までの区間です。
天竜峡辺りの海抜はおよそ380mですが、
泰阜村に入ると最高地点は700mを超える地点があり、
その前後にも標高差で100mから200mぐらいの上り下りを繰り返しました。
これは大変厳しい歩行になりました。
私は上り坂では常に傍らのガイダがぐんぐんと引っ張るように誘導してくれるので
どこかにゆとりがありましたが、同行のKさんはかなりきつそうでした。
南北に長い泰阜村を歩き通したとき体力面で大きな負荷を感じた理由として、
地形要因の他に時間の制約もありました。
目標とした村南端のJRぬくた温田駅から
電車を利用して飯田方面へ帰る計画でしたから、
当日の歩行時間は3時間以内。
僅かな休憩タイムをとりながらてくてく、せかせかと歩き続けたのです。
最後の峠のような地点を越えてからは
緩やかな下りが続き目標時刻より15分ほど早く温田駅に着くことができました。
これらの区域を除けば出発地点の飯田市から県道1号線の最終地点の佐久間町までは、
概して平坦な部分が多かったという印象です。
一定のテンポを保ちながら歩くことにより私は両脚の足裏と全身に感じる負荷を通して
県道1号線に沿った地形の上下変化をしっかり身体に刻み込むことができたと思います。ほとんど往来のない長野・愛知県境
5月の連休の前、いよいよ長野・愛知県境に到達し
更に愛知県豊根村とみ富やま山地区から
静岡県浜松市天竜区水窪町おおぞれ大嵐地区まで歩きました。
飯田線の長野県最南端のなかい中井さむらい侍駅から静岡県の大嵐駅までは約11㎞。
中井侍駅で下車して天竜川を右に見ながら20分ばかり線路に沿って林道を進むと、
これまた天竜川に架かる最南端となるひら平かみ神橋に出ます。
急な斜面は茶畑、杉林や竹林の切れ間からときどき陽射しを感じるものの
日陰が多く快適に歩き続けることができました。
このかみ神橋を西側に渡り右岸で再び長野県道1号線に合流します。
アスファルト舗装されていて道路幅は6mぐらいはあり、
車の行き違いは十分できそうです。
概して平坦でところによっては
僅かに身体に感じる程度の緩やかな上り下り区間はあるものの、
全体としては僅かに下り勾配となっているようです。
左側は杉林があったり竹林があったり、その切れ間の崖下には
天竜川がちらちらと見え隠れしているようです。
右側には山林の傾斜地や県道に覆いかぶさるような崖が迫る場所もあります。
この先、県道1号線は県境を越えて
愛知県豊根村に入っても同じように良好な道路状態が続きます。
更に豊根村富山地区を抜けて佐久間ダム方面に向かっても急な上り下りはありません。
右岸山側から天竜川に流れ込む小沢に架かる橋の前後で僅かな起伏を感じる程度でした。長野県最南端の集落である天竜村さかべ坂部地区への登り口の分岐点の手前で
1台のミニバンが私たちを追い越して行きました。
〒マークが貼ってあったようですから
坂部地区へ郵便物の集配に行くところだったかも知れません。
ここまでに見かけた車はこれ1台、
この先の県境までの間でも人はおろか車の通行はありませんでした。
写真:愛知県道1号線富山地区にて
分岐点を過ぎて少し行くと民家の廃屋が道路沿いに1軒ありましたが、
周囲の地形や風景には大きな変化もないようでした。
耳に入る物音は鳥のさえずりぐらい。
そうだ、県境を超えたあたりでは私たちを遠くから見つけたのか、
斜面上方の林から野生猿の威嚇声も聞こえました。
また、道路の右側崖上から流れ落ちる水音はところどころで聞こえますが
天竜川の川音は全く聞こえません。
唯1回だけ対岸の静岡県側から、
飯田線を通過する電車音が佐久間湖の谷を越えて微かに聞こえました。
小和田駅辺りになるのかも知れません。
この日は愛知県道1号線の豊根村富山地区まで歩き
佐久間湖に唯一架る鷹巣(たかす)橋を渡り
飯田線おおぞれ大嵐駅から電車で帰りました。
とにかく県道1号線を利用して長野県と愛知県の間での人や物の往来や交流は
全く途絶えているように思いました。
県境近くでは道路面に木々の細かな枝が、
場所によっては敷き詰めたかのように落ちていて、
ひょっとしたら何日も車が1台も通っていないのではないかとも想像しました。
写真:飯田線大嵐駅にて
(次回へ続く)
新連載 本ほどステキなものはない!
