会報 「ハーネスながの 第55号」


       ハーネスながの 第55号 (2018年12月号)
発行:長野県ハーネスの会  池田純 編集 前野弘美 片山幸子
〒381-0043 長野市吉田3-16-13
(株)Jハート内 Tel. 026-214-0802

振込み:ゆうちょ銀行 00570-7-17991 「長野県ハーネスの会」
            ←ーーー 本号の内容 ーー→
① 第2回運営委員会の報告       池田 純
② ハーネスの会ミニ旅行の様子     丸山訓代
③連載/旅は犬連れ世は出合い      原 哲夫
④リタイヤ犬その後           谷口 和夫
⑤安曇野だより             古田綾夫
⑥連載/本ほどステキなものはない!   池田 純
⑦ 博物館を訪ねて           加藤 久美
⑧事務局より              加藤 久美
⑨ 編集後記              片山幸子  
“運営委員会報告”
         『長野市で第2回運営委員会開かれる』  会長 池田 純
今年度第2回運営委員会は、11月11日(日)、長野市障害者福祉センターで、盲導犬
ユーザー4名、支援者4名が参加して開かれました。
 池田より、ウェルカムチーム主催の東御市海野宿の散策等について報告し、来年の
ミニ旅行の候補地として、新たに電気自動車が導入された黒部第4ダムについて情報
交換しました。
 加藤さんから、日本点字図書館附属の池田輝子記念『ふれる博物館』の第2回企画
展である「宇宙をさわる」の報告がありました。
 新たに造られる信濃美術館の運営にも反映していただけるように、今後とも、美術
館や博物館の情報もお寄せください。
 昨年の総会以来の曽根田さんからは、今年度から飯山市も飼育費助成として、年度
末に36,000円の補助が出るようになったとの報告がありました。
 前野さんからは、視覚障害者にとって大きな壁となっているスマートフォンの文字
入力等を補助するRIVO2について説明がありました。
 運営委員会終了後は、曽根田さん、片山さんを除く5人で、長野駅まで汗をかきな
がら歩きました。
 *写真説明:「運営委員会のようす」
“ハーネスの会ミニ旅行の様子”
    『東御市海野宿・チーズ料理の旅』      ウェルカムチーム 丸山訓

9月30日(日)、一行12人と盲導犬3頭は前日の台風の雨が上がり、薄曇りなが
ら明るい空に気をよくして坂田さんのマイクロバスに乗り込み出発しました。海野宿
白鳥神社から徒歩1キロほど、ボランティアの方のガイドで歩きました。閑静な道に
出た盲導犬があまり元気に歩くので、ガイドの方を追い越しそうになり、ハーネスと
引き綱を押さえながら歩きました。
◆旧海野宿の佇まい
江戸から新潟に抜ける北国街道のこの宿場町は趣があり、俳人の小林一茶も江戸から
故郷の柏原に下った時に長旅の足を休めたとの事。
昔づくりの町家・そばやさん・喫茶店などの磨き上げられた格子戸をさわったり、当
時の生活用水だったという道沿いに流れる小川のサラサラという音を聞いていると、
自分たちの原点にたったようで心落ち着くものがありました。
 文化財に指定され40数年前から保存に努めてきたこの町の人々にも感服しました
。なにしろ電線も電柱もないのですから。
 この地で詠んだという一茶の句碑がありました。
 『夕過乃(ゆうすぎの) 臼(うす)の谺(こだま)の 寒(さむさ)哉(かな)』
◆チーズ料理を楽しむ
昼に向かった「アトリエ・ド・フロマージュ」は見晴らしのよい小高い丘の上にあり
、素敵なところでした。チーズフォンデュとチーズリゾットを頼みましたが、お店の
人が卓上でお粥にチーズを入れて混ぜ込んでもらった味は格別でした。足元にいる犬
