ハーネスながの 2011年 12月 第36号
発行:長野県ハーネスの会会長 前野 弘美
TEL 0263(35)7938 携帯 080-1043-7315
事務局:〒390-0304 松本市大村492-3
http://www.harness-nagano.com
第36号 目次
《特集》
『長野市第三給食センターでの盲導犬同伴拒否について』
《連載/信州 こんなところ、こんな話 ③》
『ひと味ちがう芸術鑑賞をしました』
《新企画/ハーネスの会ML》
『長野県ハーネスの会のML(メーリングリスト)が起動しています!!』
《デビュー》
『上條さん、再びパートナーと歩き始める』
《連載/旅は犬連れ 5》
『ウィングとの北海道旅行』
《ハーネスサミット報告》
『イルカショーにびっくり』
『ハーネスサミットに参加して』
《支援》
『盲導犬使用者サポートクラブから支援』
《新企画/会長コーナー》
『2011年度後半(11月~3月)の長野県ハーネスの会の予定』
『ドッグドック実施』
『2012(平成24)年度に行いたいイベントについて』
『ハーネスの会MLへご参加を』
《事務局から》
『平成23年度会費の納入をお願いします』
『盲導犬ユーザー登録用紙の提出をお願いします』
『ハーネス基金疾病治療費助成の申し込みをして下さい』
『ハーネス基金に関わる会計事務は齊藤さんが担当』
《編集後記》
これより本文
《特集》
◇6月5日に行われた本年度総会のチーム会議とその後の情報交換の時間に長野市の盲導犬ユーザーから1年前に同市給食センターで受けた盲導犬同伴拒否の状況とその後の経過が報告されました。そして1年経過した時点でも長野市第三給食センターと長野市障害福祉課の不誠実な姿勢が続いていることは、「身体障害者補助犬法」に照らしても大きな問題であるとの意見で一致しました。また、その結論を受けて長野県ハーネスの会でも正副会長と問題対策チームを中心に必要な対応をすることを決めました。
〈給食センターへの同伴拒否の状況と経過〉 長野市 加藤久美
2010年6月16日、小学生の子供のクラス役員として長野市第三給食センター見学会に参加したところ、施設内への盲導犬同伴拒否に遭遇しました。
当日は、給食センターということで、盲導犬についての知識がない職員にもしかしたら断られるかもしれないとは思っていました。しかし、もう17・8年くらい前のことになりますが、私が新任教員として松本盲学校に勤めたとき、初任者研修の一環として松本市の給食センターに行ったことがあり、そのときの内容と同じだったので、盲導犬同伴には問題ないだろうと考えていました。ところが、給食センターでは、盲導犬は玄関で待機するように、一歩たりとも中には入らせないということでした。盲導犬の同伴拒否は、レストランやホテルなどでもよくありますので、いつものように交渉しましたが、まったくだめでした。私も、どうしても入れないような特別なスペース(病院のICUや厨房など)に無理矢理同伴するつもりはまったくありません。
しかし、今回私達が入る場所は、特に消毒をしたり着替えをしたりして入る場所でもなく、することといえば所長さんの話を聞いたり、ビデオをみたり、ガラス越しに厨房の見学をしたり、給食の試食をしたり…、どう考えても盲導犬を入れてはいけない場所ではありませんでした。ハバネラを玄関に待たせることは可能ですし、そうすればトラブルもなく終わります。でも、絶対に入れる場所で拒否され、それを受け入れることはできませんでした。それは、私個人がとった行動が盲導犬使用者全体の問題につながるからです。いろいろなところで拒否に合うとき、よく言われるのが「前に来た人は外につないでもらった…」というようなことです。その人がどのような理由でそうしたのかはわかりませんが、そういう事例を作ってしまうと、後に続く人がとても困るのです。そこで、私はその場で県の補助犬相談窓口に電話しました。ところが、担当者が4月から変わってしまっていて、新しい担当者は不慣れだったのでしょう。何とも頼りなく要領を得ませんでした。県の担当者と長野市の担当者の間でやりとりがあり、結局は身体障害者補助犬法(以下「補助犬法」と記載)に基づいて同伴を拒否するということになりました。理由は、衛生面のことと、「不特定多数の人が出入りする場所ではないから」と言うことでした。補助犬法では、公共の施設や交通機関はもちろんのこと、民間の施設であっても不特定多数の人が出入りするところでは、受け入れを拒否してはならないということになっています。私自身の不勉強から法律のことでさらに突っ込むことができなかったのですが、長野市など公共の施設では、不特定多数の人が出入りしないとしても拒否してはならないのです。私からみれば、市内の小学生やPTAが見学に行くのですから、十分不特定多数の人が行く場所だとは思いますが…。 また、法律では、施設や周囲の人が著しく損害を受けるような場合は、拒否してよいことになっています。センター側からいえば、衛生管理に気を配る必要がある場所だということになりますが、それは厨房のような場所に限られます。外からいく私達人間が着替えも手洗いも消毒もせず入る会議室のようなところに、盲導犬が入れない訳がありません。病院であっても「診察室までどうぞ」と言われる時代です。そのような観点から、今回の事例は法律違反だと思われます。今回、最終的にはお互いが最大限妥協して、ハバネラを玄関を上がったところに待機させることになりましたが、そうやってようやく見学会に参加できたときには、もう1時間半近くが過ぎていました。これが私個人として訪れた場所であれば、入れないのならこちらも拒否します。そのまま帰ったことでしょう。