①『奇跡の脳』 長野市 池田純
今回紹介するのは、
ジル・ボルト・テイラー著、竹内薫訳「奇跡の脳」(新潮社2009年)です。
著者は、2歳年長の兄の統合失調症の症状を見ていて、脳科学者を目指します。
脳の研究の傍ら、
統合失調の人とその家族の組織のNami(ナミ)に深く関わるようになります。
ところが37歳という働きざかりのある朝、
起きると自らに起きた異変に気がつきます。
左脳にあった先天性の脳動静脈奇型の箇所から出血してしまったのです。
まるで、濁ったプールに潜った著者が、
プールの濁りが徐々に透明になっていくのを見つめているように、
自らの脳の中で起きている異変を自覚していくのです。
リハビリテーションの現場では、
左脳に脳出血があると、
右片マヒの症状が出現して、言語障害になってしまうと考えますが、
著者は、それらの症状の広がりを内側から見ているのです。
失語と言われますが、
著者からすると、概念が揺れている。
発しようとする言葉に近付くために揺れているという表現を使います。
しかし、揺れに揺れても、結局は目的の言葉に達することはできず、
電話をかけることもできません。
「体の境界がなくなってしまった」と表現し、
自らの身体感覚(ボディ・イメージ)も失い、
自らの体と外界との境界もあいまいなものになってしまいます。
それでも何とか記憶していた実家に電話をして、
救助要請をします。
病院でも、著者の反応が鈍いことから
やたらに大きな声を出す医師や看護師が多い中でも、
ベッドサイドに座ってやさしく語りかける医師もいます。
著者は、必死に「私は聞こえている。
話せないだけなの!」と訴え続けます。
蛍光灯の光も目の中に刺すような痛みを与えます。
とにかく眠りたい、眠りたいと長い時間眠り続けます。
入院して6日目には、母と共に自宅であるアパートに帰り、
母と二人三脚のリハビリテーションが始まります。
文字が単なる模様にしか見えない彼女は、
母と共に文字に意味があることから学びます。
そして2カ月後やっと手術することになります。
出血した部位からカテーテルで吸引する手術です。
と、ここまで読んでくるだけで、アメリカの医療の現実を垣間見ることができます。
たとえ医師であっても、
1日10万円にもなる入院費用を出すことは容易なことではないことから、
6日目には自宅療養に入ります。
高度な技術を持ったリハビリテーションスタッフがいるにもかかわらず、
母がその代わりに生活の世話からリハビリテーションまで一切をすることになります。
著者はこの体験によって、左脳と右脳の対話について深く考察することになったのです。
(サピエ図書館に点字・デイジー共にアップされています。次回もお楽しみに!)
