《「ハーネスながの」第3号をお届けします。今回はリタイヤ犬特集です。まずは会からのお知らせをどうぞ。》
【お知らせ】
1 定期総会の開催について
平成11年度定期総会を下記のように開催しますのでご出席下さい。
日時 5月30日(日) 午後1時30分~
場所 長野県視覚障害者福祉センター(松本市旭2-11-39)
議題
長野県ハーネスの会規約の制定に関する件
平成11年度活動計画および予算案に関する件
2 運営委員立候補の受け付けについて
会の運営に関わっていただく運営委員の立候補を受け付けますので、ご応募下さい。
(任期) 平成11年6月から2年間
(締切) 5月10日(月)事務局まで
【盲導犬とともに】
■特集・リタイヤ犬■
犬は、10歳前後になると白内障をはじめとする老化に伴う病気にかかったり、体力の低下や判断力の低下が目立ったりするようになります。視覚障害者の目となり、命を預かっている盲導犬がこのような状態になると、使用者は危険にさらされることになり、また行動範囲が狭められたりすることにもなります。この年齢に達した盲導犬の使用者は、パートナーの「リタイヤ(引退)」という問題に直面することになります。長年ともに暮らしたパートナーとの別れはつらく、どうしても手離すことができずに自宅で最後まで看取る使用者もいます。しかし使用者がこれまで通り自由に歩くためには、どうしても新たな盲導犬を取得することが必要となり、リタイヤを決断せざるをえない状況になります。そしてリタイヤした盲導犬達は使用者の元を離れ、主に一般家庭に引き取られてペットとしての余生を送っています。《今回は、そんなリタイヤ犬達がどんな生活をしているのか、リタイヤ犬を引き取られた方々に原稿をお寄せ頂きました。 初めに、昨年12月に亡くなったウーリッチについてです。》
ウーリッチの生涯
ウーリッチは、1984年7月に、和歌山県の白浜温泉に近い日本ライトハウス行動訓練所で生まれました。黒いラブラドルリトリーバ種の雄で、性格的にはおとなしく、やや内気なところもありました。87年4月から松本市の滝沢英樹さんのパートナーとして盲導犬デビューをしました。その時から、文字通り雨の日も風の日も滝沢さんと共に歩き続けました。昨年2月に12年近い盲導犬生活から引退しました。その後は塩尻市の三村 博音さんのご家庭に迎えられ、温かいご家族に囲まれて余生を送ることになりました。
しかし、同年12月に持病が進行し三村家のご家族に見守られて息を引き取りました。14才5カ月の生涯でした。
ウーリッチ逝く
三村ウーリッチこと、12月12日午後6時12分、悪性腫瘍のため死亡いたしました。人のために善をなし尽くし、立派な生涯であったと思っております。2月下旬から家庭犬として第2の犬生を始めましたが、病との闘いが始まり伊藤動物病院・家と半分半分の生活でした。臨終を迎え、静かに自然の懐にウーリッチを帰してやることが最良と考えまして、庭の片隅に葬りました。滝沢さんの希望により分骨をしてお届けしました。ぽっかりと大いなる穴あきし如、私どもは哀しみを深くしております。皆様のお心の中にいつまでも生き続けるウーリッチであることを信じております。生前のご交誼に感謝し、お知らせと致します。
(三村博音さんから本会に寄せられたウーリッチの訃報より引用)
ウーリッチの旅
田中 綾
ウーリッチ
いろんな場所に行って
旅をしたね。
会議のとき、
飼い主の膝下で
グーグーとどこからか聞こえてくるいびき。
疲れているのに
何も言わない
ウーリッチ ・・・
痛いからだにムチ打って
動いていたね。
多くの人の目になって
歩き続けて ・・・
いろんなものが見えていたよね。
また、天国で
逢えたら
いいな・・・
ウーリッチのこと
永遠に忘れないからね。
長い間
ご苦労様でした。
そして、ありがとう・・・
《続いて長野市にお住まいの清水さんが日本盲導犬協会から引き取られたリタイヤ犬クッキーについてです。》
リタイヤ犬クッキー
長野市 清水とき子
平成10年9月21日未明、リタイヤ犬クッキーは天国へ旅立ちました。10才でリタイヤして我が家の一員になり丁度7年間でした。
7年前、クッキーは横浜の盲導犬協会からはるばる車で信州の我が家にやって来ました。車から降りると同時に私の足元に一目散に飛んで来ました。一瞬びっくりしましたが、思わずしっかりと抱きしめ、頭をなでていました。そして、これからはこの犬に幸福で充実した余生を送らせてやろうと誓ったのでした。
我が家には、ももちゃん(ラブラドール)、ラヴちゃん(ゴールデンレトリバー)の2匹の犬が居ります。この2匹とも仲良しになり、毎日3匹でリンゴ畠の中だとか田の畦道を散歩するのが日課になりました。ももちゃんがおしっこするとラヴもクッキーも其処でします。本当に楽しそうでした。
