『ハーネスながの』第59号 (2020年6月)
発行:長野県ハーネスの会 会長 池田純 編集 前野弘美 片山幸子
〒381-0043 長野市吉田3-16-13 (株)Jハート内 Tel. 026-214-0802
振込み:ゆうちょ銀行 00570-7-17991 「長野県ハーネスの会」
ーーーー ーーーー 本号の内容 ーーー ーーー
《会長あいさつ》 『会員の皆さまへ 総会延期のお知らせ』 会長 池田 純
《文芸/短歌》 『天使と歩む四季の歌』? 広沢里枝子
犬連れ旅? 『秋葉道に沿ってランダムウォーク その1』 てくてく
《寄稿》 『ユリスとともに生きる』 成澤正行
《コメンタリー》 『盲導犬 拒否 アンケートについて』 池田 純
《寄稿》 『大きな信号には気を付けて』 松尾寿美子
《寄稿》 『新型コロナウイルス感染症が気づかせてくれたこと』 北澤とも江
《寄稿》 『これからのこと』 丸山くによ
《感謝録》 『平成31(令和元)年度 ご寄付・募金にご協力いただいた皆さま』
《会員メッセージ》 『振込通知書から 』
《ハーネス基金報告》 『2019(平成31年・令和元年 支援状況』
《事務局から》 『会費納入のお願い』
ーー 目次おわり ーー
《会長あいさつ》 『会員の皆さまへ 総会延期のお知らせ』
会長 池田 純
長野県ハーネスの会の活動につきまして、ご理解とご協力に心より感謝申し上げます。
今年度の総会は、5月10日に松本で開く予定でしたが、新型コロナウィルスの緊急事態宣言が発令中(原稿執筆時)でもあり、7月6日(月)に延期することにしました。
しかし、それまでに新型コロナウィルスの感染が収束しているか全く見通しが立てられませんので、オンラインでの会議について検討しています。
オンラインで会議を開くためのアプリはいくつか公開されていますが、スマートフォンとパソコンで使えるものが主流であり、ガラケーでも参加できるアプリを優先して考えていますが、ガラケーで参加すると通話料がかなりかかるという問題があります。
新型コロナウィルスが収束した後にも、視覚障害者が集まらずに会議を開くことができるようになると、天候に関係なく会議を開くことができるようになりますので、この機会に多くの会員が参加できそうなアプリを見極めたいと考えています。
この原稿を書いている最中にも、松本週辺では群発地震が発生しています。間もなく梅雨の時期になると大雨も予想され、それから台風シーズンへと突入していきます。
私たちが生き抜くことが困難な環境になりつつありますが、しぶとく生き抜いていきましょう。
《文芸/短歌》 『天使と歩む四季の歌』 ?
東御市 広沢里枝子
小諸商業高校 講演会
○ ジャスミンと前へ1歩を踏み出せば「わあ可愛い」と歓声あがる
○ 盲導犬の入場拒否を無くすための協力われは生徒らに乞う
○ 昨日のホーム転落事故死をば語れば5百人の息飲む気配
○ 「盲人が困っていたら声かけて」と頼めば「はい」と5百人言う
○ 生徒らに演じてもらうホームからの転落防ぐ声のかけ方
○ 質問はないかと問えば生徒らは次々声上げわれに問いくる
○ ジャスミンは「可愛い」と言う声もらい拍手に送られ会場を出る
《旅は犬連れ世は出合い?》 『秋葉道に沿ってランダムウォーク その1』
飯田市 てくてく歩き人
◆ 前書き
秋葉道に沿って国道152号線を歩いています。「秋葉街道」とも言われますが静岡県では「塩の道」という呼び方の方が親しまれているようです。
秋葉道は信州諏訪地方から茅野市の杖突峠を越えて南信州の東端部分を辿り青崩峠から遠州に入り、浜松市の秋葉山の秋葉神社上社に続く古道です。
秋葉道は中央構造線の断層地帯の中を南北に通る山岳古道でもあります。赤石山脈(南アルプス)とその西の伊那山地の谷間や山地は、日本最大最長の断層帯である中央構造線の一部に当たります。