たちの静かな寝顔もいいですね。( 会友 MN)
※フロマージュのレストランのご案内 《リストランテ フォルマッジオ》
電話:0268-63-0121 営業時間 ランチ:11:00~14:30 ディナー:17:00~20:00
 *写真2枚説明:「一茶の句碑」・「宿場町を歩くメンバー」
“連載/旅は犬連れ世は出合い⑭”
      『松本市街地一押しのウォーキングコースを歩く』   飯田市 原哲

連載で「犬連れ旅シリーズ」を続けていますが、今回は天竜川沿線の県境地帯からか
なり北上して信州のど真ん中松本市街地での体験と出合いをリポートします。
 実は、11月から12月中旬にかけて平日は松本で、週末は飯田に戻っての生活を
送っています。月曜日の午後から金曜日までの平日の4日半は松本に居て、週末から
月曜日の朝までは飯田というわけです。
◆早朝ウォークは私たちの日課
 8年前から私は盲導犬をウォーキングパートナーとして毎朝5㎞ほどのウォーキン
グをしています。完全にこの習慣は生活の中に定着しています。ガイダとは6年前に
チームを組み続けています。松本での4日半の生活の中でも取り入れることにしまし
た。火曜日から金曜日のできるだけ朝食前の時間帯にするようにしています。所要時
間は1時間前後です。
◆私の「一押し?」のウォーキングコース
 松本の自宅の近くには盲導犬同伴でウォーキングする者にとって、とても環境の整
ったエリアがあります。歩道の整備や音声信号機の設置などの交通安全の点からも道
順の分かりやすさの点からも、また風景の点からも、私が一押ししたいコースです。
 松本市街地の北部区域に当たり、県民文化会館(キッセイ文化ホール)と松本市総
合体育館の入る公園地から信州大学の全キャンパス、更にその南には松本盲学校まで
含みます。東側には女鳥羽川が南北に流れ、更にその東側に並行してやまびこ通りが
走っているエリアです。
 私の歩くルートはこの辺りの女鳥羽川を縦軸としてやまびこ通りから県民文化会館
外周歩道、信大キャンパスとその南の附属病院の西側歩道を南下します。旭町小学校
の北側で左折して住宅地の中のクランク状の道を東に進むと、盲学校前を通って再び
女鳥羽川を西から東へ渡ります。そして再びやまびこ通りに出ます。そのまま北上す
ると出発点近くに到達するわけです。
 *写真説明:「県民文化会館(キッセイ文科ホール)北側通り」
私が一押しする理由はいくつかあります。その一つは、風景と自然空間を感じられる
ことです。女鳥羽川に架かるスポーツ橋からは県民文化会館公園の樹木を想像したり
、女鳥羽川両岸の自然空間の広さを感じたりしてほっとします。夏の早朝には県文公
園の外周歩道ではジョギングやウォーキングをする人達にも会います。
*写真説明: 」女鳥羽川側から県文会館を望む」
 一押しのもう一つの理由は、女鳥羽川を挟むおよそ4㎞のほぼ長方形に沿って歩く
と、街や区域のそれぞれ異なった佇まいを感じることができます。歩くのにつれてこ
れらの変化を感じることがその場その場で気持ちをリフレッシュしてくれるのではな
いかと思います。女鳥羽川のスポーツ橋では下を流れる瀬音を聴くことができます。
そして公園外周歩道では樹木の葉擦れ音や枯れ葉を踏みしめる感触に風情があります
。更に南に下り、信大キャンパスと附属病院の西側道路は歩道もやや狭くなるものの
車も人の通行も多くなり最も緊張する区間です。旭町小学校の北側で左折すると住宅
地域に入ります。歩道はないのですが車の通行は少なく騒音からも少しずつ離れてほ
っとします。小学校の校舎から子供たちの声が聞こえるときもあります。再び女鳥羽
川に出て今度は西から東に渡るとやまびこ通りに出ます。この道路は交通量も多く市
街地を抜ける幹線道として大型車も目立ちます。
◆県内を代表する盲導犬のメッカ(聖地)?