でも、今回はクラス役員の仕事でいきましたので、それはできませんでした。もし、センター側が妥協せず、玄関を上がった場所での待機すら認めてもらえなければ、私はハバネラと一緒に最後まで玄関で待っているつもりでした。こんな私を、きっと周りの方は理解できなかったのではないかと思います。実際、「外につないでおけないの?」とも言われましたし、「加藤さんの気持ちはわかるけど…」とも言われました。2ヶ月前に初めて同じ役員になったばかりの方々ですし、盲導犬についてもあまりご存じないでしょうから、それは無理もないことだとは思いますが、誰1人として応援の声を上げてくださる方がいらっしゃらなかったことは、正直なところ本当につらかったです。前に法律のことをあれこれ書きましたが、私としては法律があるからどうこう言いたいのではなく、私を1人の人間として、1人の母親として認めてもらえなかったということに怒りと悲しみを感じています。私が玄関で待っている間、センターの職員が椅子を持ってきてくださいましたが、その椅子は靴を脱ぐところ、つまりは玄関のたたきに置かれました。6月のことですから寒くもなかったしかまわないけれど、これが冬でも同じようなことをされたのでしょうか。たぶん、他の人にこんなことをしたりすることは、決してないでしょう。少なくとも事務所にくらいは入れていただけますよね?でも、いくらお願いしても事務所に入ることすら拒否でした。また、私はこれまで16年間二人の子供の子育てをしてきました。全盲であるため、他の母親と同じようにできないことも多々あります。それでも、自分の努力でできることはやってきたつもりです。でも、今回のようなことがあると、見えるお母さんなら何の障害もなくできることなのに、見えないことでこんなにも厚い壁に阻まれてしまうことに、切なさを感じます。これが自分のことであれば、障害があるためにできないことでも、「まぁ、しかたないか!」ですませられるのですが、子供に係わることとなると、もう悔しくてなりません。クラスで役員決めをしたときのことです。今のクラスのお母さん方は、私にも何かできる役員をしてほしいと言われました。正直なところ、見えていれば何ということはないと思うのですが、見えない私にできることは限られてしまいます。それでも、やってくださいと言われて、私はとてもうれしかったです。育成会の役員にしても、その他のことでも、私の意志にかかわらず役員や当番が免除になっていることはよくありました。確かに見えないとどうしてもできなくてお断りしなければならないものもあるのですが、「見えないからやらなくていいよ」と、私の知らないところで最初からスルーされてしまうのは、やはりつらいことです。ですから今回の役員の仕事ではできないことも多いけれど、やってほしいと言ってくださったのだから、できることはやりたいと思っていました。ところが、私にも絶対できるはずの給食センター見学会への参加で、このような結果になってしまい、本当に残念でなりませんでした。帰宅後、県の窓口に改めて電話しました。県の担当者が他の部署とも話し合って検討するということになりましたが、「入れる方向で」とは言われませんでした。確かに、私自身が今後給食センターに行くことはまずないでしょうし、今のところ長野市に子育てをしていて給食センターに行く可能性のあるような盲導犬使用者はいません。でも、だからといってこのまま「拒否」という結果で終わらせたくはありませんでした。個人の力はとても小さくて、なかなか上に声が届きません。どうやったらいいのか考えているうちに、1年が過ぎました。そして、2011年6月、ツイッターを通して厚労省にお勤めの方と出会うことができました。その方のご協力で、1年前の出来事について厚労省として調査していただき、補助犬法に違反しているという結果が出ました。厚労省
としては、長野市と給食センターに盲導犬の同伴を認めるように指導し、私に対して直接謝罪するように伝えたそうです。そのために、私の住所や電話番号もお知らせしました。しかし、その後何の連絡もなかったため、長野県ハーネスの会として、長野市に質問状を送っていただき、その回答を得ました。
〈ツイッターをご覧下さい〉
当時の状況については、私がツイッターでつぶやきました。そのツイートや関連ツイートをまとめてくださった方があります。こちらから見られます。
Togetter-「盲導犬はここでストップ!?」
http://togetter.com/li/29967
◇このような状況とその後の経過を受けて本会では7月19日に長野市長宛に以下のような質問状を送りました。◇
〈長野県ハーネスの会から長野市長への質問状〉 2011年7月19日
長野市長 鷲沢 正一 様
長野県ハーネスの会 会長 前野 弘美
長野市が管理する施設への盲導犬の入場拒否について
平素より、盲導犬の利用につきまして、格別のご高配を賜わり、心より感謝申し上げます。長野県ハーネスの会は、盲導犬の利用者及びその支援者で組織され、浄財を基金として積み立て、盲導犬の医療費の補助、盲導犬利用者が遭遇するトラブルの対策等に当たってきました。さて、本会の今年度の総会において、貴市が管理する施設である第三給食センターにおける見学拒否の訴えが、本会会員である加藤久美さんよりありました。つきましては、この見学拒否は、「身体障害者補助犬法」に違反する行為であり、下記の点について回答していただきますよう、お願い申し上げます。
記
1 2010年6月16日、第三給食センターにおいて、吉田小学校の保護者である盲導犬利用者の見学拒否の事実がありましたか?もしあったとしたら、長野市としては、どのようにお考えでしょうか?