≪秋葉街道・地図≫
秋葉道は必ずしも私の住んでいる地域を通っているわけではありません。そんな点からも果たして秋葉道のどの辺りから歩こうか?そして最終ゴールをどこにしようか?これらについてはかなりいい加減というのか躊躇がありました。やはり秋葉道というくらいですから最終ゴールは遠州秋葉神社ということになりました。
今回も私と相棒のガイダ。そして同行援護者のK氏。二人+ワンの歩き旅です。因みに両者とも歩き始めた当時の年齢は69才と65才。どちらも好き者同志の親爺コンビです。
秋葉道の歩き旅では、地元から連続的にゴールを目指して歩き継ぐという歩き方はしていません。どの辺りを歩くかは思いつき、無作為です。お互いに忘れたころ、「そろそろまた歩かまいか」と言った具合です。
「どちらから歩いてもどんな順序でも、とにかく全部歩けばいいじゃん!という感じの気分とノリで“ランダム”に歩いています。
そんなわけで今回から何回かその辺のことを書かせていただきます。
◆ 秋葉道について
秋葉道について私の既有の知識ではとても説明できませんのでインターネットのウェブサイトに掲載されている情報のお助けをいただきそれらしくお伝えします。
○ 信仰と塩の道
秋葉神社は火防(ひぶせ)の神として全国のその種の祭神を祭る神社の総社だそうです。火事が多かった江戸時代には江戸を中心に全国各地に秋葉講ができて参拝者が急増したそうです。県内各地の鎮守の森の片隅にも「秋葉大権現」と彫られた石碑を見つけることができます。伊那谷では特に多いと言われていますが、これらこそ秋葉信仰が存在した証しです。
神社の謂れによれば創建は奈良時代ということですからそこに通じる参詣の道である秋葉道も時代が進むにつれて少しずつ道らしくなっていったのでしょう。
一方、信州諏訪にはそれより前から諏訪大社がありました。ですから秋葉道は信州からは秋葉神社をめざす人々、遠州方面からは諏訪の神を崇める人たちが往来する信仰の道として発展したようです。
また、遠州の海浜地域でつくられた塩もこの道を辿って山深い信州に入り諏訪地方まで届けられました。
秋葉道は伊那谷地域にとっては飯田線が全線開通する前の昭和始めまで静岡県北遠地域との人々と物流の道として重要な役割をもっていました。
○ 戦国時代の裏舞台
元亀3年(1572)10月、武田信玄は数万の軍勢を率いて杖突峠を越えて伊那谷に入りました。そして秋葉道を南下して遠江の北遠から東三河に進み織田・徳川軍と戦い大勝します。この三方ヶ原の戦いの僅か半年後、信玄は病死します。求心力を失った武田軍は天正3年(1575)長篠の戦いに敗退したことを契機に歴史の表舞台から消えます。
果たして数万もの軍勢が実際にあの谷やいくつかの峠を越えたものかと今の感覚で考えると俄には信じられません。しかしそんなできごとによってその後の秋葉道は更に信州と遠州を結ぶ重要な物流ルートに発展したのだろうと思います。
◆ 秋葉道と国道152号線
秋葉道と国道152号線は広い意味でぴったりとそのルートが重なります。そのままの場所に国道が重なるところもありますが、地形的な理由でやや離れた場所を並走したり大きく迂回したり山越えを避けてトンネル化した場所もあります。
明治以降の秋葉道は村道や県道として整備され、戦後に二級国道152号線に格上げされました。そのころの152号線はあくまでも秋葉道とほぼ同じ経路と区間を踏襲する範囲でした。
平成になって国道152号線は、上田市の国道18号線大屋交差点から茅野市を経て浜松市の国道1号線北島交差点までとなりました。