 ところで、これは偶然のことですが、私が一押しのウォーキングコースとしている
、延長およそ4㎞の長方形の区域の直ぐ周辺には盲導犬使用者が何と4人も住んでい
たのです。コースの西側には前野弘美さん、東側には丸山良三さん訓代さん夫妻、そ
して原の4名です。信大キャンパスまたは県文公園を中心とする半径500mの円内
に、盲導犬使用者が4名と言うのは県内1の盲導犬密度地域ではないでしょうか。そ
して引退犬ウォーカーも含めれば茅野永伯さんのお宅もこの円内に入ります。現役お
よび引退盲導犬のメッカ(聖地)とも言えるのです。
◆歩道改修工事の現場警備員との出合い
 信大キャンパスの西門の南北両側の歩道では改修工事のため、金網が張られて歩行
者は立ち入ることはできなくなっています。この改修工事現場には安全確保のための
現場警備員が配置されています。車道の交通量も多いうえに、歩道を利用する歩行者
や自転車利用者もいます。また歩道の反対側には郵便局・銀行・コンビニなども軒を
連ねていて大学キャンパスとの間を行き来する学生が多いのです。
 その日はたまたま午前8時半ごろにその辺りを通りかかりました。歩道の立ち入り
禁止部分になると、ガイダは歩道から下りて金網フェンスに沿って進み始めました。
そんな私たちを見つけて最初の現場警備員さんが近づいてきて声をかけてくれました
。どこまで行くか尋ねられたので「附属病院前交差点の方まで」と伝えました。その
警備員さんはトランシーバーで何やら連絡を取り合ったようでした。直ぐ別の警備員
さんが来て交代となりました。新しい警備員さんは、「どうぞ腕を」と言いながら私
の右側やや前方に並び左肘をそっと私の右腕に触れるようにしました。「どちらまで
行かれますか?」私は、「ありがとうございます。病院の方へ」と言いながら右手で
その肘を掴ませてもらい、左手のハーネスを放してリードに持ちかえました。この場
所ではもう何回も現場警備員のみなさんに同じような方法で前方の歩道までガイドし
てもらっていますが、この警備員さんの私への近づき方と言葉がけの適切さにはちょ
っと驚きました。そして、「分かりました。私は長盲の教頭をしていました。」と全
く想定外のことばが飛び出してくるではありませんか。えっ、嘗ての同業者か?私は
手引きガイドを受けながらも頭の中で何と返すべきか目まぐるしくいろいろなことば
を考えました。「そうですか?」というのが精いっぱい。「実は私も・・・」とか、
「いつごろのことですか?」とか、「失礼ですが、お名前は?」などを考えましたが
、ぐっと喉もとで押さえて歩くうちに改修区間が終わり再び歩道に上がりました。私
はお礼を伝えて別れました。
 *写真説明: 「信大西門付近の歩道改修工事で誘導する現場警備員」
 何故、その警備員さんは自らの職歴などを口にしたのだろうか?きっと盲導犬連れ
の視覚障害者である私を少しでも安心させてくれようとしたのだろうと思いました。
信大正門前から附属病院前交差点、そしてその先にかけてもその警備員さんとの一分
足らずの出合いと対話について反芻しました。「つまらぬことを言わなくてよかった
」と私はつくづく思いました。
 そして、それとは別にあの警備員さんの職歴と今の姿から改めて勝手な想像をしま
した。今の工事現場の警備員の仕事にはきっと学校を定年退職した後に就いたのだろ
う。長盲の教頭を最後に定年退職したのだろうか?長盲の後どこかで校長先生をして
いたのだろうか?それにしても教職にあった者や学校の管理職だった者の再就職の職
場として警備会社を選び、現場警備員として炎天下や寒風吹きすさむ屋外で生き生き
と活動する姿に新鮮な驚きを感じました。きっとあの嘗ての教頭先生はこのような仕
事が本来は好きだったのかも知れません。交通量も多く傍若無人の学生が行き来する
現場では適格な状況判断と瞬時の指示や行動が求められるでしょう。やりがいもあり
面白いかも知れないとも考えました。なかなかうらやましい第2の職業生活を送って
いるのではないだろうか。
 そんな勝手な想像をすると彼の生き方には清々しさも感じるのでした。
“リタイヤ犬その後”
           『引退犬と暮らす日々』        松本市 谷口 和