2 第三給食センターと長野市との関係はどのようなものですか?
3 貴市が管理する施設に対して、「身体障害者補助犬法」の内容はどのように周知されていますか?
4 今後貴市が管理する施設において、盲導犬利用者の入場拒否があった場合には、どのような対応をされますか?
〈長野市障害福祉課からの回答〉
23障第206号
平成23年8月17日
長野県ハーネスの会 会長 前野弘美 様
長野市長 鷲澤 正
長野市第三学校給食センターに盲導犬を同伴して入場できなかったことについて(回答)
残暑の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。平素本市の福祉行政につきましては、格別のご協力をいただき、厚くお礼申し上げます。
2011年7月19日付で照会のありました件につきまして、質問番号に応じて下記のとおり回答いたします。
記
長野市第三学校給食センターを所管する長野市教育委員会保健給食課に照会したところ、「給食センターを見学いただく際、盲導犬は玄関で毛布の上で待機していただき、介助者が付き添って見学していただいた。」という回答がありました。給食センターの対応は、身体障害者補助犬法にのっとったものではなかったと考えており、補助犬相談窓口である障害福祉課として、保健給食課に対し補助犬の役割を説明するとともに、補助犬法に基づく助言・指導を行いました。なお、給食センターを所管する長野市教育委員会保健給食課から、当日の対応についてのお詫びと今後の補助犬同伴者の受入れについての回答が別紙のとおりありました。
2 第三学校給食センターは、長野市教育委員会(保健給食課)が所管する施設です。
3 障害福祉課では、市役所内の教育委員会も含めた全部所・全施設に対し、補助犬同伴者の受入れが義務付けられていることを毎年文書で周知しています。加えて、支所や図書館など多くの方が来庁される市有施設には補助犬法普及啓発のポスター及びリーフレット等を送付しています。
4 今後、ご質問のような事態が生じた場合は、補助犬相談窓口として補助犬法にのっとり、施設を所管する部所に必要な助言・指導を行います。
問合せ先:長野市障害福祉課 企画管理担当 中村 西山
TEL 026‐224‐5030
FAX026‐224‐5093
e‐mail shougai@city.nagano.nagano.JP
別紙 長野市教育委員会保健給食課からのお詫びと今後の補助犬同伴者の受入れについて
保健給食課といたしましては、市の学校給食センターのおかれている状況等につきまして、当日の現場での説明によりご理解いただけたものと理解しておりましたが、当日の説明及び補助犬受け入れに関する施設の準備対応が不十分であったため、加藤様並びに貴会に大変ご不快な思いをさせてしまいましたことをお詫び申し上げます。つきましては、改めて当日の対応経過及び学校給食センターの状況等についてご説明させていただきます。長野市の学校給食は、一日3万4千食の給食を小中学校81校に提供しており、他の市有施設と比して学校給食センターは高度な衛生管理が求められている公共施設であります。学校給食センターは児童生徒に安全な給食を提供するため、文部科学省が定める学校給食衛生管理基準に基づき運営しており、一般の飲食営業施設と比較すると、調理施設内の区分の明確化や調理職員の健康管理の徹底など更に高度な衛生管理が求められております。また、食中毒防止と異物混入防止などに細心の注意を払っております。そのため、原則として関係者以外の施設内への立入りをご遠慮いただいておりますが、例外として学校給食への理解を深めていただくことを目的に、PTA関係者の皆さんの見学や小学校の社会見学など、学校からの申し込みがあった場合に限り見学を受け入れております。見学いただいた第三学校給食センターは昭和54年に開設し、築30年以上経過した長野市の学校給食センターの中で最も古い施設で、現在の学校給食衛生管理基準では、調理場の諸室の位置付け上、明確に区分することとなっている調理職員が使用する会議室と、見学者受け入れの会議室が構造上区分することができないことから、止むを得ず共用して使用しております。学校給食センターへの補助犬同伴は長野市として初めてのことであり、また、学校給食における各種マニュアルにおいても明確な対応等が示されておらず、調理職員を介して衛生管理上何らかの影響が及ぶ可能性があるため、学校給食の安全確保を最優先に考え、補助犬を玄関内に留めていただき、加藤様を職員等が補助し見学していただくよう、ご理解とご協力をお願いしたものであります。