国道152号線は酷道(こくどう・ひどい道の意味)152号線と揶揄されることがあります。インターネット上でそのようなドライブやツーリング体験記なども紹介されています。伊那市長谷と下伊那郡大鹿村の境の分杭峠から南の大鹿村と飯田市南信濃地区に至る山岳地帯は道幅も狭く急坂や急カーブも続きます。また冬期には通行止めの区間もあります。これでも国道かと思わせるような一面は確かにあります。
だからこそ152号線を歩けば今なお地形や起伏、野鳥や谷側の音響、山岳地域特有の空気の匂いなどは往時の秋葉道そのものを感じさせてくれるような気がします。
◆ いきなり秋葉山へ
秋葉道ランダムウォークは思いつき無作為に歩いているわけですが、先ず秋葉神社から始めることになってしまいました。というのも天竜川に沿って歩き繋いでいる途中で秋葉ダムや秋葉山地域の直ぐ近くを歩きました。そして、「いつかきっと」と思いつつ神聖な領域への立入をそれまで控えていたわけです。
天竜川に沿ってウォークが終わると前々から引っかかっていた「秋葉神社」が先ず浮かび上がってきて全体像を描く前に先ずゴールを目指すことになってしまいました。
こうなってしまうと実に本末転倒もいいとこ。「秋葉神社をめざして秋葉道を歩こうよ」ではなく、「秋葉神社へ行ったから秋葉道も歩こうよ」とこじつけ。ストーリーはどうでも作れることを自覚しました。
◆ ここが秋葉神社か
秋葉神社(正式には秋葉山本宮秋葉神社)は秋葉山にあります。頂上付近に上社(本宮)麓には下社があります。
秋葉山(866m)はちょうど南アルプスの最も南端に位置しています。遠州平野の北、浜松市天竜区にあり、そこからの眺望は遠州平野と浜松市街地、その先の遠州灘を見通し大変すばらしいそうです。
信州では3,000mを越える峰々が続いた南アルプスも南に向かうにつれて標高も少しずつ低くなります。例えとして、山脈が少しずつ低くなって山地と変わり天竜川に落ち込む寸前のやや平らな中腹部が秋葉山ということになると思います。
秋葉神社上社への参道は2ルートあります。山の北東斜面にある表参道は下社から標高差750mを歩いて上る参拝者のための山道で距離は約5?だそうです。杉木立や石灯籠が続く神聖な雰囲気を感じる古くからの由緒正しい参道ということです。
もう1つは秋葉山の西側の天竜川河畔の東雲名(ひがしうんな)地区を起点とする天竜スーパー林道を一気に登るルートです。裏参道とも言われ観光バスや自動車で来る観光客や参拝者が利用しています。東雲名から神社駐車場までは7.5?、標高差750m、勾配10%という静岡県内でも有数の急坂ルートです。
私たちはJR飯田線と遠鉄バスを乗り継いで西雲名で下車した後、天竜川を渡り、東雲名からスーパー林道の裏参道を歩くことにしました。
≪写真:秋葉道分杭峠付近≫
10月の晴天の平日、私たちはJRと遠鉄バスを乗り継いで午前10時に国道152号線の西雲名バス停で下車しました。天竜川を東に渡り早速標高866mの秋葉山頂の上社を目指してスーパー林道を歩き始めました。東雲名地域は秋葉山の西側斜面の直下のような場所の集落です。天竜川に近い僅かな平地には小さな集落はありますが、道路が坂道に変わる辺りからは人家はありません。アスファルト舗装された幅5〜6mの道の両側斜面は杉の人工林が多くきれいに整備されているとのことでした。この辺りは天竜杉の産地としても知られていますが、他に檜もよい材を産出しているようです。
歩き始めて20分ぐらい過ぎる辺りから道路勾配は急にきつくなりつづら折れのような急カーブが多くなります。参道入り口に当たる東雲名の集落からは道路端に山頂(上社駐車場)までの距離を表す標識が500mごとに立てられています。車はときどき木材搬送や工事用トラックが通るものの乗用車はほとんど見かけません。後方から上ってくるトラックはアクセルを思い切って踏み込んでいるのか遠くからエンジン音が聞こえます。また下ってくる場合はかなり急勾配の斜面をジグザグしながら近づいてくるのが分かります。