デミが引退して1年と半年が経ちます。今は12歳と半年になりました。私は代替えを
希望しませんでした。職場の環境と私的環境から盲導犬の必要性がなくなってしまっ
たからです。将来また持てれば持たせていただきたいと思います。
デミの引退先について家族が引き取りたいと強い希望もありましたが、私自身も同じ
気持ちでした。協会やデミのパピーさんとも相談させて頂き、引き取らせて頂くこと
ができました。
 デミの近況ですが普段家の中はフリーにしております。今のところ病気もせず元気
に過ごしております。ただ筋力が低下してきたように思いますが、通常に歩いており
ます。老後のことが不安ですが家族共々、デミが穏やかに過ごせるよう見守っていき
たいとおもっています。 (谷口 デミ)
 *写真説明: 「敷き物の上のデミ」
“安曇野だより”
          『穂高の古田の最近の犬たち』      安曇野市 古田綾

皆様には、なにかとご無沙汰をしております穂高の古田です。私は、ここ2年間で1
年毎に犬を替えることになってしまいました。その度に、我が家のシキタリを覚えさ
せないと、なにかと不便・面倒ですので、替えたくは無いのですが、現状は、自然と
替わってしまいました。
 2年前のアーニーは、10歳の定年で元パピーさんの家に帰り、その家に居た、盲
導犬だった弟2頭と共に、うんと元気で、楽しく暮らしています。12歳になり、今
の元気の残りは少なくなっているから、今のうちに会わせたいと、元パピーさんが、
先日大阪から連れてきて対面をさせてくれました。
アーニーは、筋肉もついていて、体がしっかりしていました。運動量が違うようでし
た。古いハーネスを着けて盲導犬4頭で近所を歩き、愉快な時間をもらいました。ア
ーニーたちは、穂高の里山の中に有る、犬と泊まれるホテルに泊まったのですが、夜
に犬のトイレを外でやっていたら、ものすごい数の猿に取り囲まれて怖かったそうで
す。穂高の里山では、普通なのですがねえ。
 その後にもらった犬、ビンカは、やさしい感じの犬で、覚えるのも早かったのです
が、他の犬猫等に対して、反応が強くなり、修正もできなく、近所の犬に嫌われまし
た。訓練所に再訓練を頼みましたら、交換をした方がよいとの事で、訓練所へ行った
まま、別れました。大阪の元パピーさんの家で住んでいます。その元パピーさんが「
お別れをしていないので、穂高へ連れて行き、お別れをさせてあげる」と言われてい
ます。犬には、動きの修正ができるものと、割合出来にくいのがある事を知りました
。まあ、人間と同じく、これも、三つ子の魂かな、などとね。
その後、今の犬は以前にご紹介をいたしました、もらってから一年を経ています。3
歳になった、ゴールデンとラブのF1の女の子です。名前のデイジーは、20年くら
い前に流行をした花の名前でしたが、今は残念ながら、あの大流行の跡も全く消えて
いますので、名前の説明も面倒になっています。体重は、25キロで、全身真っ黒。
目も黒いので、目があるかないかが、わかり難いそうです。やや小型で、この犬は足
が太く、水かきがぶ厚いのです。それに耳もぶ厚くて大きく、耳の穴をふさいでいま
す。また耳の穴に両側から巻き込んでいて、掃除が面倒です。うんと昔の姿なのかも
知れません。
 それで、大昔見えた頃に見た絵を思い出しました。中世の頃か、北欧の「狩人」と
か猟師」とかの題名で、ブリューゲルと言う人が描いた大きな絵が有りました。その
絵は、遠くに雪山、近くにスケートで遊ぶ子供達、手前に大きな木の下を猟師が歩き
、その前を真っ黒な猟犬が数頭、歩いていた絵でした。
 我がデイジーを触ってみますと、その絵の犬に似ている感じがしました。それで、
我が家に来た人に伝えましたら、スマートフォンで調べてくれました。すぐ見つかり
ました。写っているのが小さいので、絵の犬と似ているかは、「疑問」と言われまし
たので、図書館の本で調べてくれと頼んでおきました。野性味のある、猟犬の魂も残
っているかな、などと期待をしているのです。
 その我がデイジーは、残念ながら今の所、うんと気が小さいのです。すぐ呼吸が荒
くなり、この夏も花火の音に反応をしていましたが、ようやく呼吸の乱れがなくなっ