デビュー『ボクはロン』長野市 木暮恒男
皆さんこんにちは、ぼくは今年3月18日に、
アイメイト協会を卒業し、盲導犬としてデビューしたニューフェースです。
正式の名前は、ハリーと言いますが、主人の安全歩行を考慮して、
「ロン」と呼んで下さい。
生年月日は2014年7月22日、満3歳になったばかりです。
雄のラブラドールレトリバー、イエローです。
身長は57cm、体長(頭からしっぽまで)は56cm、体重は23kgで、
とてもスマートです。鼻筋が通っていて面長な顔です。
鼻の頭は肌色で、赤みがかっています。
鼻筋から額・頭・背中・しっぽの中央ラインは、薄い茶色ですが、
他は白い毛で覆われています。
主人にとってぼくは、2頭目の盲導犬です。
前の犬と比較してはいけないと、訓練所から言われてきたのに、
前の犬の方がイケメンだっただの、
度胸があり、悠然としていただのと言っているんですよ。ひどいですよね。
ぼくはまだ発展途上なんです。皆さんも暖かい目で見守って下さい。
写真:ロンことハリーの写真
デビュー『いつかは四国八十八か所』中川村 佐々木育子
上伊那郡中川村の佐々木育子と申します。
パートナーは黒ラブの「ジップ」と言います。7月7日に盲導犬を取得しました。
私は全盲になって3年半が経ちますが、自分の足で歩きたいと思い、
テレビで見た盲導犬を思い出し、「富士ハーネス」に連絡しました。
取得してから2か月ほどですので、うまく行かないことばかりですが、
ジップとフルート教室に出かけたり、プールに行ったり、
家の周りを歩いたりしています。
どのくらいかかるか分かりませんが、四国八十八か所を歩くことも考えています。
これからジップと、訓練のことを思い出しながら、楽しく歩いていきたいと思います。
デビュー『力強い味方』飯山市 曽根田孝
◆パートナー エネザ ♀ 黒ラブ
2014年5月7日生 日本盲導犬協会
私と盲導犬との出会いは必要に応じての熱望ではなく何気ない時間の一部分でした。
私は目を悪くして、
点字を習うのかほかに何か方法を模索するのか施設にいながら時間を過ごしていました。そんなときに盲導犬との出会いがあり、夢が広がりました。
しかし、まだ教科課程が残っていたために、すぐに盲導犬の話へとは進みませんでした。そんな折、去年の夏に富士ハーネスから連絡があり
話はとんとん拍子になり、訓練に入りました。
飯山は新幹線が来たりで新しい街に変化しています。
目が見えた頃の記憶と現在の道との勘違い、それから距離感の誤差には苦労しています。また、飯山では盲導犬は見当たらず、今回お仲間にいれていただき、
色々情報をもらい参加できることは力強い味方ができたと思っています。
事務局から
1.運営委員会日程
平成29年度第2回運営委員会
日時 平成29年10月1日(日)
松本市Mウイング403
Tel0263-32-1132
松本市中央1丁目18-1
平成29年度第3回運営委員会
日時 平成30年3月4日(日)
長野市
*皆さま予定に組み入れて下さい。
2.疾病治療費支援の申請について。
・申請を希望する人は申請用紙を事務局に請求して下さい。
・対象期間は当年1月1日から12月31日までの1年間です。
・申請の期限は来年の1月20日までです。
・必要書類
「疾病治療費報告書」(疾病名、処置内容が付記された領収書を添付する)
・送付先
〒390-0802
松本市旭2-11-45「ふれっ手」内
長野県ハーネスの会会計係
*事務局メールアドレス
jimu@harness-nagano.com
編集後記
朝夕、めっきり涼しくなり、
暑かった夏もようやく終わったかに思えるこの頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
夏大好き!暑いのも好き!夏大好き人間の私としてはちょっとサビシイところです。
夏休みや正月休みの長期休暇には我が家の滞在人数がいつもの2倍、3倍になります。
特に娘一家は長期滞在のため、
「ナガノのおばあちゃん!」という孫娘のかわいい声にめろめろになりつつも、
くたくた、へろへろになります。
とはいえ、毎日のお出かけとランチで行ったことのないところも行くので、
何となく得をした気分になることもあります。
編集後記のスペースがたくさんあるので、そのひとつを紹介します。
とある長野のレストラン。情報誌を見て何となく行ってみたいと思っていた店です。
店内を見回すと壁に何やら英語が書いてあります。
“Stayhungry,Stayfoolish”
え!?「ステイハングリー」は、まあ「貪欲であれ」みたいな意味かと思ったんですが、
「ステイフーリッシュ」がわからない。
「愚かであれ」・・・?「スマホ!」と息子に言うと、たちどころに
『スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学で
語ったスピーチの最後の〆の言葉として、あまりにも有名…』
との解説がでてきました。またまた無知をさらけだしてしまいましたが、
「聞くは一時の恥」。
家に帰ってくわしく調べてみました。
いくつかある解説の内、気に入ったものを紹介します。
この解説をした人はスピーチ全体をみて、最後のメッセージをこう受け取ったそうです。「恐れず、迷わず、捉われず、信じた道を行け」
私が今実行すると単に「頑固なおばあちゃん」と言われそうですが…。
ちなみにジョブズの臨終の言葉は“Oh,wow”だったそうです。
なかなかですね。それなら私は「ああ、面白かった」と、
最後に言って旅立ちたいと、強く思った今年の夏でした。
(片山)