【会報】ハーネスながの第12号


ハーネスながの 2002年5月 第12号
発行:長野県ハーネスの会 会長 原 哲夫
〒390-0304 松本市大村492-3  
第12号目次
《会からのお知らせ》 2002年度総会は6月1日(土)に
《カンパ報告》 『総額10万円余、ご協力ありがとうございました』
《国会》 『身体障害者補助犬法案が国会で成立』 池田 純
《パートナーと私》 『わたしのペンタス』 穂高町 稲田 豊、 『ビクセンについて』上田市 大長 芳枝
《デビュー》 『どうぞ宜しくおねがいします』 中沢 医さん&ユース、三浦 あゆみさん&ベネティ
《レクイエム》 『ありがとう、そして安らかに』 クララ、ペンタス
《救援カンパお礼》 『クララへのお見舞いありがとうございました』 長野市 大沢 本芳
《事務局から》 『ハーネス募金箱をご存じですか』
《会からのお知らせ》
2002年度総会は6月1日(土)に
運営委員会
新緑がまぶしい季節となりました。会員の皆様、如何お過ごしですか。
2002年度の長野県ハーネスの会総会と交流研修会を下記のように開催します。
多くの皆様のご出席をお待ちしております。

〈日時〉 6月1日(土)午後1時30分~4時
〈場所〉 松本市元町3丁目 ふくふくライズ3階研修室
(アップルランド元町店北)
バス:横田経由浅間温泉行「自動車学校前」下車後、北へ約150m
電話: 090-5527-7931 (原 携帯)
〈日程〉 総 会 午後1時30分~2時10分
交流会 午後2時20分~3時50分  解散 午後4時
〈内容〉 総 会
・2001年度の活動と会計報告(ハーネス基金会計も含む)
・2002年度の活動と予算案審議(ハーネス基金運営方針も含む)
交流会 「盲導犬受け入れ拒否とその克服体験を語り合う」
盲導犬への理解は進んできています。しかし、未だに盲導犬を同伴した私たちが入店や施設の利用を断られるケースも時々あります。今回の交流会ではこのような問題の現状を知ってもらうとともに、それらをどのように乗り越えていったらよいかについて体験を語り合ったり、理解を深め合ったりできればと思います。
2002年度会費納入のお願い
事務局
2002年度の「長野県ハーネスの会」の年会費2000円を同封の振り込み用紙でお振り込み下さい。
できるだけ6月中にお願いします。
《カンパ報告》
『総額10万円余、ご協力ありがとうございました』
事務局
長野市の大沢本芳さんの使用するクララの長期病気治療にともなう医療費負担を少しでも軽くできればと、会員の皆様に昨年11月に「医療費救援カンパ」を呼びかけました。本年2月までに14名の皆様から総額10万6000円という多額のカンパが寄せられました。中には小学生がお小遣いを送って下さった例や、かなりの高額をご援助下さった例もありました。添えられたメッセージとともに3回に分けて大沢さんにお送りしました。
また、本会のハーネス基金からは規定により、10月に病気見舞い金として2万円をお送りしました。
皆様の温かいお心に感謝しつつご報告させていただきます。
尚、クララは12月16日に亡くなりました。ご報告が遅くなってしまいましたことをお詫びいたします。(大沢さんからのお礼状が本紙後半にあります)
《国会》
『身体障害者補助犬法案が国会で成立』
池田 純
今国会で「身体障害者補助犬法案」が成立しました。盲導犬は、国の法律や通知で認められていますが、旅先では、ホテルやレストランで断わられて困ることがよくあります。そして、より深刻なのが、車いすの人を助ける「介助犬」や、耳の不自由な人を助ける「聴導犬」で、これまで、法律や通知で全く認められていなかったため、介助犬と大学に通学しようとした人は、何度も地下鉄に乗って、安全に乗車できることを証明して初めて地下鉄での通学を認められました。
障害のある人を助ける犬を「身体障害者補助犬」と呼び、補助犬を育てる人、補助犬を利用する人、そして国や県、一般の人達の責任と義務を、法律できちんと定めているのが「身体障害者補助犬法案」です。
この法律では、まず補助犬を育てる人は、厚生労働省の定めるプログラムに従って訓練し、必要な場合には再訓練をすることが義務付けられました。また、補助犬の利用者は、補助犬の衛生管理等をきちんとすることが義務付けられました。