参道入り口から3?辺りまではかなりいいテンポで歩いていましたが急坂が続くようになり身体が少しずつ重く胸苦しさも感じるようになりました。勾配10%ということは100m進んで10m上昇するということ。7?も続くことは偉いこと。ジグザグのカーブを曲がるごとに内側は一層急な勾配となります。ここは自転車ハイクライム(山登り)のコースでもあったのです。
私は左手でガイダのハーネスのハンドルを握っています。盲導犬は登り坂を一緒に歩くときは本当に助かります。彼女は常に左前方を誘導しながらぐいぐいと引っ張ってくれます。このときもどれほど助けられたかわかりませんが、ガイダにとっては私の盲導犬になったが故に大変な時間を過ごさせてしまいました。今更ですが、「ガイちゃん、あのときは、いや、いつもごめんね、父ちゃん反省しているよ」。
上社までの行程の3分の2、残り2.5?ぐらいまでの地点で私もK氏もへとへと。10分歩いて小休止。その都度路面に尻を下ろし脚を伸ばしてぼやいたものでした。
勾配がやや緩やかになりそろそろ神社の駐車場に近づいたかなと感じ始めた辺りでスーパー林道の左手(西側)から軽自動車が通れる程度の山道が接していました。信州や北遠からの秋葉道そのもので、この小道こそが古来からの秋葉神社の裏参道に当たるのでした。佐久間町西渡(にしど)から天竜川左岸の山地の尾根伝いに進んできた秋葉道がやっと本願成就の直前という地点だったのです。
神社大鳥居前の駐車場に着いたのが12時40分。何と7.5?を2時間40分もかかってしまいました。2時間でに歩く予定でした。車では20分だそうです。「くそっ!」
大鳥居は文字通り大きく、絢爛とのことですが、触ってみると確かにコンクリートの円柱は太くその大きさと高さを想像させてくれました。それ以上に駐車場の広さにも驚きました。毎年12月には火防(ひぶせ)祭の例大祭が盛大に行われ、全国から参拝者というのか観光客が集まるそうですが、駐車場の広さからもにぎやかさが想像できました。
≪写真:上社大鳥居前≫
大鳥居から神社本殿に通じる参道は深閑とした杉林の森林区域にあり、石段と平地の石畳の部分が一定の間隔で現れ、更に右折と左折を重ねて山頂へ向かって行きます。両側には石灯籠が並んでいます。歩くこと20分ぐらいで西の神門や幸福の鳥居(黄金鳥居)を通って社務所などの建物のある区域に入りました。神楽殿や参拝者用休憩所もあります。どの社殿の柱も太く立派で建物の高さもかなりあるようでした。本殿の背後の斜面の上方に山頂があるそうです。
≪写真:上社本殿(ほんでん)≫
本殿に向かって右側手前に手水場があり、私たちも作法に従って口を濯ぎ手に水をかけた後、本殿に向かいました。ここに至ってやっと年配の夫婦らしき二人連れとすれ違いました。
本殿の奥からは太鼓の音とともに何やら祈祷の声が伝わってきました。参拝をしてから社務所に立ち寄りお札をいただくことにしました。社務所では二人の巫女さんが対応してくれました。K氏の話では白い小袖の着物と緋色の袴をつけていたとのことでした。金千円のお札を買った(いただいた)のですが愛想もなく、「はい」と言って渡し方だけはどことなく恭しさだけは感じました。
秋葉神社は戦前の山火事で消失したため、戦後数年を経て再建されたものが現在の姿とか。これらの事実は帰宅後に知りました。確かに大鳥居から参道の石段や石畳、いくつかの社殿の配置は地形や森林も十分考慮して設計されているように感じました。
K氏は駐車場で大鳥居を前に、「すごい、立派だ」と驚嘆をこめて賛辞を発しましたが、その後も参道を歩きながら同じ詞を何回か口にしていました。
