ハーネスながの 2000年8月 第8号
発行:長野県ハーネスの会 会長 原 哲夫
〒390-0304 松本市大村492-3
《ニュース全国版》
『国内の実働盲導犬は850頭、県内には27頭』
日本盲人社会福祉施設協議会のリハビリテーション部会盲導犬委員会のまとめでは、本年3月末現在で全国で現役犬として実働している盲導犬は850頭(前年度比3頭減)だそうです。またこの中には、1頭の盲導犬を夫婦または親子で共有して使用するタンデムも14頭いるとのことです。
地域別に見ますと、盲導犬が多いのは東京の67頭、次いで北海道の66頭、大阪の48頭です。逆に少ないのは青森、鳥取の各3頭や島根の4頭となっているようです。そして長野県は27頭で前年度より7頭減っています。
一方、昨年4月から今年3月までに国内の8盲導犬協会で育成され、デビューした盲導犬は123頭(前年度比6頭減)で40都道府県のユーザーに貸与されました。その内、66頭が初めて盲導犬を持つ新規ユーザーに、58頭が代替犬として継続ユーザーに貸与されています。
ところで県内には最多時には40頭近い盲導犬が活躍していて、県民人口比から見ますと長年に渡り全国で断然トップの地位を占めていました。実働数が20頭台という数字は大きな落ち込みです。本会としましても、その背景を分析したいと考えています。
尚、近隣都県の今年3月末での実働盲導犬頭数は次の通りです。( )内は対前年比の増減数を示します。
茨城10(1増)、栃木18(2増)、群馬8(2減)、埼玉44、千葉20(3減)、東京67(7減)、神奈川38(3増)、新潟16(2減)、富山13、石川25、福井5(1増)、山梨14、静岡28(3減)、愛知37(1増)、岐阜7(1減)。
※この記事は点字毎日6月18日号より一部引用しました。
《コメンタリー 2》
『視覚障害者にとっての盲導犬』
日本ライトハウス行動訓練所長 中村透
視覚に障害を受けるということは、精神的に大きなダメージを受けると同時に、日常生活上で様々な不自由さをもたらします。その不自由さの一つに、「歩く」というのがあります。健常者にとってごく当たり前の、散歩する、買い物に行く、旅行するといった「行動の自由」が失われます。「行動の自由」がなくなることで、社会に働きかける積極さが失われ、自宅に閉じこもりがちな生活を送られる視覚障害者の方はいまだにたくさんおられます。盲導犬の取得は、視覚障害者にとって「行動の自由」をもたらすために非常に重要な手段の一つです。 日本で「盲導犬」の訓練が始まってから、半世紀近くになります。この間多くの方から支援を受け、千数百頭の盲導犬が世に送り出され、現在は約850頭の盲導犬が活躍中です。日本ライトハウスでも昭和47年に盲導犬育成事業を開始し、以来約330頭の盲導犬を育成、130頭前後の盲導犬が稼働中です。当初は、公共交通機関はもちろん、ホテルやレストランを利用できることは稀でしたが、今日では一部に無理解な行動や言動が見られるものの、入店拒否や利用拒否をしにくいほどまでに盲導犬及びその使用者に対する理解は進んできており、関係者一同非常に喜んでいるところです。
社会的な受け入れの状態が進むにつれ、色々な場所で盲導犬を目にする機会も増えつつあります。視覚障害者の中には「盲導犬は特別な人が持つ」というイメージもありましたが、時代の変化とともに一般化されてきたようにも思われます。
しかし、全国に30万人以上いる視覚障害者に対し、未だに850頭前後の頭数です。最近の日本財団の大がかりな調査によりますと、盲導犬の潜在的な希望者は、8,000名弱になっています。全国の8施設が昨年育成した頭数は125頭(ライトハウスは31頭)、未だにニーズを満たせるような状況にはなっていません。
日本ライトハウスでは一人でも多くの視覚障害者に盲導犬を手渡すために、日々努力を重ねているところですが、財政的に現在年間30頭前後の盲導犬を育成することがやっとの状態です。盲導犬が自分の所に来る日を待ち望んでいる視覚障害者のために一層のご理解とご協力をいただければ幸いです。
《パートナーと私》
『いつも 一緒に』
岡谷市 北澤 とも江
