【会報】ハーネスながの第6号


《ハーネス基金》本年度はフィラリア予防費の助成に
1999年度からスタートしました『ハーネス基金』の初年度助成の実施報告をします。本年フィラリア予防のための医療費として、会員登録されている24頭の盲導犬と3頭のリタイア犬に対して、それぞれ1万円を助成しました。『ハーネス基金』は、会員の皆様からの年会費の一部と寄付金で運営しています。助成を受けたワンちゃんとユーザーを紹介します。皆様のご支援に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
犬名 犬種 雌雄 犬齢 使用者 居住地
モナミ ラブラドール 雌 13 赤堀たつじ 小海町
シンシア ラブラドール 雌 10 西山英敏 下諏訪町
マック ゴールデン 雄  4 玉野育子 松本市
ピート ラブラドール 雄  5 前野弘美 松本市
ドロシー ラブラドール 雌  5 広沢里枝子 東部町
ルクリア ラブラドール 雌  3 加藤久美 長野市
アンディ ラブラドール・ゴールデンF1 雄  3 戸田 泉 駒ヶ根市
オリビア ラブラドール 雌  3 滝沢英樹 松本市
オマリー ラブラドール 雌  6 関喜之助 上田市
ゼノビア ラブラドール 雄  3 丸山訓代 松本市
アルスター ラブラドール 雄  4 丸山良三 松本市
ペンタス ラブラドール 雌  8 稲田 豊 穂高町
ジギー ゴールデン 雄  5 上原弘三 丸子町
ゼーダー ラブラドール 雄  2 北澤とも江 岡谷市
クララ ラブラドール 雌  9 大沢本芳 長野市
マックス ラブラドール 雄  7 原 哲夫 松本市
カナット ラブラドール 雌  5 三好英雄 須坂市
マイケル ラブラドール 雄  2 福崎直昭 松本市
ニック ラブラドール 雄  6 池田 純 長野市
ユール ラブラドール 雄 13 小田道子 上山田町
エミー ラブラドール・ゴールデンF1 雌  1 滝沢ケサミ 佐久町
エルマー ラブラドール・ゴールデンF1 雄  1 青井貴世志 立科町
アルター ラブラドール 雌  3 竹内 克 長野市
ラッシュ ラブラドール 雌  6 上本和男 小川村
引退犬
サリー ラブラドール 雌 14 近藤順子 茅野市
ジェミー ラブラドール 雌 11 山本美津子 御代田町
ネリー ラブラドール 雌  9 清水 栄 長野市
《コメンタリー》盲導犬の普及を阻むもの
長野県身体障害者リハビリテーションセンター ケスワーカー 池田 純
単独歩行をする視覚障害者にとって、白杖歩行よりも盲導犬歩行の方が安全性・速度の点ではるかに優れていることは、誰もが認めることだと思います。それ故に、日本財団の盲導犬実態調査によれば、全国で4000人を超える視覚障害者が盲導犬の使用を希望しているとの結果が発表されています。長野県においては、長野県と上田市で盲導犬の給付・貸与事業を実施してきたことにより、全国でもトップレベルの盲導犬普及率を達成しています。ところが、ここ数年長野市においては、盲導犬の数が減り続け、ピーク時の半数になってしまいました。この減少の背景について考察してみます。
新規ユーザーが増えない原因としては、三療開業者にとって4週間の共同訓練のために休業することは困難。年々高くなる視覚障害の発現年齢。糖尿病視覚障害者の増加などが考えられます。また、更新しない人の理由としては、「治療費に多額の出費があった」、「1頭目の盲導犬が忘れられない」、「家族が犬の毛に対するアレルギーがある」、「高齢のために盲導犬の管理を十分にできない」、「単独歩行の機会がほとんどなくなった」などが挙げられます。
そして、新規ユーザーにとっても、更新する人にとっても、盲導犬を使うことをためらわせる大きな理由が社会の盲導犬に対する無理解です。街を歩いていると大きな声で騒ぐ子ども、入店を拒否するレストラン、宿泊を拒否するホテルや旅館がまだまだ多いことです。これらのことが新聞等で大きく取り上げられたり、口コミで伝えられることで、「盲導犬を使っても大変だ」と感じる人は少なくありません。そのようなためらいを克服して盲導犬を普及させるためには、 1.これまで以上に盲導犬に対する理解を深める啓発活動の強化。 2.訓練所での共同訓練期間の短縮(日本ライトハウスでは在宅訓練を開始する予定がある)。3.視覚障害者の単独歩行に対する動機付を促すための白杖歩行の訓練の充実。これらについて、行政、盲導犬ユーザー、盲導犬訓練所が協力して進めることで、盲導犬ユーザーは徐々に増加へと転ずることが期待されます。
《つどい》長野交流会終わる