私にも地形や周囲の杉林も含めてこの神社境内の持つ荘厳さというのか全体的な雰囲気は感じられましたが、欲を言えば、「もう少しそれぞれの社殿や周囲の様子を具体的に知ることができていたら」とこれも後になって思った次第です。
休憩所の中で遅い昼食を摂ってから帰途に就きました。当初は表参道を下社まで下り、西鹿島へ出る予定でしたが、帰りのバス時刻などを逆算して断念しました。往路の40分超過が響きました。そのため味気なくもあの自動車道を再び歩くことになりました。 (原 哲夫)
《寄稿》 『ユリスとともに生きる』
上田市 成澤正行
○ その1 ユリスとお出かけで気を付けている事
信号機のない横断歩道を利用するとき、ドライバーが気付きやすいように、ひと工夫をしています。
基本的なポジションで盲導犬を待たせていると、右側から来るドライバーからは、ハーネスが確認しにくい事が解りました。そこでひと工夫。横断歩道を渡る時、歩道と車道の区分されて居る所に足先を置き、状態で車の往来を確認いたします。盲導犬のハーネスが確認できるように、私は車道よりも少しだけ下がります。その時、黄色い手袋を水平もしくは垂直に上げて「渡らせてください。」と合図をします。これで車音が消えた所で「go」と合図をします。
○ その2 よく行く郵便局で親切な人に会いました
郵便局の手前3Mほどの所に箱型のポストがあります。そこまでたどり着いた時ショルダーバッグから点字図書館の郵送ケースを出そうとしていたら、知らないおじさんが「ポストの入口は分かりますか?」と声を掛けてくれました。
勿論、何度となく利用しているので分かってはいましたが、手に持っていたハードケースをその男性に「すみませんが、お願いできます」と。男性は「はい、はい分かりました。入れますね。」と言い投函してくれました。ポストからポトーンと音が「ありがとうございました」とお礼を言って別れました。
この様な親切な人に出会った日は一日が気持ち良いですね。
○ その3 ユリスがはじめて我が家に来た夏
ハーネスの会の皆さんと軽井沢のショッピングプラザに行きました。あの当時は、盲導犬の理解もあまりなく、盲導犬の啓発活動の一環として行ったと記憶していました。「成澤」のお墓は、プリンスに近いこともあり、墓参りの帰りに寄ろうと思い、プリンスのホームページを見ました。そこには、補助犬について書かれていました。
施設に入る事に問題はありませんが、入店については、店舗によって異なります。店舗に入れるか否かは、ホームページで確認できます。補助犬についてホームページに載せていると言う事は、盲導犬の啓発活動が生きたのかと思いました。
○ その4 私の知っている盲導犬OKのお店
【ながの東急】飲食店は、お店により異なりますが、ほとんどがOKです。
【ホテル国際21】宿泊OK。飲食店は、お店により異なります。
【ピッツェリア(上田、長野)】
【ナポリの食卓】【コメダ珈琲(上田)】
【スターバックス(上田)】【ステーキ宮】
【デニーズ】点字メニューもあります。
そば店、ラーメン店等まだまだあります。
補助犬について、理解されてきたのでしょうか?
宿泊施設については、またの機会に。
《コメンタリー》 『盲導犬 拒否 アンケートについて』
長野市 池田 純
身体障害者補助犬法が施行されてから17年、障害者差別解消法が施行されてから4年が経ちました。さらに、長野県では「障がいのある人もない人も共に生きる社会」を目指して条例の制定が進められています。
にもかかわらず、盲導犬は様々な場面で拒否されています。私は、それを「社会的活動の制限」と呼んでいます。スーパーに買い物に行く・病院に行く・タクシーに乗る・ホテルに泊まる、これら全てが社会的活動です。
それでは、なぜ盲導犬は社会的活動の中で拒否されるのでしょうか?