私のパートナーとなったゼーダー(雄 3歳)を紹介します。
昨年3月に横浜の日本盲導犬協会神奈川訓練センターを卒業して、4月からは松本盲学校へ入学した私の通学を助けてくれている頼もしい盲導犬です。1年たった今では、ハーネスやリードを通じてゼーダーの気持ちが分かるようになってきました。もともとは大の犬嫌いだった私が、ゼーダーなしの生活など考えられなくなってきました。ごくたまに、「犬は、外につないで。」とか、「車の中においてきて下さい。」と言われるような場面がありますが、たとえ犬のために自分の行動範囲が狭くなったとしても、私はゼーダーといることを選ぶでしょう。もちろん、あらゆる場に盲導犬同伴が当たり前になってほしいのですが‥‥。
ゼーダーの生活はというと、毎朝6時から夕方6時前後までを私につき合ってくれています。電車やバスを乗り継ぎながら通っている盲学校にもすっかり慣れ、少し長い休みがあると元気がなくなります。ゼーダーの顔は、「ムーミン」のお話の中に出てくるヘムレンさんにそっくりだそうです。また女子高生達からは、タレントの「ケント・デリカット」にそっくりだと言われています。そして、私からは「とんぼに似ている」と言われています。3種類を合わせて想像してみて下さい。
授業中のゼーダーは机の横でたいがいは寝ていますが、高らかないびきの音を遠慮なくたてて、周りの笑いを誘っています。このスタイルは朝礼の折の校長講話の場面でも崩れませんので、最前列で聞いている私はかなりあせっております。
ゼーダーの学校での最大の楽しみは、給食です。もっとも彼には給食など出るわけはないのですが、どこかのテーブルから何かおこぼれが落ちてこないかと辛抱強く狙っています。時々チャンスはあるのですが、たいがい私に見つかってしまいますから、ガックリと肩を落としています。そんな光景を見ていたクラスメートが、こんな川柳を作ってくれました。盲導犬には食べ物を与えてはいけないと分かってはいても、それでもゼーダーに味方したい彼女の優しさが嬉しい一句です。
「そら今だ、パクッといけよ ワンチャンス」
《定期総会》
『平成12年度のハーネスの会事業概要』
今年の定期総会は、5月28日(日)に松本市元町のふくふくライズで開かれました。そして、2000(平成12)年度の事業計画および一般会計とハーネス基金の予算を原案通りご承認いただきました。既に会員の皆様には総会議案書をお送りしてありますので、ここでは事業計画についてのみ簡単に触れさせていただきます。
調査活動『医療機関での盲導犬受け入れの実態について』のアンケート調査
松本市内の公立と民間の医療機関(医院や病院)を対象として、受診または見舞いの際『盲導犬を どこまで 入れさせてもらえるか』について実態を調べるものです。
第2回盲導犬交流ハイキング
9月17日(日)に、松本空港を中心とする信州スカイパークで行います。会員以外の方にも呼びかける予定です。詳しくは本紙《催しもの》欄をご覧下さい。
盲導犬を囲む交流会と体験歩行
11月11日(土)に飯田市で行います。飯田下伊那地方にはこれまで盲導犬が1頭もいませんでした。視覚障害者の中には関心のある人もいるようですし、広く一般市民のみなさんにも盲導犬とハーネスの会の活動を知っていただくことを目的として行うものです。
当日はユーザーの体験講演会と参加者による盲導犬の体験歩行を予定しています。
コート類製作と製作者ネットづくり
盲導犬用のレインコート、トレンチコート、トイレ用ベルト、更に盲導犬をあしらったアクセサリーなどのグッズを製作します。また今年は空き缶などをリサイクルして募金箱の製作も考えています。
ハーネス基金による医療費助成
フィラリア予防費助成として盲導犬および引退犬1頭当たり年間7000円を助成。1カ月8万円を越える高額医療費支払いに対して2万円の見舞金を支援。
会報『ハーネスながの』の発行
会活動を紹介し盲導犬をめぐる県内と国内の動きを提供するとともに会員間の親睦を図る。
年間4回発行。
《さよなら、そしてありがとう》
『訃報』