昨年11月13日(土)に長野市ふれあい福祉センターで盲導犬を囲む交流会が行われました。長野市で交流会を開いたのは本会が発足して初めての試みでしたが、当日はワンちゃん10頭とそのユーザー、長野地区の会員を合わせて25名ほどの参加がありました。 交流会は第1部として、長野市の大沢本芳さんと清水栄さんによる体験談の講演があり、第2部では参加者による自己紹介と盲導犬との関わり、そして盲導犬のコート製作などの話題に花が咲きました。
大沢さんは奥様とお二人で参加して下さり、これまで一緒に歩いたアイメイトたちとの思い出とともに、長年に渡り精進されている尺八のすばらしい演奏を聴かせてくださいました。また、清水さんはこれまでに引き取られた2頭のリタイア犬や製薬会社の実験に使われた犬の老後の世話をされた体験をお話し下さいました。 大変和やかで良い交流会になったと思います。ご参加いただきました会員の皆様、ありがとうございました。
(実行委員長 内藤敦彦)
《声》長野交流会の参加者感想アンケートより
大沢さんのシャーリーとの思い出は、とても感動しました。犬の『人格』につい て、本当に胸があつくなりました。大沢さんのこれからのますますのご活躍と、クララのファイトに拍手したいです。また、清水さんの心の優しさには、心打たれました。私も、もっと協力できることがあれば、何かやらせて下さい。設定して下さった 事務局の方々、ご苦労様でした。(塚田千穂さん)
大変良かったと思います。清水さんには感心致しました。皆さんのお話を聞き、本当に良かったと思いました。年に4回ぐらいどうでしょうね。(藤沢良子さん)
今日のような機会をもう少し多くつくって欲しい。明るくて楽しい会でした。(下平信夫さん)
目の不自由な方にとり、盲導犬は本当に生活になくてはならない存在だと思いま す。もっと盲導犬が生活の場において理解されるとよいと思います。社会全体がもっと動物愛護について理解されると、自然と盲導犬に対する理解が深まるのではないかと思います。会員だけでもよりいっそうの動物を知ってもらいたいと思います。(田幸礼子さん)
いろいろな形で支えてくれる人たちがいることを知りました。内輪の方たちの集まりで大変和やかな雰囲気で、家族として大変安心しました。始まったばかりの 会とのことですが、今後のご発展を願っております。(北沢孝次郎さん)
人前に出る事が大の苦手な私が、一大決心をしましてハーネスの会に参加致しま したのが11月13日(土)でした。20名ばかりの会員の方がみえておりました。 たくさんの盲導犬を身近に見るのは初めてでした。ユーザーの傍らに静かに横たわるワンちゃん達に胸が熱くなる思いでした。また、大沢先生の尺八の音色と共 にアイメイトとの体験談には涙を流し、ユーモアを交えた加藤さんのお話に微笑み、健常者の私には大変有意義な一日でした。若くはありませんが、出来る限りお力になりたいと思っております。お元気で。(多田艶子さん)
大沢さんの体験を聞かせていただき、心を打たれ涙が出そうになってしまいました。盲導犬を失ったときの悲しみは、私などには計り知れないほどのものなんだ ろうなと思います。参加者懇談会は、とても有意義でした。もっといろいろなことを知りたいと思いました。みなさん目的は同じなのだから・・・。とてもすばらしい時間でした。長野でも盲導犬のことを沢山の人に知ってもらうためにどのような活動をしたらいいのか、考えていきたいし、今日みたいな機会をまた実現 してほしいと思います。(木藤由美子さん)
《東奔西走》各地で盲導犬啓発研修会
最近、学校や社会福祉協議会、または民間企業などから「盲導犬について話をしてほしい」との依頼が会員のユーザーや本会に対してよく来ます。身近な福祉や人権教育の一つとして、盲導犬を通して障害のある人たちを理解したり、総合的学習として盲導犬とそれに関わる興味のある課題を学習活動に取り入れようとすることが多くなっているからです。民間企業や教育事務所では新規採用の従業員や教職員の初任者研修会の内容に取り入れる場合もあります。講演会や教室の内容は学校や目的によって異なりますが、単に盲導犬の話に留まらず、点字や拡大文字、さらにはガイドヘルプの方法にまでと障害のある人たちの 生活について触れることが多くあります。ときには会場内に模擬通路を作り、パー トナーとのデモンストレーション歩行を見てもらうこともあります。
ハーネスの会の会員を通して各地域の実施状況を調査した結果、昨年4月から2月現在までに次のような学校や機関で研修会や教室が開かれました。
【東信】