以上が当日の対応ですが、文部科学省では学校給食センターへの補助犬同伴は全国的に類似事例がないとの回答があったことから、障害福祉課と補助犬の受け入れについて協議した結果、今後、学校給食への理解を深めていただくための見学と、安全安心な学校給食提供のための十分な衛生管理とを両立できるよう既存施設の施設整備を検討するとともに、見学者に補助犬受け入れに際して認定証等の提示をお願いしたり、健康管理手帳で犬の健康状態を確認するなど一連の対応をマニュアル化することによりスムーズな受け入れ態勢を整えるよう努めたいと考えております。また、今後新たな給食センターの建設や既存の給食センターを改築する際には、見学コースを明確に区分し、補助犬の同伴や障害をお持ちの方が安全に見学することができる施設とするよう改善を図りたいと考えております。
問合せ先:長野市教育委員会保健給食課 担当 土屋
電話 026-224-8913(直通)
FAX 026-224-5086
電子メール kyushoku@city.nagano.nagano.JP
◇
今回の長野市第三給食センターでの盲導犬同伴者の受け入れ拒否問題を振り返ると次のような点に気づきます。
1.給食センターに「身体障害者補助犬法」についての認識が全くなかったことと柔軟さに欠ける対応姿勢を感じます。
2.盲導犬使用者は給食センター内の見学や立ち入りにおいて厨房や調理作業区域など高度な衛生管理を要する区域まで盲導犬同伴が可能と考えているわけではありません。
補助犬法に照らしてみてもPTAや児童・生徒が普通に立ち入りを認められている区域においては盲導犬同伴も認められるべきと考えます。仮にそんな区域内で部分的に盲導犬同伴が適切でない場所があるならば、その手前の差し支えない場所に盲導犬を待機させることもできたのではないでしょうか。
3.この事例では、一緒に給食センター見学に行ったPTA役員の中で盲導犬同伴者が孤立し、それまで良好なつながりのあった他のメンバーからさえも理解してもらえない状況に立たされたことは大変辛いことだっただろうと想像できます。もし、一人でも勇気を持って何らかのサポートの声を上げてくれていたらその場の状況も雰囲気も大きく変わっていたのではないかと思われます。
4.最後に問われるべきは補助犬法の改正と共に位置づけられた長野県と長野市障害福祉課の「補助犬相談窓口」の担当者の対応です。両者とも身体障害者補助犬法についての知識も認識も極めて浅く、相談やトラブル事例が持ち込まれてもどんな立ち位置でどのような助言や指導をすべきか全く理解できていないように思われます。
◇
(お断り) ◇ ◇の部分は編集チームの原が担当しました。
《連載/信州 こんなところ、こんな話 ③》
『ひと味ちがう芸術鑑賞をしました』
〔触る彫刻ギャラリー〕
正しくは信州ではありませんが、山梨県北斗市清里の森に、珍しい彫刻ギャラリーがあります。10月のさわやかな秋晴れの日、編集チームの原 哲夫さん(エリン)、北澤(キュエロ)、同行者1名とで、ギャラリーを訪問しました。この日、20点の作品を触らせていただきました。桒山(くわやま)先生と奥様から、一つひとつの作品を丁寧に説明していただき、時間の過ぎるのを忘れるほど夢中で鑑賞しました。
鑑賞後の感想を一言ずつ。
原…「どう触ったら良いか、最初はとまどったが、難しく考えずに、とにかく、あちこち触っていたら、自分なりの触り方がわかってきて面白くなった。
彫刻は見ているだけではわからないと思う。
直接作品に触ることで自然な感動が得られるのではないか。」
北澤…「人物の感情は、触ってわかるものなのか、興味があり、顔をよく触ってみた。ほうれい線、目尻、唇や頬の高さなどで、作品の表情もわかるように思う。触って感情がわかるのは面白い。」
同行者(男)…「目が見えていると、作品に触ることを遠慮してしまうが、ここでは作品の後ろに回って見たり、触ったりできるので、彫刻の素材の違いによる質感なども体感でき、満足感がまったく違う。」
※掲載写真は、第39回日展 内閣総理大臣賞に輝いた『演者』の作品前で記念撮影したものです。
ギャラリーでは、2頭の愛犬が出迎えてくれます。そのうちの1頭はリタイア犬のアイリス。アイリスをモデルにした「我家のソクラテス」という題名の木彫作品もあり、私たちがその作品を触っていると、アイリスがそばにきて、「これ、私なのよ。」とアピールする姿は、大変愛らしく、和やかな鑑賞のひとときを演出してくれました。さて、アイリスは何故、この作品で「我家のソクラテス」と命名されているのでしょうか?その謎は、是非ギャラリーで解いてみてください!!