モナミ(雌13才、小海町 赤堀たつじさん使用)は3月7日に老衰のため死亡しました。モナミは1989年に東京アイメイト協会から赤堀さんのパートナーとして小海町に来ました。以後11年間、文字どおり主人の目となり友となって働いてきました。しかし、昨年11月23日に急に立ち上がれなくなり食餌も受け付けない状態に陥りました。暫くの間は小康状態が続き、今年1月頃には一時立ち上がることもできるまでに快復したそうです。2月に入ると再びベッドから起き上がることもなくなり、3月には深刻な状態となりました。赤堀さんもいよいよモナミの最期を覚悟し、付き添って眠る夜が続きました。そして3月7日深夜、大きな息を最後に、赤堀さんに見取られて天国に旅立ちました。モナミは11月に倒れる前日まで、主人を案内していつも通り働いていたそうです。
モナミ、ありがとう。本当にご苦労様でした。
『引退』
シンシア(雌12才、下諏訪町 西山英敏さん使用)は4月20日に現役を引退し、生まれ育てられた東京アイメイト協会に引き取られました。そこで約1カ月飼育された後、東京近郊の一般家庭でぺットとして余生を送っているそうです。西山さんの話では、1カ月前あたりから仕事中の集中力がなくなっていることに気づいたり、歩行中の排便のミスが何回か重なっていたとのことです。元気なうちに引退させてやりたいとの西山さんの願いもあり、協会に相談したところ、年齢も考慮して引退が急遽決まりました。シンシアは西山さんと約10年間歩き、地元の学校や公民館に招かれて啓蒙のための講演会の脇役を何回も務めました。西山さんにとっては数年前にシンシアと1人1頭で行った九州旅行が最大の思い出だそうです。
ユール(雌14才、上山田町 小田道子さん使用)は5月21日に現役を引退し、清水栄さん(長野市、本会会員)に引き取られて穏やかな余生を送っています。ユールは大阪の日本ライトハウス行動訓練所の出身で、1988年から12年余に渡り小田さんのパートナーとして生活を共にしてきました。高齢にもかかわらず引退する直前まで電車やバスの乗り降りもしっかりとした足どりで小田さんをガイドしていたそうですが、かかりつけの獣医さんが病院を閉じられたのを機会に、引退を決めたそうです。その後のお世話をしている清水さんの話では、引退前から病んでいたストレス性の皮膚炎も快癒して、仲間の4頭のワンちゃんたちとも折り合いよくゆったりとした毎日を送っているとのことです。
《催しもの》
『信州スカイパークを歩きましょう』
「第2回 盲導犬と歩く会」 を次のように計画しました。
9月17日(日) 10:30~14:00 (小雨決行)
松本空港バス停に集合。
盲導犬とユーザーを中心に小グループでスカイパークを散策します。
松本空港行のバスがあります。直行便は松本バスターミナル10:00発、空港着10:25。
路線バス(朝日線)ターミナル発 9:45、空港着10:12。
(空港発 14:03、14:10、14:43) 駐車場もたくさんあります。事前にグループ編成をしますので、参加希望の方は9/10(日)までにお申し込み下さい。
申込・問い合わせ先 丸山訓代(0263ー46ー5378)斎藤美枝(0263ー86ー6476)
《事務局より》
『高額医療費助成金の請求について』
会員の使用している盲導犬、または飼育している引退犬の医療費として、1カ月に8万円を越える支払いをした場合に事務局に請求して下さい。
その際、獣医さんまたは動物病院の発行した領収書のコピーか支払い証明書をお送り下さい。
請求後1カ月以内に、お届けの講座に見舞金として2万円を送金します。
請求後1カ月以内に、お届けの講座に見舞金として2万円を送金します。
『フィラリア予防助成金の送金について』
会員の使用する盲導犬、または飼育する引退犬に対して、フィラリア予防費の一部として7000円を助成します。
8月30日までにお届けの金融機関口座に送金します。
【編集後記】
最近デジタルカメラが急速に普及し、少しパソコンに詳しい人なら簡単に画像を印刷物に取り込むことができるようになっているようです。本号を編集しながら、私にもそんな知識と技術があれば、もっとこの紙面を楽しんでいただけるのにと歯がゆい思いをしています。まだまだ厳しい残暑が続くと思いますので、皆様どうぞご自愛ください。
(編集長)