そして、補助犬の利用者が利用することを拒んではならない施設として、国や県が管理する施設、公共交通機関(電車やバス)、不特定多数が利用する施設(ホテル、レストラン、映画館等)が挙げられ、できるだけ受け入れるよう努力することが義務付けられたのが、補助犬を利用する障害者が働いている事業所や、アパートのオーナーです。
この法律によって、より質の高い補助犬が多く育てられ、これまで行動を制限されてきた障害者の生活の場がもっともっと広がっていくことが期待されます。
《パートナーと私》
『わたしのペンタス』
穂高町 稲田 豊
私は犬好きで、前に親子2頭の柴の雑種を飼っていたこともあります。その犬は外飼いで、ある程度盲導犬と似た習性を持っていましたが、この紙面ではペンタスについて書きたいと思います。
ペンタスが我が家に来たのは1992年だったと思います。盲導犬というには余り利口な方とは言えませんが、今の独り身の生活には家族の一員としてきちんと居場所を持っています。
彼女の欠点は人が来ると我が家では、先ず、あいさつとして吠えまくるのです。尻尾をぐるぐる回して、ベッドチェーンで繋いでおかないと玄関まで飛び出してしまうほどの勢いのよさです。でも、ひとたび自分の家から外へ出かけると、人と会ってもその癖を全く見せませんし、跳ね歩きをします。だいぶ年をとったせいか、以前よりもゆっくり歩くようになってきていますが、それでもペンタス自身が知らない場所に来ると、興奮度が激しくなり、益々速く歩くようになります。その点は主人の心を読み取ることが敏感なのかも知れません。
私はペンタスと歩き始めたころ、彼女への指示は英語だけで命令していましたが、訓練期間が終わって穂高町へ帰ってからは2、3の命令語の他には日本語で話しかけるようにしました。その方がペンタスに私の気持ちが通じるような気がしたからです。今は、ほめるときは、「よしよし(グッド、グッド)」。叱るときは、「だめ、いけない(ノー)」、などと日本語と英語を重ねて使っています。良いか悪いかは別として私の気持ちがことばとして自然に伝わるような気がするからです。
彼女の名誉のために良いところもつけ加えておきましょう。私は音楽が好きでよくコンサートを聴きに行きます。もちろんペンタスと一緒です。音楽ホールなどへ行ったときは、まるで機械のようにおとなしくしています。演奏中に何かの楽器が突然すごく大きな音を発したときでも、動き出したり吠えたりして、周りのお客さまにご迷惑をかけたり私自身が困ったりしたことは一度もありません。アンコールの拍手が鳴り止まないとき、きょとんとして私の方に顔を上げるのです。頭を軽く撫でてやると、前と同じような姿勢でうずくまります。講演会などでも同じです。
私はクリスチャンで教会によく行きます。そこでもペンタスはみなさんの長いお話を聴きながらじっと待っています。この数年、私は持病の治療のため透析を受けています。穂高町から松本市の相澤病院まで通院しています。私が透析を受けている正味4時間30分、私のベッドの傍らで騒ぐこともなくじっと待ってくれています。通院の行き帰りの道も、8年間ずっと、まるで家の中を歩くときのようにゆっくりと案内してくれます。でも初めての道では全く事情が違うようなのです。松本と大阪間の飛行機の旅も経験しましたが、鉄道やバスのときと同じように、静かに椅子席を捜して優しいアイメイトそのものでした。
いよいよ愛するペンタスとも、2、3年の内には別れなくてはならないときが来ます。そのことを想像すると兄弟を失うような気持ちです。盲導犬、いや私たちは親しく「アイメイト」と呼んでいますが。その別れのときが間近になって、私は平常心でいられるか、甚だ心もとないのです。
〈お断り〉 この原稿は昨年いただいていたものです。発行が大変遅れてしまいましたことをお詫びします。
『ビクセンについて』
上田市 大長 芳枝
ハーネスの会に入会して2年目になります 私のパートナー(ビクセン、雌)は4月のお誕生日で14才になりました。10才のときに石につまずいて白内障を発見し、それ以降、その進行を抑えるためのカタリンという目薬をつけています。お陰様で進行は止まっています。ハーネスのベルトが当たるところにいくつか脂肪腫ができていますが、とても元気です。ビクセンは何よりもりんご、白菜、キャベツ、にんじんが大好きです。