以下は、ギャラリーの案内パンフレットからの引用です。清里の森 彫刻ギャラリーGAKOUでは、全ての人に彫刻を身近に感じて欲しいという思いで、手で触れて見ることができます。物を見るのは「目」と思っていると肝心な事を見落としていたり、一面しか見ていなかったりするようです。大切なのは「心の眼」。一度目を閉じてそっと触れてみませんか。今まで見えなかったものが見えてくるかもしれません。彫刻作品と共に皆さまとの出会いを楽しみにお待ちしています。 桒山賀行(くわやま・がこう)
清里の森 彫刻ギャラリーGAKOU
清里の森 森のプラザ2階
〒407-0301 山梨県北杜市高根町清里3545-1
清里の森管理センター TEL:0551-48-3151(ギャラリーには電話がありませんが、この番号にかけると、管理センターにつながりますので、そこに連絡してからお出かけください。)
開館日:6月~10月の第一週土、日曜日10:00~17:00
尚、ご入場の際に、このギャラリーの維持費としてお一人様300円のご協力をお願いしております。
交通の案内 JR小海線清里駅から、約2キロメートル。車で3分。
〔美術館で、盲人写真展開催中〕
長野県東御市の梅野記念絵画館では、「心眼-全国盲人写真展受賞作品を中心に」展を開催しています。「全国盲人写真展」は、日本文化協会が主催して毎年開催されている公募展。写真作品1つずつに、点字と立体コピーを用意し、今回は100点以上を展示。立体コピーは、写真の明暗を、凹凸によってあらわしています。私も、この立体コピーを触ってみましたが、点字の説明と照し合せたとき、写真になった風景は、凹凸による明暗の区別だけではよくわかりませんでした。立体コピーと点字の説明だけでもわかる写真の例としては、画面いっぱいの大きな白い猫の写真でした。白い猫の部分が凹凸の凹になりますので、猫であることがわかり、口や、ねむたげな目も触ってわかりました。もうひとつ、夜空に浮かぶ大輪の花火も、立体コピーを触ってわかります。私が描いたイメージとしては、パイナップルを輪切りにした切り口は、放射線状に広がっていますが、その切り口がちょうど、花火と似ているように思えます。視覚に障害がない人の目には、この盲人写真展はどのように写るのでしょうか。目で見た被写体では思い浮かばない発想で写真が撮られているようです。視覚に障害がある人、ない人が同じ写真を鑑賞したとき、立体コピーを触っても面白く、目で見ても面白い写真はどんな写真なのでしょうか。梅野記念絵画館では、研修を受けたボランティアさんたちが視覚に障害がある人をサポートし、コピーをさわっただけではよくわからない写真について、助言をしてくださる「対話型鑑賞」に力を入れています。この機会に、触る鑑賞と見る鑑賞の両方を味わう「対話型鑑賞」を体験してみませんか。
盲人写真展開催期間:11月19日(土)から2012年1月15日(日)
会場:梅野記念絵画館(長野県東御市八重原935-1芸術むら公園)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌火曜日) 11月24日、12月26日から1月4日
開館時間:9時から17時
※対話型鑑賞を希望する場合は予約してください。問い合せは、梅野記念絵画館学芸員の佐藤さんと大塚さん(電話:0268-61-6161)まで。
交通の案内:しなの鉄道 大屋駅から車で13分、田中駅からは11分。
《新企画/ハーネスの会ML》
『長野県ハーネスの会のML(メーリングリスト)が起動しています!!』
本年8月、長野県ハーネスの会に、ML(メーリングリスト)が誕生しました。MLとは、インターネット上で情報交換を行う広場のことです。MLアドレスにメールを送ると、そのMLに登録しているメールアドレスのすべてに、同じ内容のメールが配信され、同じテーマで意見交換もできます。長野県ハーネスの会専用広場ですので、パソコンか、携帯電話で、メールをされている会員の皆様、是非、このMLにアドレスを登録して、お互いに情報交換してみませんか。8月から、現在までに、MLには、以下の●印の3件をはじめ、合計12件の書き込みがありました。一部を抜粋して紹介します。参考にしていただければ幸いです。
●障害者であるために受けたと思われる差別の事例を募集
●音声ガイド付き、映画鑑賞会へのお誘い
●全国盲人写真展開催の紹介
抜粋 私の失敗談