「犬の毛が散ると不潔だから」
「犬の嫌いなお客さんがいると困るので」
「うちは食べ物を扱う店なので」
「犬は乗せないことになっているから」
等々ですが、これらの理由にはそれぞれの背景があります。
「犬の毛が散る」は、確かに盲導犬ユーザーの中にもきちんと手入れをせずに、見るからに不潔そうな犬もいます。そのようなユーザーは、入店を拒否されても抗弁はできません。
「犬の嫌いなお客さんがいると困るので」は、拒否する理由を他人に転嫁しようとしています。確かに犬の嫌いな客もいるでしょう。しかし、私たちも客なのです。店が客を選ぶなどはこの社会のルールとしておかしいのです。
「うちは食べ物を扱う店なので」は、「保健所の指導があるので」とよく言われますが、確かにペットの入店については保健所の指導がありますが、盲導犬の入店について保健所が拒否するように指導などしていません。
「犬は乗せないことになっているから」は、運転手の無知が原因です。盲導犬のことも、身体障害者補助犬法も知らないのです。
昨年、盲導犬施設連合会(加盟8団体)が調査時点から1年前の間に社会的活動を制限されたかどうか、のアンケート調査をしましたが、52%が拒否を経験していました。
このアンケートには、643名が回答し、飲食店が77%、病院が25%、交通機関が21%、宿泊施設が20%、小売店が15%、娯楽施設が8%、図書館・公民館等の公共施設が4%となっています。これは複数回答が可能なアンケートです。驚くべきは、5回以上拒否された人が28%もいることです。
実を言うと、私はアンケートの対象になった1年間に拒否されたことはありません。その理由は、病院や歯科医院には盲導犬を連れて行かず、飲食店に行く際にも畳のような所にはできるだけ連れて行かないようにしているからです。
盲導犬を使い始めた39年前は、どこに行っても拒否されることばかりでしたが、意地になってどこにでも連れて行きました。それによって理解が深まった面もありますが、いろんな所で説明をして理解を求めるにはかなりのエネルギーが必要です。今では、横着になってしまって余計なエネルギーを使うことを避けてしまっているようです。
《寄稿》 『大きな信号には気をつけて』
上田市 松尾寿美子
近頃、街を歩く人がめっきり減りました。もともと少なかった商店街でも、歩いている人は誰もいません。三密を避けるにはいいのかなと、ループと歩きながらボーッと考えています。
私の自宅のそばには国道が走っていて、どこへ行くにしても大きな交差点を渡らなければ行かれません。もともと音響がついていませんでした。この自宅に引っ越す前に市役所へ行って、音響をつけてくださいとお願いしました。市役所では警察署へ行ってくださいと言われ、警察署へ行ったら市役所に行ってくださいと言われてしまいました。
予算のことがあるので年度末になりますと言われ、結局ついたのは1年半後でした。そうなると早いもので、国道の信号に「カッコーピヨピヨ」がつき、西友の前の信号は歩車分離になり、こちらも必要ですよねと、イオン前の二つの信号にも音響がつきました。
歩車分離の信号は押しボタン式で立ち位置によっては、ボタンに手が届かなかったり、「信号が青に変わりました」が聞こえないことがあります。真っすぐ渡って右折なり左折なりするのですが、ちょっと気を許すと斜めに渡ろうとフワッと真ん中に出てしまうのでしっかりリードを持って渡ります。
ループは、先読みが少なく端折ることもあまりしないので気楽に歩いています。例の事故のあった天神の交差点は自宅から遠く利用したことがないのでコメントはできませんが、どこの信号でも気を付けたいものです。
何にしても自宅にいる時間が長くなりましたので、ループは誰かれ構わずお客さんに飛びつきます。先日、点字図書館のNさんが見えた時に「邪魔だ!」と怒鳴られ、私の所へすっ飛んで逃げてきました。ループのストレスがたまらないようお散歩しなければと思っています。
《寄稿》 『新型コロナウイルス感染症が気づかせてくれたこと』
岡谷市 北澤とも江