ビクセンとあちらこちらの小学校や保健所の依頼でお話に行ったり、子供たちに盲導犬のお話をしたり、点字を教えたり、近くの公民館へ歌を歌いに行ったりと、たくさんの思い出ができました。
昨年からはハーネスは私の肩に掛け、引き綱だけを握り、息子に一緒に歩いてもらっています。この子からはたくさんの数え切れない思い出をもらいましたので、今度は私がこの子にたくさんの思い出をあげようと思っています。ですから2頭目の盲導犬は持たずに最後まで伸び伸びと余生を送らせてあげたいと思っています。
それでは皆様、お元気でお過ごしください。
《デビュー》
『どうぞ宜しくおねがいします』
昨年12月からこの3月までに新しい一歩を踏み出したユーザーとそのパートナーが3組ありますが、本号ではいずれも初めての盲導犬歩行を始めた2組のペアーを紹介します。
中沢医さん&ユース
坂城町の中沢 医(おさむ)さんとパートナーのユース(オス、ブラック、ラブラドールレトリーバー)は、昨年12月中旬に大阪の日本ライトハウスより合併訓練から戻ってきました。
犬の性格は温厚ですが、少し神経質な部分があります。現在、朝と夕方に1時間くらいかけて散歩していますが、だんだん暑くなってきましたので、帰宅後に飲む水の量が冬の間に比べかなり増えました。時々私の都合で、散歩コースから外れると「なぜそっちに行くの? 今日はこっちじゃないの?」という顔をされて止まってしまい、困ることがあります。
また、私の家では小型犬(12歳)を飼っていますが、ユースが来た当初は、自分の居場所をとられてしまって少しかわいそうでしたが、今はそれぞれお互いの場所でじっとしています。
坂城町にとって初めての盲導犬ですが、周りの人は静かに見守ってくれています。
これからいろいろな場所を歩くようになりますが、皆様よろしくお願いいたします。
三浦あゆみさん&ベネティ
戸倉町の三浦あゆみとベネティーです。3月に、日本ライトハウスで共同訓練を受けました。ベネティーは、2才で、イエローラブのメスです。おとなしい正確で、寝ているのが好きらしく、トイレに行くより寝ていたいということもしばしばです。慎重というか、臆病というか、障害物があると、避けずに止まってしまうことがあるので、どうして動かないのかわからなかったり、迷子になったりと、ドキドキしながらも、手引きなしで外出できる喜びを味わいながら、がんばっています。 よろしくお願いいたします。
《レクイエム》
『ありがとう、そして安らかに』
昨年11月からこの4月までの間に2頭の盲導犬が亡くなりました。1頭は長野市の大沢さんのクララ、もう1頭は穂高町の稲田さんのペンタスです。長い闘病の中で多くの人たちから見守られて逝ったクララ、急に歩けなくなり病床に伏せること2週間余りであっけなくその犬生を全うしたペンタスと、2頭のワンちゃんの命の締めくくり方は全く対照的に見えました。しかし、共通する姿は目を落とすその瞬間まで、決して苦痛を表に出すこともなく穏やかな表情を見せて最後まで私たちに『癒し』を与えてくれていたことです。
クララ、ペンタス、本当にご苦労様。あなたたちが安らかに眠ってくれることを祈っています。
大沢さん、稲田さん、心からお悔やみを申し上げます。
クララ
長野市の大沢本芳さんの3頭目のパートナー。92年4月から大沢さんとの生活が始まりました。毎日の自宅と治療院との往復や大沢さんの趣味の尺八練習会への案内が主な仕事でした。演奏会のステージでは常に主人の隣に伏せる姿が見られました。
昨年5月ごろから足腰の不調が現れ、6月には骨肉腫と診断されました。既に身体全体に癌が転移しており、その後は自宅で獣医さんの往診を受けながらの治療が続いていましたが、12月16日に亡くなりました。
ラブラドルリトリーバー、12才、雌、東京アイメイト協会出身。
ペンタス
穂高町の稲田豊さんの1頭目のパートナー。92年7月から稲田さんと歩き始めました。穂高町から松本市内へ毎週の通院を始め、教会での礼拝やコンサート、そして日常生活の中でどこへ行くにも同伴でした。2年ほど前から白内障が現れ始めましたが、仕事はしっかりやっていたそうです。3月25日に通院しましたが様子がおかしく、動物病院で検査を受けたところ、腎臓、肝臓などに既に重い疾患があったそうです。そのまま入院し治療を受け、一時はかなり快復し元気を取り戻したように思えましたが、4月15日に急変しそのまま亡くなりました。
ラブラドールリトリーバー、雌、11才、東京アイメイト協会出身。