旅行先で宿泊した折、早朝、盲導犬のトイレ出しをしようと、旅館玄関に向かったが、玄関たたき前で盲導犬がオシッコを漏らしてしまった。宿泊した部屋から、旅館の玄関までが迷路のように遠く、玄関までたどりつくのに思いがけない時間がかかった。盲導犬も自宅とは違う環境であったため、トイレリズムが変わってしまった。普段であれば、夕食時にトイレをさせれば、朝まで排泄しないが、旅行先などの環境では、念には念を入れて夜寝る前にもトイレ出しをしたほうが失敗を防げたと思った。
長野県ハーネスの会ML(メーリングリスト)に参加される方は、会長の前野さんまでメールアドレスをお知らせいただくか、次より参加の申請をお願い致します。
http://www.freeml.com/naganoken-harness
また、MLに参加できない会員の皆さまのために、会報の中で、MLに配信された情報を差しさわりのない範囲で、できるだけ紹介をさせていただくつもりです。 〈記事担当 北澤〉
《デビュー》
『上條さん、再びパートナーと歩き始める』
松本市の上条きみ子さんは11月18日から3頭目のパートナーのオグと歩き始めました。オグは2才8ヶ月の雌のラブラドールで体毛はイエロー。日本盲導犬協会の富士ハーネス訓練センターで育ちました。上条さんは昨年7月、それまで4年間ともに歩いていたパートナーを訓練所に自主的に返還しました。排便トラブルと無駄吠えの悪癖が修正できなかったことが理由です。そのため1年3ヶ月に渡って盲導犬なしの不自由な白杖歩行の生活を送っていました。オグは体重がおよそ26㎏とこれまでのパートナーより一回り小振りでタクシーやバスを利用する際もとても扱いやすいと上条さんは言っています。また、かつて悩まされたトラブルも全くなく盲導犬使用者として安心して毎日の生活が送れるようになったと喜んでいます。
《連載/旅は犬連れ 5》
『ウィングとの北海道旅行』 上田市 松尾寿美子
毎年4月になって暖かくなると、「今年はどこへ行く?」という私の一言で我が家の旅は始まります。今年は、すぐに北海道ということに決まり、ウィングが我が家へ来る前に海外旅行へ行って貯めておいたマイレージを使って行くことになりました。まず日程を7月31日(日)~8月7日(日)の7泊8日と決め、航空会社へ電話をして飛行機の予約をし、それから行きたい所をピックアップしていきます。今回は北海道盲導犬協会、白い恋人パーク、福山醸造、アサヒビール、コカコーラボトリングの工場見学、そして、劇団四季のミュージカル「ライオンキング」と、海援隊(武田鉄矢)のコンサートです。すぐに電話とメールで盲導犬の同伴を伝え、予約の申し込みをしました。出発の荷物はほとんどがウィングの荷物(コート、ドッグフード、お手入れ道具、猫砂の入った袋などなど)でスーツケースの半分が埋まってしまいギュウギュウです。支度の最中、ウィングはそわそわしてお出掛けが待ち遠しいようで、私の後を着いて離れないので笑ってしまいました。北海道の夏は快適でした。これならウィングも歩行が楽だろうと気楽に歩いていたら、いつの間にか目的のバス停を通り過ぎているなんていうこともありました。私達の移動手段は地下鉄と路線バス、そして徒歩です。前もって調べておいた交通手段で行き、わからなくなると人を呼び止めて聞きながら歩いて行きました。中には、一緒に目的地まで行ってくださる方もいて随分助かりました。北海道盲導犬協会の施設と老犬ホームを見学させてもらったのですが、とても環境が良いということと、設備が整っているということに驚きました。アサヒビールでは試飲を3杯までいいと言われましたが、1杯も飲みきれずに帰って来ましたし、コカコーラボトリングの工場では山ほどのおみやげをもらい、「ワンちゃんにも」とミネラルウォーターを1本もらってきてしまいました。劇団四季のミュージカルではスタッフの方が、「盲導犬が大きな音に驚くのではないか」、「前の席との幅が狭いので」、「他のお客様にご迷惑がかかりますので……」などと心配していましたが、全て杞憂に終わりました。ウィングは静かに座席の下で丸くなり、ミュージカルには何の興味も示しません。札幌大通りでは7月21日から8月15日まで、夕方からビアガーデンをやっていて、雰囲気だけでもと早速ウィングと連れ立って出掛けました。たくさんの人がいて歩くのが少し大変でしたが、案内してくれる人もいて無事に行くことができました。ビールの味はよくわからないけれども、おつまみはとてもおいしかったです。