2020年が明けてから間もなく、新型コロナウイルスによる感染症が世界中を震撼させた。日本でも2月の始め、横浜港に停泊したクルーズ船での感染の拡大がテレビ・新聞・インターネット等で報道され、この感染症の怖さを国民が認識したように思う。
私は3月に入ってから、仕事や趣味など全ての活動を止めて、家にこもる生活をしてきた。これまでも、私ひとりでは外出もできなかったから、こうした「おうち生活」も、さほど苦にはならないだろうと思っていたのだが、朝から晩までテレビを付けていると、世界の国々で感染が拡大している様子を克明に知ることになり、次第に憂うつになってきた。自分でも気付かないうちに、口から出る言葉も刺々しく、攻撃的になってしまっていたようである。
そんな折、友人から電話が掛かってきた。友人の声を聴いただけでひとりではないという安心感が湧いてきた。さらに、人と話しをしていないと、自分では気付かないうちにどんどん落ち込んでしまい、物事をマイナスに考えてしまうということに気が付いた。
何か生活の中で、工夫をしないといけないと思い、まず、手始めに植物の苗を買ってみた。ブルーベリーの苗と私の好きなスミレの花苗だ。花を咲かせたり実を付けたりするものを身近に置くと、人は未来を信じることが出来るようになるのだろうか。育てるものがあると明日も元気でいなければという気持ちになれる。
感染症予防は長い時間がかかりそうだと分かってきてからは、家にいる生活を楽しもうという気持ちが生まれてきた。私の場合は、台所の中に楽しみの元があったようだ。今まで、やろうやろうと思いながら実現していなかったお菓子作りに挑戦することにした。といっても、流し台の引き出しの整理を兼ねて、残っていた白玉粉で団子を作り、小豆やきな粉で味付けして、おやつを作るくらいの簡単なものである。ホットケーキミックスを使って炊飯器でケーキも出来るようになった。私の「おうち生活」では、これらのことを夫婦で共同作業しているのだが、それが意外と面白いのである。
私は家にこもるといっても、同行援護のサービスを利用しての散歩は継続出来ている。週に2回、坂道の上り下りをしながら、途中にある野菜の無人販売所にも立ち寄って、1時間程を歩いている。ヘルパーさんは、5人くらいが交代で同行してくれているのだが、それぞれの個性が違うので、散歩の折のヘルパーさんとの対話も変化があり、地域の話題も耳にすることが出来る。私にとって、この散歩は、単に運動の効果に留まらずヘルパーさんとの対話も楽しみのひとつとなっているのだ。
そんな散歩の中で、ヘルパーのお一人からこんな話を伺った。そのヘルパーさんは、訪問の家事援助もしていて、担当の中には複数の事業所が入っているお宅もあるが、もともと家事業務はひとりで行っているので、同じお宅に出入りしていても、ヘルパー同士は事業所が異なると会うこともなく、まったく見ず知らずの間柄であるということだ。しかし、ヘルパーさんは、担当のお宅での仕事が終わると、日誌にその日の利用者の健康状態と、その日、作った食事の献立などを日誌に記入してくるそうだ。それを次に訪問したヘルパーさんが読み、利用者の様子を日誌によって共有する。日誌の内容は事務連絡のようなものなので、感情のこもらない箇条書きだったそうだ。
その日誌の内容に、3月頃からある変化が起きてきたのだという。一人のヘルパーさんが、日誌の最後に一言「コロナ来るな」と自分の思いを書いたそうだ。それを次のヘルパーさんが読み、「あっ」と思った。そして自分も何か感想を書きたくなって日誌の最後に一行ほどの感想を書いた。次の人も、その次の人も一行か二行の短い文章の中に自分の思いや願いを綴るようになった。
ヘルパーさんたちは訪問先の利用者の感染予防対策も担っているから、ドアノブはもとより、自分が触れた場所をすべて消毒している。利用者さんを守るという責任の重い現場である。その緊張が次第にストレスにもなっていくようだ。