てきたようです。田舎では、遠くの納涼花火が、あちこちから聞こえましたので、犬
はそんなもんかと思ったのかも知れません。
 今の大問題は、教えた事はよーく覚えますが、暫くすると知らなかったかのように
動きます。忘れているのではないのです。やらないのです。今朝も、丁字路へ停止を
しないで出て行き、車を止めてしまいました。
要するに、事前に声をかけておかないと、忘れたようにやらないのです。これでは知
らない所へは危険で行けませんので、確実な動きを定着させるために、頭をひねって
います。これも三つ子の魂百までかな、などとも思ったりしています。我が家から道
へ出る時には、何もいわないのに、いつも必ず大げさに首を振って止まります。これ
から出かけられるのに、文句を言われたくないような感じなのです。こちらは、命を
預けている犬に、どうしてやろうかなどと、いつも楽しみながら対決をして育ててい
ます。犬を真っ黒な色に替えたので、近所の人は「古田さん、犬を替えたね」などと
、直ぐにわかってもらえてこれは便利でした。そんな日常の一端をお知らせいたしま
した。
 またよろしくお願いをいたします。
“連載/本ほどステキなものはない!第5回”
    『僕の心が求めていた最高に素晴らしいこと』      長野市 池田 

今回は初めて小説を紹介します。
 私のような年齢になっても、時には十代の純粋な愛の物語を読みたくなり、タイト
ルにひかれて読み始めたものです。なお、これまで紹介した本も、これから紹介する
本も、サピエ図書館に登録されているものです。
『僕の心がずっと求めていた最高に素晴らしいこと』
ジェニファー・ニーヴン著 石崎比呂美訳 辰巳出版
 この物語は、高校の屋上に立って下を見降ろしているフィンチ、そこに近付いてき
たヴァイオレットのからみから始まります。
 恋人同士でもないふたりが、この事件から徐々にお互いを意識するようになり、物
語は展開されます。
姉が運転し、ヴァイオレットが同乗していた自動車事故により、姉が亡くなってしま
ってから、ヴァイオレットは、自動車に乗ることもできず、いつも考えているのは姉
のこと、姉と遭遇した事故のことです。
 フィンチは、身長も高く、スポーツもできる少年ですが、切れてしまうと前後不覚
になり、同級生を殴ってしまったりするため、高校から休学を命じられるいわゆる問
題児です。そんなフィンチは、高校の屋上での「出会い」からヴァイオレットを愛し
てしまい、あの手この手でアプローチします。それでも、ヴァイオレットの気持ちは
なかなか開かれません。その象徴は、姉がかけていた眼鏡です。近視でもないヴァイ
オレットが、サイズも合わない姉の眼鏡をかけ続けています。
 そんなふたりが接近するきっかけとなったのは、地理の授業です。地域のことを再
発見しようというテーマで、ふたりが一組になり2ケ所のレポートをすることになり
ます。フィンチは、強引にヴァイオレットと組むことにしてしまい、自動車に乗るこ
とをいやがっていたヴァイオレットをあちこちに連れて行くようになります。
 やがて、SNSでも頻繁に交信するようになります。そして、ヴァイオレットとフィ
ンチは、高原にある美しい湖で初めて結ばれます。ところが、それからのフィンチは
、高校の中で、同級生を半殺しにするような暴力事件を起こし、退学になります。ヴ
ァイオレットに対しても、謎かけのようなメールを送るようになり、やがて失踪して
しまいます。
 突然姿を消してしまったフィンチを追って、ヴァイオレットの謎解きの旅が始まり
ます。そして、行き着いたのはあの湖です。そこの湖底にフィンチは沈んでいました
。短い言葉を残して・・・。
“博物館を訪ねて”
      『ふれる博物館」に行ってきました!』       長野市 加藤久

2018年4月、東京都新宿区高田馬場にある日本点字図書館分館に、「ふれる博物館」
がオープンしました。JR山手線高田馬場駅から歩いて10分ほどの明治通り沿いにあり
ます。視覚障害者が触察できるようにアレンジされた絵画や建築、また近現代の視覚
障害者用生活用具などを触って楽しめる博物館です。視覚障害者だけでなく、健常者