やはり、ウィングはここでも全く興味を示しません。周囲がどんなにうるさくても何のその。毎日昼間はどこかの工場見学、夜はビアガーデンかコンサートと出歩いたので、いつも元気なウィングも疲れたみたいで夜はぐったりしていました。最終日は、1日中アウトレットモールでのショッピングです。掘り出し物の洋服を見つけたり、海産物のおみやげを買ったりと目まぐるしく過ごしました。帰路に着く日の朝、支度をし始めるとウィングもまたそわそわし出しました。私がリュックを背負い、バックを持って「さあウィング、帰ろうか」と言うと、ウィングがピョンピョン跳びはねて喜ぶものだから、「そんなにお家に帰りたかったの?」と苦笑しつつ、空港へ向かう電車に乗り込む私達でした。過密スケジュールで結構疲れたけれど楽しかったね、来年もまたどこかへ行こうね、とウィングに語りかけ、北の大地を後にしました。
《ハーネスサミット報告》
『イルカショーにびっくり』 ウェルカムチームCL 丸山 訓代
「あらっ、また会えましたね。」一年ぶりに会った山梨の仲間と声を交わしながら、ボランティアを含めた50名が、車座になって席に着く。自己紹介、近況報告の後、獣医師の水越美奈先生による「犬の健康管理について」の講演の後、質疑応答がなされた。先生の饒舌は短い時間内にわかり易く、特にフィラリア予防はなぜ蚊が出ている期間の一ヶ月後が大切かが得心できた。9月3日(土)、4日(日)の神奈川県大磯で開かれた盲導犬サミットは今回で六回目。始まったきっかけは、本会会長前野弘美さんと山梨盲導犬友の会の故中島司郎さんが同じ盲導犬訓練所で会った事から長野・山梨のユーザーの交流会として始まったものであるが、今では多くの県から参加している。昨年まで顔の見えた中島さんが、ここに参加のないのが寂しい。ご冥福を心よりお祈りしたい。神奈川県大磯は台風の雨もなく、我が盲導犬のラピートもたくさんの犬達に会えて尻尾をバタつかせご機嫌であった。翌日、信州人としては驚く暑さと湿度の中、「働く犬を支援する会」運営の「はた犬ケアハウス」を見学。引退犬の世話や介護するための三階建てエレベーター付の建物を見て廻り、地道な活動に敬服した。大磯の水族館に行き、介護福祉専門学校の学生のマンツーマンの手引きでイルカショーの会場に入ったが、我が愛犬ラピートは巨大な生き物が泳ぐ様を見て興奮気味。音楽が鳴ってイルカがつぎつぎとジャンプ。水音とともに水滴まで飛んで来て犬も私も圧倒されてしまい、残念ながら学生さんの状況説明もあまり耳に入らなかった。それにしても台風の風雨をついて、マイクロバスで出かけた長野県一行だが、中央道閉鎖のため山梨の冨士ハーネス(日盲訓練所)富士宮経由の往復一般道で時間もかかり大変だった。とりわけ、ハンドルをとられまいと懸命だった坂田さん、運転ありがとうございました。この台風12号は紀伊半島に被害が甚大だったが、山梨県も大荒れで、半月後、山梨側から北岳(3193メートル)に登ろうとした私は、その登山道の一本が岩や土砂の崩落で通行できず、急峻な道を取らざるを得なかった。改めて台風の大きさを知った次第だった。
『ハーネスサミットに参加して』 横浜市中野ナミ子&アイディー
この大会が神奈川県内で行われるとGuidedogMLで知ったとき、参加しようと即決しました。アイディーと日本盲導犬協会・神奈川訓練センターで出会ってから2年になりますが、一度も他の協会の行事に参加したことがありませんでしたので、ぜひ参加して、他の協会のユーザーさんやパートナーと交流ができたらと思いました。早速申し込み、了解をいただきました。
当日は全国的に悪天候で、家を出た時には降っていなかった雨が、大磯の駅に着いたらざぁざぁと音をたてて降っていて、二日間ずいぶん濡れるんだろうなぁと覚悟しました。一日目は、時々濡れることもありましたが、移動時にはほとんど雨が止んで、アイディーのレインコートは全然必要ありませんでした。改札を出た所から、アイディーは他のパートナーたちと親密な交流を開始しました。水越先生のお話はとても分かりやすく、興味深いもので、あっと言う間に過ぎてしまいました。夕食のお弁当は冷たくてちょっとわびしい気もしましたが、味は美味しくて、ビールと一緒にいただきました。 二日目は、風が強くて暑い日でした。平塚の「働く犬を支援する会」の施設を見学し、江ノ島水族館でいるかのショーを見ながらお昼をいただきました。