そんな緊張・ストレスの中、誰かが日誌に書いた「コロナ来るな」の一言をきっかけとして、同じ仕事をしている者同士の連帯感が生まれ、それから、お互いの身を気遣う思いやりの言葉を日誌に残すようになったのではないかと感じていると、私に話してくれたヘルパーさんは言っていた。
その話を聞いて、私も心がほぐれるような暖かな気分になった。折りしも、最近、長野の善光寺でも「共感の鐘」をつくようになったとテレビのニュースで知った。新型コレラウイルス感染症の治療に当たっている医療従事者に感謝を伝え、患者さんの快復を願う応援の気持ちを伝えるために鐘を鳴らすようになったと聞いた。
感染症への恐怖や不安の中にあっても、人々は、人と人との連帯の共感を生み出そうとしているのだろうか。そんなことを思う今日この頃である。
《寄稿》 『これからのこと』
松本市 丸山訓代(くによ)
この地球上には無数の生物が生息しているがみな共存共栄、助け合って生きている。しかしこのたびはそのバランスが崩れて人類は微生物に揚げ足を取られて難渋させられてしまった。勿論、私たちの体の中にも食品の中にいても恩恵を被っている。これは善玉で悪玉が潜んでいることに気がついていなかったことに落とし穴があった。
今後、乗り物は変わるのだろうか、自転車が増えるのだろうか。ハーネスの会で諏訪湖に行ったときに乗った、水陸両用バスのようなオープンな車がよいのだろうかなど。
いろいろ考える。しかし1番の問題は信号機の歩行者用の押しボタン。ウイルスがそこから感染するからである。
《感謝録》 『平成31(令和元)年度 ご寄付・募金にご協力いただいた皆さま』
【寄付】
盲導犬使用者サポートクラブ様 10万円
長野県労働金庫丸子支店様 8,154円
相場光子様・有賀久美子様・飯嶌悦代様・井川さゆり様・伊藤正子様・今村邦彦様・ 金井修司様・黒澤美那子様・小林鈴美様・篠崎由起子様・久島和実様・桜井悦子様・ 前川えりか様・三村惇子様・横関恭子様・近藤順子様・藤川満希子様・古田綾夫様・ 北澤とも江様・原哲夫様・古内みづほ様・宮澤藤貴子様
【募金】
伊藤動物病院様 26,955円
もろずみ治療院様 1,821円
ストリーム様 1,800円
東御市片羽区サロン様 12,542円
東御市大日向区いきいきサロン様 7,765円
手まりまつり 30,302円
ストラップ売上 16,950円
《会員メッセージ》 『振込通知書から 』
○ 古内みづほ様: 2020年のオリンピックパラリンピックに向けて建造物のバリアフリーだけではなく私たち一人ひとりの心のバリアフリーの底上げが進むように願っております
○ 黒澤美那子様: 頑張って下さっている皆様とワンちゃんに感謝?!ほんの気持ちですので役立てて下さい。
○ 横関恭子様: スタッフの皆様お仕事をしているわんちゃん達暑い日が続くけど頑張って下さい。応援しています。
○ 伊藤正子様:皆様のご活躍のよりハーネスの会がますます実りある会として発展していく事を願っております。
○ 新井由紀子様 :宜しくお願い致します。
大勢の皆さまありがとうございました。心より感謝申し上げます。(ハーネス基金チーむ 前野弘美)
《ハーネス基金報告》 『平成31年(令和元年)1月から12月31日の状況』
【疾病治療費補助】
○ デリカ 209,608円(歯槽膿漏及び抜歯。手術、皮膚炎の治療。肝炎膵炎治療及び投薬)
○ ロージー 15,906円(貧血)
○ ユリス 20,631円(足の腫れ・血液検査。皮膚炎、外耳炎)
【死亡見舞金】
○ バル 10,000円
【健康管理費】
○ 盲導犬 18頭 90,000円
○ 引退犬 4頭 20,000円
合計 22頭 110,000円
《事務局から》 『令和2年(2020年度) 会費 納入のお願い』
今年度分会費の納入をお願いいたします。同封の振替用紙にて、2千円をご入金ください。
9月末日までにご入金いただきますようご協力をお願い申し上げます。総会に出席される方は、当日会場でお支払いいただいても結構です。
なお、振込のひかえを領収書とさせていただきます。
以上、本号はこれでおしまいです。