も触って楽しむことができます。
こちらの博物館には、レオナルド・ダ・ヴィンチの壁画「最後の晩餐」のレリーフ
が常設展示されています。この作品は、イタリアのアンテロス美術館で製作されたも
ので、石膏で作られています。世界に3つしかない作品のうちの1つを展示しているそ
うです(所蔵:大内 進・手と目でみる教材ライブラリー)。
また、現在「宇宙をさわる」というテーマで企画展を開催しているということで、と
ても興味を持ち、行ってみることにしました。
ビルの2階にある博物館は、それほど広いスペースではありませんでした。エレベ
ーターを降りて入り口を入ったところでウェットティッシュをもらって、まずは手を
きれいに拭き、博物館の方の案内で鑑賞が始まりました。
最初は「宇宙をさわる」のコーナーです。このコーナーには、いろいろなロケット
の模型が展示してありました。アメリカのアポロやスペースシャトル・中国のロケッ
ト(名前を忘れてしまいました)の他、2003年5月に打ち上げられ、小惑星イトカワ
の観測をした後、2010年6月に地球に帰還した小惑星探査機のはやぶさや、2014年12
月に打ち上げられ、今年6月に小惑星リュウグウに到着し現在観測を続けているはや
ぶさ2もありました。それぞれの模型を分解したり組み立てたりしながら、構造を説
明していただきました。宇宙飛行士が乗り込むスペースの小ささにびっくりしたり、
はやぶさが惑星の砂などを回収するシステムに感心したり・・・!どれも地球に戻っ
てくるときにはほとんどが燃え尽きてしまって、ほんの一部分しかのこらないという
ことも知りました。
これまで、テレビから流れるロケット打ち上げのニュースを聴きながらいろいろ想像
してきましたが、実際に触ってみたものとはまったく違いました。
「宇宙をさわる」のコーナーには、その他太陽と太陽系の惑星との距離や大きさが
体感できる展示や、触ってわかる銀河系の図・土星や火星の模型もありました。3Dプ
リンタで作られたという火星の模型は、山があったり平野があったり・・・、おまけ
にそれらには名前もついていて、まるで地球儀の火星版のようで印象的でした。
最後に、「最後の晩餐」を鑑賞しました。「最後の晩餐」という絵がレオナルド・
ダ・ヴィンチの有名な作品であることは、もちろん私も知っていましたが、晩餐の風
景を描いたものであろうことは想像できても、それ以上想像を膨らませることはでき
ませんでした。その有名な絵のレリーフに実際に触れながら、1人1人の仕草や表情な
ど、細部まで説明を受けました。そして、「最後の晩餐」という1枚の絵に表現され
ているものを、初めて肌で感じることができました。
見えている人にとっては当たり前のものも、私達全盲の視覚障害者は想像すること
しかできません。それどころか、ものによっては、想像するだけの情報もなくて、想
像すらできないことも多々あります。そんな私達も、こうして模型やレリーフに触れ
ることで、知らなかった世界を知ることができます。もちろん本物に触れられたらそ
れが一番いいとは思いますが、それが不可能であっても、模型やレプリカに触れるこ
とで得られる情報がたくさんありますし、これまで知らなかった世界を知ったときの
感動はとても大きいとおもいます。今回訪れた「ふれる博物館」は小さな博物館でし
たが、とても興味深い展示ばかりで、大きな感動を得ることができました。このよう
な博物館や美術館が1つでも多くできることを心から願っています。
 ★「池田輝子記念・触れる博物館」詳細情報
開館日:毎週水・金・土曜日(年末年始・祝日休館 臨時休館有)
開館時間:10時~16時(入館は15時半まで)東京都新宿区高田馬場2丁目3-14
 アイ・ブライト2階(トヨタレンタカー隣 1階は美容室 路上に誘導ブロック有

電話:090-3247-7290(開館日のみ)  03-3209-0241本館代表
アクセス:JR山手線・西武新宿線・東京メトロ東西線 高田馬場駅下車徒歩10分
東京メトロ副都心線 西早稲田駅2番出口から徒歩7分
※企画展「宇宙をさわる」は、2018年12月22日(土)までです。
※駐車場はありません。