いるかさんたちの仕草や動きが見えたらもっと楽しいだろうと思いましたが、かわいい鳴き声が聞こえてきて楽しむことができました。学生のボランティアの方が一人一人についてくださって、ショーの説明をしてくださったり、道案内をしてくださったりして、解散の時間まで有意義な一時でした。 「働く犬を支援する会」については事前に調べて行ったのですが、もう少し現場の人たちのお話が聞けたら良かったと思います。また、たくさんの方たちとお話をしたかったのですが、生来のシャイな性格が邪魔をして、思うように交流ができませんでした。それから、わたしは前野さんはお名前からして女性だと思い込んでいたので、事前に電話して男性だったので、とてもびっくりしました。また、機会があれば参加したいと思います。
《支援》
『盲導犬使用者サポートクラブから支援』
東京と神奈川県を中心に活動している盲導犬使用者サポートクラブ(藤沢市:桑山直子代表)は、活動収益金から本会に対して10万円を寄付していただきました。同サポートクラブからは昨年も同額の援助をいただいています。本会では全額をハーネス基金に入れて盲導犬と引退犬の健康管理と医療費支援に当てます。ありがとうございました。
《新企画/会長コーナー》
会員のみなさま、如何お過ごしですか。2011年ももう数日を残すだけとなりました。この1年に寄せられましたご理解とご支援を感謝しております。 新しい年のみなさまのご健康とご活躍をお祈り申し上げます。 会長 前野弘美
『2011年度後半(11月~3月)の長野県ハーネスの会の予定』
2012年3月4日(日) 第3回運営委員会 長野市障害者福祉センターで開催
『ドッグドック実施』
ハローアニマル(長野県動物愛護センター)による補助犬の健康診断が本年度も希望者に対して行われました。来年度以降希望される方は前野までお申し出下さい。
『2012(平成24)年度に行いたいイベントについて』
本年度は大震災の為にイベントの開催を控えました。来年度実施のイベントに関して希望や提案をお寄せ下さい。
『ハーネスの会MLへご参加を』
別の記事でも紹介されていますが、長野県ハーネスの会のメーリングリストを立ち上げました。メールアドレスのある方は是非ご参加お願い致します。前野までメールアドレスをお知らせ頂くか次より参加の申請をお願い致します。
“http://www.freeml.com/naganoken-harness”
《事務局から》
『平成23年度会費の納入をお願いします』
本年度の長野県ハーネスの会の会費2000円を未納の会員はできるだけ早くお振り込みまたはご送金をお願いします。
(郵便振り込み) 00570-7-17991長野県ハーネスの会
(事務局) 390-0304松本市大村492-3
『盲導犬ユーザー登録用紙の提出をお願いします』
ハーネスの会では盲導犬使用者会員とパートナーのワンチャンの状況を把握し、必要な支援を適切に行うため「盲導犬使用者登録」をお願いしています。6月に盲導犬ユーザー会員と引退犬ウォーカー会員に登録用紙をお送りしてあります。既に多くの会員は回答して返送して下さいましたが一部の方は未返送になっております。未だ登録用紙を返送されていない会員はできるだけ早く事務局までお送り下さい。ご協力をよろしくお願いします。
『ハーネス基金疾病治療費助成の申し込みをして下さい』
平成23年4月1日から12月31日までの間に盲導犬または引退犬の疾病治療費を支払われたユーザー会員と引退犬ウォーカー会員は「疾病治療費助成」を受けるための申請をして下さい。所定の用紙に疾病治療の概容と動物病院の領収書を添えて申し込んで下さい。締め切りは平成24年1月20日です。用紙が足りない方は事務局(田中)までご連絡下さい。
『ハーネス基金に関わる会計事務は齊藤さんが担当』
本年度からハーネス基金による健康管理費助成金、疾病治療費助成金、死亡見舞金に関わる申請の受付と会計事務はチームリーダーの齊藤慎一さんが担当します。
◇ 事務局へのお問い合わせは、田中までお願いします。
《編集後記》
今号は16頁という内容の詰まった会報となりました。今年度から新しい組織になり、それぞれのチームが順調に動き始めていることを感じます。メーリングリストによってユーザーさんの様子が伝わって来るようにもなりました。これからのさらなる活動の充実を期待します。 今年1年お疲れ様でした。皆様、良いお年をお迎え下さい。
(池田)