4年程こんな生活が続きましたが、クッキーの老いは深刻に進んでいきました。2匹の犬とは一緒に散歩も出来なくなり、階段の上り下りも大変になりました。ベランダから庭に降りる階段もスロープにしたり、足に負担をかけぬ様気をつけました。家の中でもほとんど寝て居る生活になりました。でも食欲は旺盛で何でも食べてくれました。眼も白内障でほとんど見えないと思いますが、私が仕事から帰って来ると玄関迄必ず迎えに来るのです。来なくて良いと云っても駄目でした。死ぬ1ヶ月位前迄は続いていました。
ユーザーの野口さんも一年に一回は横浜からクッキーに逢いに来て下さいました。今思えば、リタイヤして我が家へ来た時口臭がひどかったのでお医者さんに診ていただきましたら、歯の手入れが悪く黄色くなっているから歯磨きをしてやって下さいと云われまして、それはずっと実行していたのですが、その頃からガンはあったのかしら?と、一年に一回の健康診断もしていたのに‥‥と、早くわかればまだ生きていたかも‥‥とか悔やまれてなりません。最後の1ヶ月はふとんの上に尿パットをしいて寝返りをしてやって床ずれの出来ない様、24時間息子と交替で看取りました。息を引き取る時も、息子の腕の中で大きく2回息をしてやすらかに静かに死んで行きました。
クッキーもきっと私たちと生活したことを満足に思ってくれたことと思います。今後もこのリタイヤ犬ボランティアの仕事は続けて行くつもりで居ります。
《最後に、1989年にアイメイト協会を卒業し、会員の加藤久美さんの元で盲導犬として8年間働いた後、長野市の竹原動物診療所に引き取られたキュートについてです。竹原動物診療所のスタッフの方から原稿をお寄せ頂きました。》
キュートが竹原動物診療所に来て、1年5ヶ月が経ちました。来た頃、キュートの体重は27Kgだったのですが、3ヶ月間で35Kgにまでなってしまいました。その原因は、間食・運動量の減少です。現役を引退したキュートは、まさに心身共にリラックスしていました。(今は処方食により減量中で、体重も30Kgにまでおちました。)
そんなおデブなキュートでも、今は月4回、アニマルセラピーの主役として大活躍しています。人の気持ちをよく理解できるので、誰にでも優しく接します。もちろんキュートは吠えたり相手に危害を与えたりすることは絶対にありません。無理にリードをひっぱることもありませんし、常にリードを持っている人間の動きに合わせて行動しますので、力の弱い方でも安心してお散歩することができます。当病院内でも、いつも自由にしていますが、来院される犬・猫・飼い主さんとのトラブルは全くなく、逆に待ち時間の間には飼い主さんとスキンシップをとって仲良くしています。犬を飼っている方には、よく、「おりこうなワンちゃんだね」とほめられ、犬をしつける上での良き見本となっています。
そんなキュートでも苦手なものが一つあります。それは゛元気な仔犬゛です。彼らの騒々しさに圧倒されてしまうのでしょうか? とにかくキュートは、仔犬、子猫が近づいて来ると、逃げてしまいます。また、キュートは甘えん坊なので、私達が他の犬の名前を呼ぶだけで、やきもちをやいて自分をアピールして来ます。キュートは、本当に人間が大好きなのです。元パートナーの加藤さんとも時々会うことができ、洋服のプレゼントをいただいたりしています。以前加藤さんが病院に見え昔のハーネスを着けてもらったとき、とても懐かしく嬉しそうで、はずすのを嫌がりました。それだけキュートは仕事に誇りを持っていたのですね。
今年の8月でキュートも、12歳になります。いつまでも元気でいてくれることを願って、理想体重に近づけるよう、頑張っていきたいと思います。
(スタッフ一同)
【ドクタールーム】
《今回は、長野市の竹原動物診療所院長竹原和孝先生に、心不全について書いて頂きました。》
あなたのワンちゃん大丈夫ですか?
竹原動物診療所 院長竹原和孝
最近は、獣医療の進歩や飼育環境の改善によって、犬や猫の寿命が長くなってきました。このことは、人で云えば成人病に当たる病気を増やす結果にもなっています。その中でも恐ろしいのが「心不全・腎不全」と呼ばれる病気ですが、今回は心不全についてお知らせします。
心不全は全犬種共通の病気ですが、特にマルチーズ、シーズー、キャバリアといった小型や、シバ、シバの雑種など中型犬に多く発病します。生後5年(人の約38歳)を過ぎると犬猫は中・老年期に入ることになり、その頃から発症し、次第に進行して、やがては死に至ります。また、心不全は予防することも完治させることもできません。しかし、巣