 長野大学、岩村田高校、上田建設事務所、東急グループ初任者研修会、御代田町立御代田北小学校、東部町立祢津小学校、上田市立第四中学校、真田町立長小学校、上田市立第三中学校、上田市立第一中学校、臼田高校、東部町ボランティア教室、上田市立城下小学校、東部町立田中小学校、佐久市立野沢中学校、上田女子短期大学、上田市立川辺小学校、上田市立中塩田小学校、小海村立小海小学校、小諸市立芦原中学校、南佐久郡母親委員会、小諸市泉小学校、小諸市野岸小学校、東部町立和小学校、武石村立保育園、東部高校、上田教育事務所初任者研修会、佐久教育事務所初任者研修会
【北信】
 長野市立通明小学校、長野市川中島中学校、屋代高校、飯山南高校、豊野町立v豊野中学校、長野市老人大学、長野市立北部中学校、飯山市立第二中学校、長野市立綿、内小学校
【中信】
本城村社会福祉協議会、松本市立筑摩小学校、長野県高校総合文化祭福祉セミナー、信大附属松本小学校、附属松本中学校、木曽福島町立福島小学校、松本市立明善小学校、三郷村社会福祉協議会
【南信】
辰野町立川島小学校、辰野町立辰野東小学校、茅野市社会福祉協議会、辰野町立辰野西小学校、辰野中学校、諏訪実業高校、諏訪市立豊田小学校
《寄贈》コート生地とバスタオルをプレゼント
昨年11月20日に、長野市の倉石千枝子さんから「盲導犬に使っていただきたい」とのご趣旨で、レインコート用生地4色計90㍍と大型バスタオル25枚のご寄贈の申し出がありました。臨時運営委員会を開き、感謝してお受けすることにしました。そして昨年末までに会員の盲導犬ユーザー24名に大型バスタオルを郵送しました。 また、いただいたレインコート生地は、イエロー、ワインレッド、ネイビーブルー、モスグリーンの4色です。そこでユーザーの希望する色の生地を使い、縫製ボランティアの方々にお願いして申し込み順に縫製作業を始めました。まだ、申し込みをしていないユーザーは製作部(丸山さん: )までご連絡下さい。倉石さんには、この紙面を借りて改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
肉屋さんの店頭にハーネス募金箱を
食肉卸チェーンの「ミート・ザ・ミート」(本社、横浜市)の松本食鮮市場店(松本市芳川)では昨年9月から、店頭のショーウィンドー上にハーネス基金のための募金箱を置いています。甲信地区担当営業課長の清澤さんは、「盲導犬の働きに少しでもお役に立てれば」と話されました。本社の方針としてその地域の特性に合った社会的な貢献をしていきたいとのことです。
12月23日に初めて募金箱がいっぱいになったとして、徳竹店長から現金5612円が贈呈されました。本会では全額をハーネス基金に入れました。ありがとうございました。
三郷村子どもふれあい広場でハーネス募金
南安曇郡三郷村社会福祉協議会では、2月11日に子どもふれあい広場を開きました。会場には三郷小学校の児童を中心に保護者や家族らが多数集まり、熱心に学習や体験をしました。この日は、車椅子体験、手話講習会、盲導犬や視覚障害体験などのコーナーが設けられ、参加者はそれぞれ関心のあるコーナーで熱心に取り組みました。
盲導犬と視覚障害体験コーナーの講師には昨年に引き続き本会から滝沢英樹さんとパートナーのオリビアが出席しました。午前と午後の2回で合わせて60名を越える子どもや家族の参加がありました。また、主催者によりハーネス基金のための 募金が会場で行われ、現金6032円が滝沢さんを通して本会に寄贈されました。三郷村のみなさん、ありがとうございました。
《製作部》リフレッシュプラザで盲導犬コート作り
長野市のリフレッシュプラザでは、かねてより不要品の再活用を目指して様々な リサイクルに取り組んでいます。使わなくなったこうもり傘やコート生地を用いて 盲導犬レインコートや外出着の製作も始めました。
2月4日(金)に、同プラザに盲導犬コート作りに関心のある希望者15名が集まり、本会製作部の丸山さんから説明を聞いたり型紙を取ったりしました。 
《事務局より》
2月現在で会員の盲導犬ユーザーは24名、引退犬飼育者は3名となっています。本号でご報告しましたように、27頭のワンちゃんたちにフィラリア予防の医療費助成を終わることができました。昨年の8月から順次ご指定のあった金融機関の口座に送金させていただきました。(田中)
【編集後記】
立春も過ぎ、2月も終わろうとしています。中南信地方では雪がほとんどない冬となり、私にはほんとに助かりました。本号から《コメンタリー》というコラム欄を設けました。福祉やリハビリテーションさらには動物医学などその分野の専門家のご意見を伺いたいと思っています。(原)
〈2000年5月号〉

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