《救援カンパお礼》
『クララへのお見舞いありがとうございました』
長野市  大沢 本芳
ハーネスの会の皆様、お元気ですか。
厳寒の中とは言え、立春も過ぎますと陽ざしも春を感じさせ、寒暖の差の激しい今日このごろ。
会員の皆様には盲導犬クララに対しまして、多額のお見舞いと激励のお手紙をいただき誠にありがとうございました。
しかし悪性の骨肉腫に冒されたクララは、献身的な獣医先生の手当ても、医療機関の援助と私の鍼治療と家内の協力で誠意を込めた6ヶ月間の看病のかいもなく、昨年の暮れの12月16日に永眠しました。
しかし予想を超えた延命と衰弱が日増しに進む折も、苦痛が最小限に治まり安らかな表情で多くの人たちの見舞いを受けてうれしそうにしておりました。最期は入院いたしましたが、私は毎日クララの見舞いと鍼治療に出かけ、最期の4、5日は痙攣と意識混濁を呈しました。亡くなる前日には、長野の県短で盲導犬をテーマに研究した二人の若い女性たちが辰野町より駆けつけてくれました。その女性たちに見守られ、すでに意識の定かでないところを私の鍼治療で2、3分後痙攣が止まり、意識がもどり、目を瞬きました。そして予想通り翌日、電話で駆けつけたときには間に合わず息を引き取りました。
SBCテレビで4回も放映され、盲導犬として活躍した様子、また病に冒されて苦しい闘病にもかかわらず盲導犬の品位を失わなかった様子が映し出され、多くの視聴者が驚き、悲しみがひしひしと伝わってきました。
雪解けを待ってクララの前の盲導犬サンリーが眠る信濃霊園にお骨を納める予定です。そして気持ちの整理をつけて3月18日から大阪の日本ライトハウスに4頭目の訓練に行くことになりました。
ハーネスの会の総会には新たな気持ちで皆様にお会いができると思います。
ご支援していただいた方々のお一人お一人にお礼のことばをお伝えできなくて本当に申し訳なく思っています。会報『ハーネスながの』の紙面を通してお礼に代えさせていただきます。
平成14年2月5日
《事務局から》
『ハーネス募金箱をご存じですか』
本会ではリサイクルのアルミ缶を利用した「ハーネス募金箱」を人の集まりやすいお店や会社などに置かせていただいています。これは長野市リフレッシュプラザのコート製作グループの皆様のご協力により作られたもので、アルミの空き缶を布でリフォームしてワンちゃんのマスコットを付けたシンプルな募金箱です。置いていただく期間は不定期ですが、半年から1年に1回集金します。募金額の多少に関わらずご連絡いただければ引き取りに伺うか振り込み用紙をお送りします。
置かせていただけるお店やご家庭がありましたら事務局までご連絡下さい。
2001年7月から02年5月までの募金箱の収入のご報告をします。全てハーネス基金に加えさせていただきました。
山本ふくみ様 4,336円 松本デイリーストア竹渕店様 4,020円
村井 赤ちょうちん様 5,456円 高瀬牧代様 3,945円
浅間温泉 神宮寺様 3,293円 長野市 元庄屋川中島店様 12,000円
蟻ヶ崎 下川恒子様他① 6,679円、下川恒子様他② 5,179円
大橋通り 瑞松寺様 5,682円 中山もず子様、小林ふくみ様 2,000円
笹部幼稚園長 桜井清子様、同PTA様 4,467円
三郷村社会福祉協議会様 12,393円
松本駅前 ホテル ニューステーション内ハートイン様 1,554円
デイリーストア竹渕店様 1,237円
愛知県知多市南粕谷マックス応援団様 6,830円
下諏訪町 サンクレス ジョブ アルファ様 11,014円
誠にありがとうございました。
【編集後記】
4月にパソコンを新しく入れ替えました。インターネットによる通信機能も大幅にアップして喜んでいた矢先、送られてきたe-mailの添付ファイルからウィルスに侵入されてしまいました。全く通信ができなくなり、会報の発行にも影響が出てしまいました。本号ではかなり前からいただいていた皆様の原稿をやっと発行することができました。しかし、遅れたために稲田さんの『私のペンタス』の文は思い出の記になってしまいました。お詫びします。
尚、《コメンタリー》は都合により休ませていただきました。
会報の内容などについてのご意見、感想をお寄せ下さい。
(編集係 原)

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