※5名以上で訪れる場合には、事前に連絡をしてください。
◆追加情報 「ふれる博物館」HPより
ご好評のうちに12月22日で会期満了を迎える企画展「宇宙をさわる」が、平成31
年1月川崎市視覚障害者情報文化センターを会場として、3日間の限定開催を実施す
る運びとなりました。「ふれる美術館」での展示内容はもちろん、川崎会場限定とな
るレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の立体的なレリーフも登場します。
 また、最終日の12日(土曜日)には、国立天文台の特任専門員で、すばる望遠鏡
のあるハワイ観測所で研究を行っていた、臼田-佐藤功美子氏の講演会も行います。
百聞は一触にしかず。触ってみることで、より多くの情報を得ることができます。宇
宙の神秘と人類の挑戦に思いをめぐらす有意義な一日になると思います。皆さま、是
非この機会をお見逃しなく。
会期:平成31年1月10日~12日(土) 川崎市視覚障害者情報文化センター 電話:044
-222-1611
“事務局から”                      事務局担当 加藤久
美◆盲導犬ユーザーと引退犬ボランティアの皆様へ
◎疾病治療費支援の申請をされる方は、2019(平成31)年1月20日までに申請書類(
疾病治療費補助申請書とレシート貼付用紙)をご提出ください。
申請対象期間は、2018(平成30)年1月1日から12月31日までです。疾病治療以外のフ
ィラリア予防薬・ワクチン・爪切り・シャンプーなどの費用は、申請の対象となりま
せん。申請書類の送り先は以下のとおりです。
〒390-0802 長野県松本市旭2-11-45「ふれっ手」内
長野県ハーネスの会 担当 前野 弘美
申請書類が必要な方は、事務局までご連絡ください。
◎盲導犬・引退犬について、引退・代替え・死亡など、状況に変化がありましたら、
速やかに事務局までご連絡いただきますようお願い申し上げます。
事務局担当 加藤 久美 E-mail:jimu@harness-nagano.com
“編集後記”
寒い、寒い。寒さに震える片山です。先日までのあの暖かさは何だったんだろうと、
ひどく裏切られた気分です。
ところで、皆さんは健康診断は定期的にされてますか?私はしばらくしてなかったの
ですが、去年からまた受けるようになりました。そして、胃カメラも去年初めてやっ
てみました。特にイヤなことはなかったのですが、「この年齢にしては胃が非常にキ
レイ」と2年続けてほめられ?ました。(ふ~む、それってストレスも物ともせず、
胃がめちゃくちゃ丈夫ってこと?)でしょうか。本人は胸やけもよくするし、胃はあ
まり丈夫ではないなあなどと思っているので、とっても意外なことです。しかし!そ
れよりショックなことが今年はありました。コレステロールの許容範囲の上限220よ
りちょっと高い232だったんです。それだけのことで、去年は「A」だったのに今年
は「C」になってしまいました。もっとも、医者さんの話では「ちょっと運動すれば
すぐ下がるくらいの数値だから気にしなくていい」でしたが。
こんな話もあります。日本人間ドック学会が今年8月、昨年に人間ドックを受診した
全国の約313万人について、「異常なし」とされた人の割合が過去最低の7.8%だった
と発表した。メタボ関連の項目一つで「正常者が50%」になり、複数の項目を調べる
ことで、健康な人の9割以上が何らかの異常と指摘される状況になっている。これに
は同学会さえも「生活習慣病に関する項目の判定基準が厳しくなっている」と頭を抱
えたほどだ。
しかも!今年10月、デンマークで公表されたところによると、一般健康診断は(病
気の)罹患率と死亡率のいずれの低下にもつながっていない。それは心血管疾患やが
んによるものをはじめすべての病気についても同様だった。一般健康診断が有益であ
る可能性は低いとのこと。近藤誠さんは、ずばり!「やってはいけない健康診断」と
言い切る。
う~ん、悩ましいところです。とりあえず、皆さん、来年もよろしく!(片山幸子)

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